第三十九幕 冬芽懸隔を越えるが為の裳着
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「久しぶりに紫以外の女の子の着物を見立てたから、つい長々としちゃったわ」
「み、見立てて下さってありがとうございます、冷麗さんに紫…ちゃん?」
「ちゃん付けでだいじょーぶよ」
数十分の間に何十と着物を着せ替えられ、花雪の体力は自分の仕事を習う前に尽きかけており、自分の為に見立ててくれた事に恩を感じていたが苦笑しか浮かばない
今の彼女は白い着物の上にもう一着の淡い黄色の生地に桜模様が飾られた重ね着物に落ち着いていた
「それじゃあ時間も押しているし…今度こそ仕事を習ってもらうわね、ついてらっしゃい」
「はいっ」
自分の指導係である冷麗に見習いの花雪が遠野でやる事は食器洗いに風呂掃除、そして先程の屋敷の掃除や掃き掃除…それらの手法を習い、実践したのが午前中させて貰った事
午後には手法を体に叩き込んだ所で次は尚深い山奥へと連れられる、それは冷麗が言っていた遠野の者達に紹介する為だと見られる
「冷麗さん、一体どこに行くのですか?」
「私達が稽古に使う実戦場という場所よ、そこに遠野の者達は集うの
聞いた話だと花雪は私達に鍛えて貰う為にここへ来たのでしょう?実戦場だと色んな戦いについて勉強出来るから丁度良いと思ったの」
「なるほど…」
「花雪って見た目から戦えなさそうだものね」
「うぐ…仰る通りです…!」
「こら紫、あんまり花雪を苛めないの」
可愛らしい見た目とは逆に毒を交えた言葉で紫に痛い所を突かれた花雪は重い石が自分の頭に落ちてきた様な衝撃に涙が浮かんでしまったのだった
暫く歩いた先で何人かの妖達が切り倒した巨木上で戦っているのが見えた、ここが自分達の目的地である実戦場に違いない
その幹上に二人と共に上るとそこには遠野の妖達の中で自分の見知った顔がいた
「リクオ…?」
「花雪…!」
「ひゃうっ?!」
「お前も一緒に来たって聞いて心配してたんだ、無事で良かった…」
「リ、リクオ…人…人いるからっ」
「ひゅ~ひゅ~お暑いねぇ~」
再会した途端に人前を気にせずにリクオに抱き締められた事により、花雪は顔を真っ赤にして抵抗するものの彼の力には叶わない
自分達にかかる冷やかしの声に尚更羞恥の思いが沸くものの…結局リクオが満足するまで離してもらえなかったのだった
「その子ね?イタクが指導係にさせられたっていう子は」
「バッ……言うなよ…」
「花雪、こっちは"かまいたち"のイタクよ」
「オイラは"沼河童"の雨造だ、オイラーの代わりに風呂掃除してくれるんだって?」
「薪割りもだ…あれが一番大変なんだ、オレは"あまのじゃく"…淡島と呼んでくれ」
「お風呂をわかす方がつかれるわ、私は"雪女"の冷麗、この娘は"座敷童子"の紫……あなた、奴良組なんですって?」
「基本は掃除洗濯よ――しかもぬらりひょんの孫に月詠姫だって!?オレは"経立"の土彦だ」
「……よろしく」
「月夜見花雪と言います、どうぞよろしくお願いします」
「だけどこいつ、畏のしくみもわかってね――んだよ」
「マジで!?」
実戦場にいた遠野妖怪達と自己紹介を終えた所で告げたイタクの言葉に彼らは非難的な声を次々と上げる、彼らにとってはそれは有り得ないらしく
彼らの言葉に負けん気が強いリクオは意地を張る様にその言葉達を一つの言葉で裂き、興味を引かせる
「……"畏の発動"くらいならできるぜ」
「……へぇお前が?やってみろよ」
彼らに自分の畏を見せる為にもリクオは花雪と同じく紫と冷麗に着物を貸して貰い、一本の木刀でイタクと対峙する事に
「じゃあかかって来な」
「リクオ…」
「………」
どうやらリクオが四国八十八鬼夜行を倒した噂はこの地まで届いており、淡島や雨造達はそれを口にしている
不安げに目の前の彼を見守る花雪の前でリクオは自分をこてんぱんにしてくれたぬらりひょんを思い出すと同時に畏を発動させ――姿を眩ませた
「え……消えた?」
「これが"ぬらりひょん"の畏!?」
「明鏡…止水…」
「バカな…ここにいる全員に畏を発動させた――のか!?」
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