第八十幕 かつて、山吹の花が咲いていた
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抱いていた羽衣狐の体をリクオはその場へと下ろす、依然として彼女は固く瞳を閉じたままで目を覚ます事はない。そもそも、彼女の本体は他ならぬ晴明の手によって地獄に落ちた、もう目覚める事はないのかもしれない
千年間、子供との再会を願い、転生を繰り返して来た母の心を踏みにじる行為へリクオは怒りを覚えた。羽衣狐だけではない、多くの妖や人を裏で操り、傷付く様に仕掛けたこの男を現世で野放しにする訳にはいかなかった
「たたっ斬る!」
「!?リ…リクオ様!! 花雪様と二人でもダメだ!!」
「リクオ、何やってんの。見てなかったのか今のお!?」
「……援護するぞ。リクオを」
晴明へと祢々切丸の刃先を向け、宣言するリクオの言葉により、場の緊張感が一気に高まる。伏目稲荷で自分達があれ程までに苦戦した土蜘蛛を、腕をたった一振りしただけで滅した力は妖にとって災いに他ならない
いつものコンディションならまだしも、羽衣狐との戦いに身を投じていたリクオの体力や状態は最悪と言っていい。そんな状態にあっても戦おうとする主の姿は無謀としか言い様がなく、彼の百鬼は不安と焦燥の色を濃くした
「奴良くん…」
ーめ…滅せられる!!
「リクオ様、花雪様アア」
自分達の身を案じる氷麗の声を背景に祢々切丸を振るったリクオの目の前で信じられない事が生じた。土蜘蛛の時の様に何かしらの術を使っての防衛ではない、何の変哲もない指先一つだけで晴明は祢々切丸を止めてみせたのだ
後もう少し、もう少し力を加えれば、晴明に刃が届く距離だというのにその後一歩が動かない。押す事は勿論退く事も許されない、これではただ晴明に祢々切丸を見せる為に差し出しているだけに過ぎないではないか
ー何!?
「なる程…祢々切丸か、たしかにいい刀だ
だが月読の力を持ってしても、私を倒す程の力ではない」
土蜘蛛の攻撃を止めた時の盾よりも遥かに小さな五芒星の陣が祢々切丸の刃先に浮かぶ。何かしらの術をかけられようとしているのは分かっていたものの、リクオには退く事も許されずにただただ、それを見つめるしか出来ない
その手に握っていた祢々切丸に走る亀裂を食い止める事も出来ず、粉々に破壊された刃の破片はリクオの目の前で空へと四散する。花雪との鬼纏で退魔の力が増幅した刃といえども、晴明にとっては力不足に感じられた
「ね…祢々切丸が…」
「お前が鯉伴の"真の息子"か」
「!!」
「力が足りんな……」
祢々切丸を失い一瞬だけ、リクオが我を失っている間に晴明は彼へと魔王の小槌を振りかざそうと間合いを詰めていた。魔王の小槌は斬りつけた者の畏を奪う力を持つ、そんな刀による一撃は満身創痍のリクオには致死量に値する
戦う術を同時に失ったリクオに魔王の小槌をどうにかする術はない、そんな彼を助けようと瓦礫の合間を飛び越えて、駆けつけようとイタクが疾駆するも最上階と地上では距離が遠すぎる。彼が駆けつけた頃にはもう――
「リクオオオオオ」
ーまに…あわねぇ!!
「っ…!」
遠くから響いてくるイタクの声に反応したのは呼ばれた本人ではなく、祢々切丸が破壊された事で鬼纏を強制解除された花雪。鬼纏後で重い体は黒田坊の様に動く事は容易ではない。それでも無理に動かさなければならない時が今なのだ
動け、と命令された両腕は立ち尽くしたままのリクオの体を抱き止める、何故と語りかけてくる驚きに満ちた瞳へ降ってきたのは来るべき晴明の一太刀に真剣に見向かう、花雪の緊張で強張った表情
止めろ、と花雪へと叫ぶ寸前、魔王の小槌がその華奢な体を斬る間際に二人の体が後方へと突き飛ばされる。驚き、振り返るとそこには花雪が受けようとしていた魔王の小槌を代わりに受ける羽衣狐が、清明の前に立ちはだかっていた
「おい、あんた…何を」
「どうして、あなたが…」
「あわれな…いつわりの記憶に…情がわいたのか…」
晴明の前へと羽衣狐が立ちはだかった為にリクオと花雪は傷を負わずに済む、だがその代わりに祢々切丸に続き、魔王の小槌を受けた羽衣狐の体は立っている事は出来ずにリクオの方へと倒れ込む
倒れ込んできた体を何とか受け止めるリクオだが何故、敵同士であった筈の自分達を羽衣狐が庇ったのかは分からない。その意図を聞こうとリクオはその体を揺さぶり、呼び掛けるものの彼女からは応える気力さえも削がれていた
「おい、羽衣狐!おい、お前…何やってんだ!?」
「リクオ…」
知らない筈のリクオの名前をか細い声で呟く羽衣狐、その事も含めて再度彼女に問いかけようとするリクオの背後に晴明が忍び寄る。今度こそ今後、自分の邪魔になるであろうリクオの息の根を止めようとする意志が見られた
振り下ろされる刃を止める手段はない、勿論それから誰かが守ってくれる保証もどこにもない。例え防げないとしても、避けるまでの時間を稼ぐ事は花雪にも出来る。羽衣狐が守ってくれた様に自分もリクオを守りたい
「だめ!!」
リクオと、そして何の意図か分からないものの自分達を守ってくれた羽衣狐を今度は自分が守る為に花雪は鬼發を晴明へと放つ。彼女の業に攻撃力は殆どないに等しい、それでも目眩ましくらいにはなる筈だ
その思惑通り、否以上に花雪の業は晴明に深いダメージを与える事に成功した。魔王の小槌を振り下ろす筈だった腕の肉が花雪の鬼發を受け、溶け落ちたのだ。どうやら癒しの力は晴明にとって、真逆の効果を現したらしい
「月読の力…この身には毒となったか。あの時、消せなかったのが災いした様だ」
「やっぱり、あなたが私の両親を…!」
自分の記憶に疑いを持っていた訳ではないが、あの炎の中で見た男とその口から聞いた言葉を前にして漸く花雪は確信する。この男がやはり自分達一家を襲い、両親を相打ちに導いた諸悪の根源なのだと
あんなにも仲睦まじい両親を相打ちなどという、最も汚い方法で死に至らしめた事に対して憎悪の念が胸の内から溢れるまま、晴明に仇討ちの矛先を向けてしまいたかった。例え、自分の力が及ばないと知っていても
千年間、子供との再会を願い、転生を繰り返して来た母の心を踏みにじる行為へリクオは怒りを覚えた。羽衣狐だけではない、多くの妖や人を裏で操り、傷付く様に仕掛けたこの男を現世で野放しにする訳にはいかなかった
「たたっ斬る!」
「!?リ…リクオ様!! 花雪様と二人でもダメだ!!」
「リクオ、何やってんの。見てなかったのか今のお!?」
「……援護するぞ。リクオを」
晴明へと祢々切丸の刃先を向け、宣言するリクオの言葉により、場の緊張感が一気に高まる。伏目稲荷で自分達があれ程までに苦戦した土蜘蛛を、腕をたった一振りしただけで滅した力は妖にとって災いに他ならない
いつものコンディションならまだしも、羽衣狐との戦いに身を投じていたリクオの体力や状態は最悪と言っていい。そんな状態にあっても戦おうとする主の姿は無謀としか言い様がなく、彼の百鬼は不安と焦燥の色を濃くした
「奴良くん…」
ーめ…滅せられる!!
「リクオ様、花雪様アア」
自分達の身を案じる氷麗の声を背景に祢々切丸を振るったリクオの目の前で信じられない事が生じた。土蜘蛛の時の様に何かしらの術を使っての防衛ではない、何の変哲もない指先一つだけで晴明は祢々切丸を止めてみせたのだ
後もう少し、もう少し力を加えれば、晴明に刃が届く距離だというのにその後一歩が動かない。押す事は勿論退く事も許されない、これではただ晴明に祢々切丸を見せる為に差し出しているだけに過ぎないではないか
ー何!?
「なる程…祢々切丸か、たしかにいい刀だ
だが月読の力を持ってしても、私を倒す程の力ではない」
土蜘蛛の攻撃を止めた時の盾よりも遥かに小さな五芒星の陣が祢々切丸の刃先に浮かぶ。何かしらの術をかけられようとしているのは分かっていたものの、リクオには退く事も許されずにただただ、それを見つめるしか出来ない
その手に握っていた祢々切丸に走る亀裂を食い止める事も出来ず、粉々に破壊された刃の破片はリクオの目の前で空へと四散する。花雪との鬼纏で退魔の力が増幅した刃といえども、晴明にとっては力不足に感じられた
「ね…祢々切丸が…」
「お前が鯉伴の"真の息子"か」
「!!」
「力が足りんな……」
祢々切丸を失い一瞬だけ、リクオが我を失っている間に晴明は彼へと魔王の小槌を振りかざそうと間合いを詰めていた。魔王の小槌は斬りつけた者の畏を奪う力を持つ、そんな刀による一撃は満身創痍のリクオには致死量に値する
戦う術を同時に失ったリクオに魔王の小槌をどうにかする術はない、そんな彼を助けようと瓦礫の合間を飛び越えて、駆けつけようとイタクが疾駆するも最上階と地上では距離が遠すぎる。彼が駆けつけた頃にはもう――
「リクオオオオオ」
ーまに…あわねぇ!!
「っ…!」
遠くから響いてくるイタクの声に反応したのは呼ばれた本人ではなく、祢々切丸が破壊された事で鬼纏を強制解除された花雪。鬼纏後で重い体は黒田坊の様に動く事は容易ではない。それでも無理に動かさなければならない時が今なのだ
動け、と命令された両腕は立ち尽くしたままのリクオの体を抱き止める、何故と語りかけてくる驚きに満ちた瞳へ降ってきたのは来るべき晴明の一太刀に真剣に見向かう、花雪の緊張で強張った表情
止めろ、と花雪へと叫ぶ寸前、魔王の小槌がその華奢な体を斬る間際に二人の体が後方へと突き飛ばされる。驚き、振り返るとそこには花雪が受けようとしていた魔王の小槌を代わりに受ける羽衣狐が、清明の前に立ちはだかっていた
「おい、あんた…何を」
「どうして、あなたが…」
「あわれな…いつわりの記憶に…情がわいたのか…」
晴明の前へと羽衣狐が立ちはだかった為にリクオと花雪は傷を負わずに済む、だがその代わりに祢々切丸に続き、魔王の小槌を受けた羽衣狐の体は立っている事は出来ずにリクオの方へと倒れ込む
倒れ込んできた体を何とか受け止めるリクオだが何故、敵同士であった筈の自分達を羽衣狐が庇ったのかは分からない。その意図を聞こうとリクオはその体を揺さぶり、呼び掛けるものの彼女からは応える気力さえも削がれていた
「おい、羽衣狐!おい、お前…何やってんだ!?」
「リクオ…」
知らない筈のリクオの名前をか細い声で呟く羽衣狐、その事も含めて再度彼女に問いかけようとするリクオの背後に晴明が忍び寄る。今度こそ今後、自分の邪魔になるであろうリクオの息の根を止めようとする意志が見られた
振り下ろされる刃を止める手段はない、勿論それから誰かが守ってくれる保証もどこにもない。例え防げないとしても、避けるまでの時間を稼ぐ事は花雪にも出来る。羽衣狐が守ってくれた様に自分もリクオを守りたい
「だめ!!」
リクオと、そして何の意図か分からないものの自分達を守ってくれた羽衣狐を今度は自分が守る為に花雪は鬼發を晴明へと放つ。彼女の業に攻撃力は殆どないに等しい、それでも目眩ましくらいにはなる筈だ
その思惑通り、否以上に花雪の業は晴明に深いダメージを与える事に成功した。魔王の小槌を振り下ろす筈だった腕の肉が花雪の鬼發を受け、溶け落ちたのだ。どうやら癒しの力は晴明にとって、真逆の効果を現したらしい
「月読の力…この身には毒となったか。あの時、消せなかったのが災いした様だ」
「やっぱり、あなたが私の両親を…!」
自分の記憶に疑いを持っていた訳ではないが、あの炎の中で見た男とその口から聞いた言葉を前にして漸く花雪は確信する。この男がやはり自分達一家を襲い、両親を相打ちに導いた諸悪の根源なのだと
あんなにも仲睦まじい両親を相打ちなどという、最も汚い方法で死に至らしめた事に対して憎悪の念が胸の内から溢れるまま、晴明に仇討ちの矛先を向けてしまいたかった。例え、自分の力が及ばないと知っていても