第七十九幕 天照の光すら、もう見えない
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「ここは…」
ー誰もいない?
「…?!」
一面に広がる漆黒色によって、この場へと招かれたリクオの視界は塗り潰されていた。否、本当は何かあるのかもしれないが、それすらもこの世界を彩る色によって排除されている可能性もある
何故、自分がここへ招かれたのかは分からないが、招かれた以上はその理由を探さなければならない、と歩き出したリクオの視界が初めて黒以外の色を捉えた
――それは紅、今は一部に止まっているが、いずれは世界全てを焼き尽くすであろう炎の色だった
「これはまさか、花雪の家が襲われた時の記憶…?」
ーあの目玉を見た時に何か思い出したのか…?
「…入ってみるか」
鬼纏をしていた事でこの件について、欠陥した部分を思い出した花雪の精神へと自分は引き込まれたのだろう。それは逆を返せば、彼女一人では背負い切れないものがこの先で待っているという様にも捉える事ができた
炎に包まれる屋敷へ一歩、踏み込んだリクオの歩みに躊躇いはない。この世界が花雪が作り出した世界なら、早く彼女を捜し出さなければと気持ちが急かす。彼女はいつも一人で何かを抱え込む悪癖がある
到底、一人で背負い切る事が出来ないものを無理に背負おうとすれば、待っているのは心の破滅だ。そうなる前に、と炎の中をリクオは突き進む。不思議と、炎の中を歩いている筈なのに熱や息苦しさは感じられなかった
「ここのどこかで花雪と親父さんたちが…」
「おとうさん、おかあさん、どこー?」
「!」
背後から聞こえて来た、まだ幼く舌ったらずな呼び声にリクオは振り返る。そこには両親に言いつけられた約束を破り、隠れていた押し入れから出てきた幼い日の花雪が両親を求め、彷徨い歩く様子が目に映った
幼い花雪はこの場にいる筈のないリクオの姿を気にかける様子もなく、その横を通り過ぎて行ってしまった。まるでリクオの存在をいない者と扱うかの様に少女は炎の熱に侵されながらも、先へと進んでいく
ー気付いてないのか?
「あ、おかあさん!」
「ダメ。花雪、来ないで!」
「おかあ、さん?」
今まで両親の姿を求めて歩み続けた花雪が足を止め、食い入る様に目の前を見つめ続ける少女の視線をリクオが辿ってみるとそこには、少女の母が血塗れになって床に倒れた姿があった
リクオの父ー鯉伴でさえも叩き伏せて来た強さを誇る彼女に一太刀浴びせた者を、楓は他ならぬ花雪に見せる訳にいかないと決死に声を荒げたのだ。何故なら――自分を刺したのは自分が愛し、花雪を愛した父親だったのだから
「おとうさん、どう、して…?どうして、おかあさんがたおれてるの?」
「っ花雪、来ちゃ、いけない…!っぐ…!」
「親父さん!!」
ー一体、何が起こってる?親父さんが花雪のお袋さんを斬った…?!
そして、そんな親父さんを誰が刺したっていうんだ…
どうやら花雪に限らず、錫兎達にもリクオの姿は視認する事は出来ない様でリクオの声は届かないままに錫兎は彼の手から奪い取られた愛刀によって、楓と折り重なる様に倒れ込む
何故、錫兎が楓を斬ったのか、そしてその錫兎を斬った人物は誰なのかリクオにもそして倒れた両親を見つめたまま、動かない花雪にも分からない。辛うじて分かったのは父親が自分の母親を刺した、殺したという事だけだろう
「おとう、さん?」
「フェフェフェ、そうじゃそうじゃ。お前の父がお前の母を殺したんじゃ
ワシらはその手伝いをしたまで、普段抑えていたお前の父の感情を解放してやったまでのこと」
「!コイツは…」
倒れた錫兎の体から現われたのは京妖怪の一人であり、清明に魔王の小槌を渡した事で京都を破壊した人物ー鏖地蔵だった。その口振りから察するにこの男が錫兎の心を操作し、楓を殺害させたのだろう
否、良く目を凝らしてみると炎に紛れて存在する暗闇の向こうにまだ誰かがいる。リクオに既視感が生まれる、瓜二つなのだ、自分が鯉伴殺害の場に居合わせた時と。そうなると鏖地蔵の後ろに控え、この件を手引きしていたのは――
「あなたは、だぁれ?」
「晴明様。この子供、どうしましょうか」
ー安倍晴明…!コイツ、この件でも手を引いてやがったのか…!
『残しておくと後々のタメにならんかもしれんな…ここで消してしまえ、山ン本』
「花雪、逃げるんだ!!」
「おとうさん…っ!」
「ム…?!まだ動けおったか」
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