第七十八幕 慟哭が幾万の輝夜を揺らす
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晴明はただ手を振り下ろしただけだった。それだけだというのに土蜘蛛が持つ巨体は階層を突き抜けて地面目掛け、引きずり込まれていく。落下地点は羽衣狐が引きずり込まれたまま、口を開いた地獄の窯
信じられない事が目の前で起こっている、と京妖怪達も思わざるを得なかった。あの土蜘蛛が、災厄と称される力を持つ土蜘蛛がたったあれだけの事で清明に力が叶わなかったなんて。まるで赤子の手を捻る風景を見ているかの様だ
「!?ウソッ!?」
「そんな、土蜘蛛が……」
「滅っ…」
「せいめいィィ、待てコラァア」
落ちてきた土蜘蛛の体を地獄の窯から伸びた腕が無数に掴む、そしてこれまた羽衣狐と同じ様に為す術無く土蜘蛛もまた地獄へと引きずり込まれていく。
災厄並の力を持ってしても地獄に勝つ事が出来ず、呆気なく地獄へと飲まれた土蜘蛛の様子を見下ろしていた晴明へと何故だか息が荒れた鏖地蔵が姿を現す。大方、土蜘蛛の様に清明の術に嵌まらない様に必死になったからだろう
「晴明様。約束通り、刀をお持ちしましたよ」
「随分、キタナイ街になってしまった
我々の棲むべきところには、ふさわしく…ない」
鏖地蔵が所持していた古びた刀ー魔王の小槌を受けとった清明は背景に広がる京都の街並、弐條城で妖同士の戦いが起こっているであろう等と知らずにいつも通りに過ごす人々の営みを一眸する
平穏で穏やかな街は晴明の目から見ると千年前と同じ様に陰陽のバランスが取れた都ではなく、人の手によって汚されてしまったと映る様だ。もう一度、あの頃の様な都に戻す為には今、目の前にある都を破壊しなければならない
魔王の小槌を晴明が一振りした直後、それは地下から時間をかけて爆発的に噴き出した。街の至る所から立ち上る火柱とその余波によって、破壊される街並と逃げ惑う人々。それは花開院家が何を置いても阻止したかった光景だった
「!?」
ーきょ…京都が…
「もう一度、造り直さねばな…」
ーな…なんだ…こいつ…こんな奴がいるのか
「うん、いい刀だ
ごくろうだった、山ン本五郎左衛門」
「え?」
ー山ン本五郎左衛門…!?
「山ン本…!?」
「山ン本五郎左衛門だと…!?」
その名前を聞いた瞬間、古い時代から奴良組にいる首無や黒田坊の構成員達が反応を示した。まだ若い妖である氷麗と同じく"山ン本"という名前を知る筈がない花雪もその名前を聞いた瞬間、背中を冷たい汗が伝った
知らない、そんな名前を知っている筈がないのにどうしてこんなにも心臓が騒がしいのか――いや、目を反らすのは止めよう。自分はその名前を知っている、聞いた事がある。あの全てが炎に包まれた忌々しい日の中で
「おとうさん、どう、して…?どうして、おかあさんがたおれてるの?」
「フェフェフェ、そうじゃそうじゃ。お前の父がお前の母を殺したんじゃ」
『あ、あぁぁ…』
『残しておくと後々のタメにならんかもしれんな…ここで消してしまえ、山ン本』
――全てを紅が飲み込んでいく。長年住み慣れた家も、血塗れになって折り重なる様に倒れた父と母も幼い自分一人をこの世に取り残し、紅に燃え上がる炎の中へと消えていく
押し入れから飛び出した自分に誰かが嘲笑っている、お前の父親は本当はお前達を嫌っていたからこうなったと。立ち尽くす自分を誰かが見ている、真っ赤な炎に照らし出された顔が目の前の男と重なり合う。記憶が混濁して耐えられない
『あぁぁぁぁぁ!!!』
「っ花雪…?!」
ー何だ、飲まれる…!
慟哭が幾万の輝夜を揺らす
(少年が招き誘われるは)
(少女の記憶の深層)
(赤く燃える夜へと回帰する)
信じられない事が目の前で起こっている、と京妖怪達も思わざるを得なかった。あの土蜘蛛が、災厄と称される力を持つ土蜘蛛がたったあれだけの事で清明に力が叶わなかったなんて。まるで赤子の手を捻る風景を見ているかの様だ
「!?ウソッ!?」
「そんな、土蜘蛛が……」
「滅っ…」
「せいめいィィ、待てコラァア」
落ちてきた土蜘蛛の体を地獄の窯から伸びた腕が無数に掴む、そしてこれまた羽衣狐と同じ様に為す術無く土蜘蛛もまた地獄へと引きずり込まれていく。
災厄並の力を持ってしても地獄に勝つ事が出来ず、呆気なく地獄へと飲まれた土蜘蛛の様子を見下ろしていた晴明へと何故だか息が荒れた鏖地蔵が姿を現す。大方、土蜘蛛の様に清明の術に嵌まらない様に必死になったからだろう
「晴明様。約束通り、刀をお持ちしましたよ」
「随分、キタナイ街になってしまった
我々の棲むべきところには、ふさわしく…ない」
鏖地蔵が所持していた古びた刀ー魔王の小槌を受けとった清明は背景に広がる京都の街並、弐條城で妖同士の戦いが起こっているであろう等と知らずにいつも通りに過ごす人々の営みを一眸する
平穏で穏やかな街は晴明の目から見ると千年前と同じ様に陰陽のバランスが取れた都ではなく、人の手によって汚されてしまったと映る様だ。もう一度、あの頃の様な都に戻す為には今、目の前にある都を破壊しなければならない
魔王の小槌を晴明が一振りした直後、それは地下から時間をかけて爆発的に噴き出した。街の至る所から立ち上る火柱とその余波によって、破壊される街並と逃げ惑う人々。それは花開院家が何を置いても阻止したかった光景だった
「!?」
ーきょ…京都が…
「もう一度、造り直さねばな…」
ーな…なんだ…こいつ…こんな奴がいるのか
「うん、いい刀だ
ごくろうだった、山ン本五郎左衛門」
「え?」
ー山ン本五郎左衛門…!?
「山ン本…!?」
「山ン本五郎左衛門だと…!?」
その名前を聞いた瞬間、古い時代から奴良組にいる首無や黒田坊の構成員達が反応を示した。まだ若い妖である氷麗と同じく"山ン本"という名前を知る筈がない花雪もその名前を聞いた瞬間、背中を冷たい汗が伝った
知らない、そんな名前を知っている筈がないのにどうしてこんなにも心臓が騒がしいのか――いや、目を反らすのは止めよう。自分はその名前を知っている、聞いた事がある。あの全てが炎に包まれた忌々しい日の中で
「おとうさん、どう、して…?どうして、おかあさんがたおれてるの?」
「フェフェフェ、そうじゃそうじゃ。お前の父がお前の母を殺したんじゃ」
『あ、あぁぁ…』
『残しておくと後々のタメにならんかもしれんな…ここで消してしまえ、山ン本』
――全てを紅が飲み込んでいく。長年住み慣れた家も、血塗れになって折り重なる様に倒れた父と母も幼い自分一人をこの世に取り残し、紅に燃え上がる炎の中へと消えていく
押し入れから飛び出した自分に誰かが嘲笑っている、お前の父親は本当はお前達を嫌っていたからこうなったと。立ち尽くす自分を誰かが見ている、真っ赤な炎に照らし出された顔が目の前の男と重なり合う。記憶が混濁して耐えられない
『あぁぁぁぁぁ!!!』
「っ花雪…?!」
ー何だ、飲まれる…!
慟哭が幾万の輝夜を揺らす
(少年が招き誘われるは)
(少女の記憶の深層)
(赤く燃える夜へと回帰する)