第七十七幕 闇より、黄泉よりのささめき
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「すまぬ、母上…」
「あ…ああ…」
復活を遂げた清明の波打つ長い髪と表情を黎明が照らし出す、久方ぶりに邂逅する息子の姿に母でありながらも胸がときめく羽衣狐には先程まであった、締め付ける様な頭の痛みもどこかへと飛んでいってしまった
自分の知らぬ所で手を引いていた怒りすらも忘れ、羽衣狐の思考にも変化が訪れた。晴明が手を回した事も、この一件も全ては自分と晴明が再会する為には仕方のない事であったのではないかと清明を前にしたら、簡単に許容できてしまったのだ
「…うっ…晴明……お、お前が望んだことなのかえ…?」
ーあれが、鵺………
「すまない…………"あの女児を母上に"と…地獄からあてがったのは私です。こうなるとは思っていなかった……」
「おお…おお……もういい…もういいのじゃ……!! 近う…近う…」
依代の記憶に塗り潰されそうになる苦しみに苛まれる母を見つめる晴明は心を痛めている様だ、あの少女を依代として母に宛てがった事を後悔さえもしている様子が窺える
けれどそんな事はもうどうでも良くなり、許しさえもした羽衣狐は漸く会えた息子に近付き、その体を強く抱き締める。晴明を抱く羽衣狐は一人の母として表情を和らげ、久方ぶりの息子との再会に心を打ち震わせている
「おおぉ…晴明…やっとこの手に…」
――不意に千年待ち望んでいた再会を邪魔するかの様に、その音は聞こえて来た
まるで火にかけた窯が煮えたぎる様な音に我が子との再会を喜ぶ羽衣狐が振り返ると、先程まで自分の下僕と奴良組が交戦していた眼下でそれは大きく口を開いていた
「!?」
「あれが…”地獄”です、私が千年間いた、妖も人も…還る場所です」
「ヒッ」
この世のものではない地獄の窯から伸びてきた手によって髪を捕まれ、依代を失った羽衣狐には歯向かう術もなく、いとも簡単に窯の中へと引きずり込まれる
助けを求める為にも手を伸ばす羽衣狐だが、助けを求められた息子にはその手に応える意志はないらしく、今まで自分がいた地獄へ母が吸い込まれる姿を彼はただ傍観するのみ。これもまた自分達が夢見た世界を実現する為に必要なこと
「せ…」
「千年間ありがとう…偉大なる母よ。あなたのおかげで再び道を歩める…
あなたは私の太陽だった、希望の光…ぬくもり…」
「せいめいッ、せェェメェエ。愛じでるウウウウ」
「あなたに背を向けてこそ、この道を歩めるのです」
皮肉な事に自分が復活させた息子の手により、地獄に落とされるというのに羽衣狐には怒りや悲しみの感情の類いを見せない。その逆、恐ろしい事に最期の最期になっても子ー晴明を愛し、思う気持ちに変化は現れる事はなかったのだ
世を闇で覆うという目的の為に母を地獄へと落とした清明は地獄に住まう者達の手によって、地獄へ引きずり込まれる母に背を向ける。月が太陽によって輝く様に、彼もまた母を背にこの道を歩み始める
「影なる魔道―――背に光あればこそ、私は真の百鬼夜行の主となりて歩む
ゆくぞ、妖ども。私に…ついてこい」
闇より、黄泉よりのささめき
(百鬼も母さえも)
(全てはこの男の手の中で)
(踊らされていたに過ぎない)