第四十七幕 地獄は袋小路へ差し掛かる
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「淡島さん…?」
リクオの名を呼ぶ淡島の声が真後ろから聞こえた筈なのに、振り返った花雪の瞳に声の主が映る事はなかった
周囲を見渡すも、あるのは自分達が辿って来た簡素な歩道のみ、これといって分岐路といった目立ったものがない為に余計、淡島の姿がない現状に花雪の眉間には怪訝という名の皺が刻まれていた
「花雪、置いてっちまうぞ」
「……あ、あのリクオ、少し話したいことが…!」
これはもしかすると、知らぬ内に自分達はこの異境にある罠の類いにかかってしまい、仲間と分断されてしまったのではないか
だとしたら、このまま進むにはあまりにも無防備すぎるとリクオに意見する為にその背中に駆け寄る花雪は背後から聞こえた物音に意識を反らされる
「ぐ……っ」
「黒?」
何かがその場に落ちた、もしくは何者かが現れた場の振動とくぐもった声で注意を引かれた花雪は階段の下でしゃがみ込む黒田坊へと駆け寄る
一体、どうしたのかと淡島が突如として消えた件も合わせて、神経を尖らせている視界についた赤色に彼女は目を見張り、思わず責める様な声量を上げてしまう
「傷……!どうしたの?これ!」
「なに、花雪様の気にする事では…」
笠越しに微笑む黒田坊はこうなると、事を有耶無耶に済ませてしまうつもりだろう、それが花雪やリクオにいらぬ心配をさせぬ様にとする彼の気遣いなのは重々把握している
遠野に行く前の彼女だったら、黒田坊に何か考えがあるのだと花雪はすごすごと引き下がっていた事だろう、きっとそう行動する事を黒田坊も望んでいるだろうがそうはいかない
リクオと正式に恋人の契りを交わしたからには彼の目が届かない場所を請け負う――その役目を自分に科す様になった花雪は一歩、踏み込んだ
「もしかして、京妖怪の陣地に淡島さんが…?」
「…!」
「今、私達がいる場所とは別の…異界へ引き込まれたから、私達の前から姿を消した…?神隠しみたいに」
ー異界への引き込み役は…
まるでテスト用紙の回答欄の空白を埋めて行く様に花雪の頭の中で一連の異変に関する問題が整理されていく、淡島、そして黒田坊が異変に誘われたからには何か共通点がある筈――
数多く立ち並ぶ鳥居はここに来て、慣れてしまった様でこれが当たり前と映ってしまっていた、ならば逆に唯一のものとしてこの神社に鎮座していたあれこそが異質だとしたら?
「…重軽石、あの石から漂って来た妖気は異界に身を潜める妖怪のものだったんだ…!
黒、そうなんでしょう?確か、あなたもさっき淡島さんの後に石に触れてた。だから異界へ行く事が出来た、違うかな」
「…花雪様は本当に聡い方だ」
「じゃあ、淡島さんは今一人で京妖怪と…」
殆ど答えに近い結論を導き出した花雪にこれ以上、下手な小細工は通用しないと観念したのか黒田坊は笠に隠した瞳を露に、自分の見た事実を公表する
「いえ。淡島の他にもう一人、小さな子供が異界に引き込まれ…」
「っ…!」
「どうやらここの妖怪の力の源、異界の枢は"子供の心"…淡島がその事に気付けば、あるいは…」
人の世界の裏に生きる妖の行う戦いに人々が巻き込まれてしまう、それは何よりも花雪が懸念し、不安視していた事
自分の胸につっかえていた泥がこんな形で表に出てしまった事に花雪は心苦しく捉え、その表情はまるで自分が淡島と共に巻き込まれた子供の立場を得たかのよう
きっと親もいて、旅行に訪れていた所を引き離された幼い子供はどんなに寂しく怖い想いをしているだろう――
「花雪様、時にリクオ様にはどうお伝えすれば」
「……この事に関しては私から話します
ただ、これは言っていいものか…いたずらに囃し立てれば、それこそ京妖怪の思う壷になる可能性も…」
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