弐
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「ここにいたのか、花雪」
「リクオ…」
「具合はどうだい」
「つららちゃんと若菜お母様のおかげで楽になったよ、大丈夫」
三代目襲名の会合後のリクオを出迎えたのは彼に向けて微笑む花雪だった。京都での戦いを終え、浮世絵町に戻って来た彼女は緊張の糸が解けてしまったのか熱を出し、部屋に篭り切りだったが、今は調子はいい様だ
調子がいい、と言う彼女の言葉が嘘ではないとその顔色から察する、リクオはそうか、とだけ答えると縁側に座る彼女の隣に腰を降ろした。いつも花雪はこちらに気を使って、下手な嘘をつくもので観察眼が養われる
「二人が死んだ時の事を思い出してたの、何でお母さんはお父さんを斬らなかったんだろうって
お父さんよりも強いお母さんだったら、きっと勝てた筈なのに…」
「錫兎の親父さんの事を心から愛してたからだろ、あの人はハチャメチャだったけど自分の刃を向ける相手を間違えたりしない筈だ
…それに分かってたんだろ、うちの親父をあの人が刺した時みたいに愛した人を殺してまで、生き残っても意味がないんだって」
「じゃあ尚更、私は山ン本って人や安倍晴明の事を許せない」
「花雪…」
「鯉伴お父様を乙女さんに殺させたみたいに、お父さんの手でお母さんを殺した時みたいに…誰かを想う心を利用して、手を下すなんて汚いよ
自分の手も汚さないで、代わりに手を下さなければならなくなった人達の哀しみを晴らす為にも、絶対にあの人達を討たないと」
そう語る花雪の真剣な瞳に思わずリクオは見入ってしまう。自分の両親を相打ちという最も汚い方法で殺害した事に加え、慕っていた鯉伴を、彼を愛していたひとに殺させた手を使った清明を彼女は許すつもりはないだろう
確かに世界を闇で覆おうとする清明を野放しには出来ないのも事実だ。だが父と山吹乙女の仇を取る事こそが宿願といってもいい、もう二度と花雪の両親や鯉伴達の様な犠牲者を出さない為に自分達は清明を討たねば
「ああ、その為にもオレは百鬼と組をでっかくする。最強と言われた親父の百鬼よりも大きくな」
「うん。これから三代目として奴良組を引っ張っていくあなたの傍に、ずっといさせてください」
「…………」
「リ、リクオ?」
自分の言葉を聞いた瞬間、真顔でこちらを見つめ続けるリクオの視線にえ、え?と花雪は狼狽えてしまう。何か可笑しい事を自分は言ってしまったのだろうか、そんな事はない、今の言葉は紛れもない自分の本心だった
だというのにこう固まってしまうのは何故なのか、戸惑いというよりもまるで本心と受け止めてもらっていない様で少々の不快感を抱いてしまう。彼女が剥れてしまったのに気付いたのか、リクオは漸く苦笑という形で反応を示した
「参ったな、それはオレの台詞だったのに奪われちまった」
「えっ。ご、ごめんなさい…?」
「謝ることはねぇよ。一緒の気持ちだったと思えば、気分はいい
オレも花雪にはずっと…いや、一生隣にいて欲しい。着いて来てくれるか?」
「…はいっ、もちろん!」
反応出来なかったのは恥ずかしげもなく、花雪がプロポーズじみた言葉を発したからだ。いつもはこっちがそんな類いの言葉を放てば、恥ずかしがるくせにこういう時は別なんだなとまた違う苦笑がリクオの顔に現れた
けれど、あの言葉は紛れもない彼女の本心だ。たった一時ではなく、一生を共にする気持ちを口にした花雪を嬉しさの余り、抱き締めてしまう。やはりというか、抱き締めた途端に彼女は顔を真っ赤にし、俯いてしまった
やはりこの反応が一番花雪らしい、可愛い反応だと実感するリクオの表情には苦笑とは違う、彼女を慈しむ笑みに満たされている。いつも通りの日常に戻った二人の姿を、月明かりが照らし出していた
(寄り添う星を求めた夜)
(あなたと出会い)
(一人の時は終わりを告げた)