第八十一幕 例え百年の時が経とうとも
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反魂の術という単語に花雪達は聞き覚えがあった、それは安倍晴明が永遠を生きる為に完成させようとしていた禁忌。冥土にいた乙女に術を使い、復活させたのは母の依代とする為だけではない事はもう分かっている
真っ黒なワンピースに身を包んだ少女がある神社の鳥居下にいた、まるで誰かを待つかの様に。そこが鯉伴親子と花雪が良く遊びに来る神社だと知った晴明が、乙女と鯉伴が接触し易い様にと仕組んだのだ
ーそして、そのすぐ後気づけば、妾は娘子になっていました
自分が山吹乙女だという事も、愛したひとの記憶も忘れた少女は自分が何故ここにいるかも分からずに待ち続けた。神社で遊んでいたリクオと花雪が彼女を見つけるまで長い間、そこでずっと
生前持っていた記憶の代わりにいれられた記憶は自分の父親が鯉伴だという偽りの記憶。彼女が晴明からリクオ達を庇った時に呟いた言葉はここに繋がる、この夜に彼らと触れ合った記憶が彼女にあの行動を取らせたのだろう
『遊びましょう』
ー偽りの記憶を入れられて…
『リクオ、花雪…その娘は…』
『鯉伴おとうさま!』
『お父さん!遊んでくれたの、この"お姉ちゃん"が!』
その容姿はかつて呪いによって、跡継ぎに恵まれずに離れていった妻の姿に酷使するのだろう、鯉伴は少女の存在を戸惑っている様子を窺わせた。この時、目の前の少女が復活した山吹乙女だとは流石の彼も気付く余地がなかった
自分の内情などは三人仲良く遊んでいる姿には関係のない事。確かにかつての妻に良く似てはいるが、彼女である筈がないとその幻影を振り切り、やがて鯉伴はリクオ達と一緒に遊んでもらう為に伸ばされた少女の手を取った
ー鯉伴様は最初はとまどっていましたが、やがて妾の手をとってくれました
その日一日はとてもとても幸せで、これ以上はないと思えるくらいでした
リクオと花雪とかけっこをして遊べば、その足の早さを褒めてもらって満足したり、次に遊ぶ場所まで手を取り合い……まるで本当の親子、父と娘の様に一夜を過ごした少女と鯉伴はこの上なく幸せだった筈だ
だがそれも全ては晴明とその配下による策に過ぎない、二人は着実に悲劇に向かって歩み始めている事を邪な意志で働く妖が見ているとも知らずに少女は自分の弟と妹の様な存在と遊び続けた、父に見守られながら
『あ!何だろう、アレ。行こう、花雪』
『う、うんっ』
『リクオ、花雪。あまり遠くへいくなよ』
見た事がないものに好奇心をくすぐられたリクオが花雪を連れ、離れてしまう為に少女と鯉伴は自然と二人っきりとなる。少女と共に二人の後を追いかけようとした鯉伴の視界に不意に金色の花弁が入り込む
視界を微かに横へ動かすとそこには満開の山吹の花が咲き誇っていた、乙女の名字もこの山吹の花から取られた。化物屋敷で小妖怪達の世話をしたり、学問を教えていた娘幽霊こそが彼女ー山吹乙女。鯉伴が名付けた名前である
ー山吹…
『わぁ…キレイ』
一面の山吹の花に心弾ませ、花畑に駆け込んだ少女は父に贈るものとしてなのか、花束を造り始める。そんな小さな背中を実の子の様に鯉伴は温かく見守るも、山吹を見た事で更に影が深まる乙女へと思い馳せていた
山吹は確かに乙女の名字として自分が与えたものだ、けれど同時に乙女が屋敷を後にする時に自分へと残したものでもある。そう、あの哀しい歌を綴った古歌に沿えられた花も山吹の一枝だった
『"七重八重 花は咲けども山吹の 実のひとつだに なきぞ悲しき"』
山吹の花を見て、思い出すのはいつも彼女と彼女の残した最後の古歌。繁栄する奴良組を支えて来た心の裏に隠された、跡継ぎに恵まれなかった哀しい女性の思いを綴った歌を鯉伴は忘れる事が出来なかった
ふと浮かんだものをこれまた、ふと鯉伴は呟いただけだ。かつて栄光と共にあった伴侶の姿と彼女と過ごした日々を懐かしんで。けれどその古歌を聞いた少女の手がぴたりと止まり、後少しで完成する筈の花束も未完成のままとなる
『あのあと……山吹の花言葉を何度も調べちまったっけ
"気品"、"崇高"……そして…"待ちかねる"、まるで…オレたちの娘みてぇだ』
『お父さーん』
『リクオ…』
この少女がまるで自分達が待ちかねた子供の様に思えて仕方がない。もしもと思ってしまう、もしも狐の呪いが存在せず、無事に乙女との間に子が生まれたのなら、きっとこの少女の様に乙女に良く似た娘だったのだろうと
遠くからの花雪と遊んでいたリクオの呼び掛けに鯉伴が振り返った瞬間、少女が持っていた花束が刀へと姿を変え、無防備な背中から胸を一気に貫いた。山吹の花弁に混じって、虚空へと鮮血が飛び散る
真っ黒なワンピースに身を包んだ少女がある神社の鳥居下にいた、まるで誰かを待つかの様に。そこが鯉伴親子と花雪が良く遊びに来る神社だと知った晴明が、乙女と鯉伴が接触し易い様にと仕組んだのだ
ーそして、そのすぐ後気づけば、妾は娘子になっていました
自分が山吹乙女だという事も、愛したひとの記憶も忘れた少女は自分が何故ここにいるかも分からずに待ち続けた。神社で遊んでいたリクオと花雪が彼女を見つけるまで長い間、そこでずっと
生前持っていた記憶の代わりにいれられた記憶は自分の父親が鯉伴だという偽りの記憶。彼女が晴明からリクオ達を庇った時に呟いた言葉はここに繋がる、この夜に彼らと触れ合った記憶が彼女にあの行動を取らせたのだろう
『遊びましょう』
ー偽りの記憶を入れられて…
『リクオ、花雪…その娘は…』
『鯉伴おとうさま!』
『お父さん!遊んでくれたの、この"お姉ちゃん"が!』
その容姿はかつて呪いによって、跡継ぎに恵まれずに離れていった妻の姿に酷使するのだろう、鯉伴は少女の存在を戸惑っている様子を窺わせた。この時、目の前の少女が復活した山吹乙女だとは流石の彼も気付く余地がなかった
自分の内情などは三人仲良く遊んでいる姿には関係のない事。確かにかつての妻に良く似てはいるが、彼女である筈がないとその幻影を振り切り、やがて鯉伴はリクオ達と一緒に遊んでもらう為に伸ばされた少女の手を取った
ー鯉伴様は最初はとまどっていましたが、やがて妾の手をとってくれました
その日一日はとてもとても幸せで、これ以上はないと思えるくらいでした
リクオと花雪とかけっこをして遊べば、その足の早さを褒めてもらって満足したり、次に遊ぶ場所まで手を取り合い……まるで本当の親子、父と娘の様に一夜を過ごした少女と鯉伴はこの上なく幸せだった筈だ
だがそれも全ては晴明とその配下による策に過ぎない、二人は着実に悲劇に向かって歩み始めている事を邪な意志で働く妖が見ているとも知らずに少女は自分の弟と妹の様な存在と遊び続けた、父に見守られながら
『あ!何だろう、アレ。行こう、花雪』
『う、うんっ』
『リクオ、花雪。あまり遠くへいくなよ』
見た事がないものに好奇心をくすぐられたリクオが花雪を連れ、離れてしまう為に少女と鯉伴は自然と二人っきりとなる。少女と共に二人の後を追いかけようとした鯉伴の視界に不意に金色の花弁が入り込む
視界を微かに横へ動かすとそこには満開の山吹の花が咲き誇っていた、乙女の名字もこの山吹の花から取られた。化物屋敷で小妖怪達の世話をしたり、学問を教えていた娘幽霊こそが彼女ー山吹乙女。鯉伴が名付けた名前である
ー山吹…
『わぁ…キレイ』
一面の山吹の花に心弾ませ、花畑に駆け込んだ少女は父に贈るものとしてなのか、花束を造り始める。そんな小さな背中を実の子の様に鯉伴は温かく見守るも、山吹を見た事で更に影が深まる乙女へと思い馳せていた
山吹は確かに乙女の名字として自分が与えたものだ、けれど同時に乙女が屋敷を後にする時に自分へと残したものでもある。そう、あの哀しい歌を綴った古歌に沿えられた花も山吹の一枝だった
『"七重八重 花は咲けども山吹の 実のひとつだに なきぞ悲しき"』
山吹の花を見て、思い出すのはいつも彼女と彼女の残した最後の古歌。繁栄する奴良組を支えて来た心の裏に隠された、跡継ぎに恵まれなかった哀しい女性の思いを綴った歌を鯉伴は忘れる事が出来なかった
ふと浮かんだものをこれまた、ふと鯉伴は呟いただけだ。かつて栄光と共にあった伴侶の姿と彼女と過ごした日々を懐かしんで。けれどその古歌を聞いた少女の手がぴたりと止まり、後少しで完成する筈の花束も未完成のままとなる
『あのあと……山吹の花言葉を何度も調べちまったっけ
"気品"、"崇高"……そして…"待ちかねる"、まるで…オレたちの娘みてぇだ』
『お父さーん』
『リクオ…』
この少女がまるで自分達が待ちかねた子供の様に思えて仕方がない。もしもと思ってしまう、もしも狐の呪いが存在せず、無事に乙女との間に子が生まれたのなら、きっとこの少女の様に乙女に良く似た娘だったのだろうと
遠くからの花雪と遊んでいたリクオの呼び掛けに鯉伴が振り返った瞬間、少女が持っていた花束が刀へと姿を変え、無防備な背中から胸を一気に貫いた。山吹の花弁に混じって、虚空へと鮮血が飛び散る