第四十二幕 そして月は彼と見向かう
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「そうかい、じゃあ――」
「ああ、これから京都に発つ」
その言葉が完結するのと同時、ぬらりひょんは再びリクオへと切り掛かるもその姿は黒い霧となり刃は届かない
花雪もぬらりひょんもその事には驚かない、前者はすでに見ていたからで後者はその技が自分と同じものだったから
ぬらりひょんの刃から消散したリクオの姿は仏間の前で凝固する
「おお~よくできてるじゃねーか。ま、好きにするがええさ。お土産に八つ橋よろしく」
「…ずいぶん簡単じゃねーか」
「因縁を断ってこい、帰ってきたらお前が三代目じゃ」
晴れ晴れとした笑みを浮かべ、ぬらりひょんはリクオを送り出す言葉を発し自分はこれ以上邪魔しないと示す
そんな祖父を見つめているとリクオはじじい、と彼を呼び止めた
「何じゃい」
「少し席を外してくれねぇか」
「リクオ…?」
「若い者の邪魔をするようなヤボはせんわい、リクオ、さっさと決めろよ」
「分ぁってるよ、さっさと行け」
にやにやと意地の悪い笑みを残し、ぬらりひょんは言われるがままに仏間を後にしリクオと不思議そうに首を傾げる花雪だけが残る
てっきりぬらりひょんの了承を得たら京都へ発つものだと思っていた為にリクオの予想外の行動に彼女はぬらりひょんが消えた襖を見つめていた
「リクオ、何でぬらおじい様を…」
「花雪」
「は、はい?」
「オレ達は今から京都に因縁を断ちに行く、だがその前に白黒ハッキリさせたい事がある
未練を残したままで行けば、京都での戦いで足を掬われかねねぇからな」
「未練って…そんな死にに行く様な風に言わないでよ」
「死なない為に白黒ハッキリさせんだよ、急くなよ花雪」
「…リクオの白黒ハッキリさせたい事、って?」
「花雪、四国の奴等との戦いの前に交わした会話覚えてるか?」
「四国の人達との…戦いの前…?」
投げられた問いかけに花雪はきょとりと目を丸くするも言われるがままに記憶の引き出しを探り始める、ただその様子をリクオはじっと見ていた
その瞳が自分を急かせるものではないものの彼の瞳とある記憶が一致し目覚める
「あ…」
―「?私とも七分三分の盃を?」
―「イヤ違う、三三九度の盃だ」
―「え?」
―「受けてはくれねぇか?」
「その様子じゃ思い出した様だな」
「な、何で今更昔の事を…?」
四国の彼らと戦う前の会話で明確に覚えている衝撃的な言葉に花雪はかぁっと頭の天辺まで赤くし、その顔を隠すかの様に袖口で口元を隠し視線を下に落とす
一体この少女はどこまで赤くなるのか知りたい気持ちがリクオに沸くものの今は抑え、空いたままのもう一方の華奢な手首を取り、驚いた彼女と瞳とが交差する
「花雪、今でもオレはその時からお前を思う気持ちは変わってない、お前に隣でオレのこれから辿る道を照らしてもらいたい、共に道を共有したい
そして何よりも戦いから帰って来た時、オレが惚れた花が綻ぶ様な花雪の笑顔で出迎えて欲しい」
「リ、クオ…」
「"月詠姫"としてのお前も確かに魅力的だ、だがオレは"月夜見花雪"としての心が欲しい」
四国の時よりも明確な自分に向けられた想い、自分を見つめる瞳は熱く、すっぽりと包まれた手を握る強さが痛い程に想いの真剣さを花雪に届ける様だ
何と皮肉な事かあの夜の時から彼女の気持ちは定まっていた、少しの時間のずれがここまで時間をかけさせてしまった
申し訳ないと思う中で嬉しさも同時に抱いた、彼の痛い程の想いを聞かせてもらったから
「花雪、返事を聞かせちゃくれねぇか?」
「…私はまだお母さん達に比べたら未熟だし、まだ戦う覚悟も…戦う皆を送り出せる様な度胸も持ち合わせていない
でも…私は人間や妖怪の為に戦うリクオの傷を癒したい、今日この時だけじゃなくてこれから先もずっと…あなたの隣で」
「!花雪、それ、は…っ」
「あの時は自分の気持ちが定かじゃなかったから断ったけど…あなたの杯を今度こそ…交わせて下さい」
「花雪…っ」
「きゃ、あっ」
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