第七十六幕 溢れ出す零墨に鯉が覗く
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息子の呼び掛けに応える様に一際、大きな欠片に新たな記憶が浮かび上がる。欠片の中で幼い少女が魔王の小槌と思われる刀で鯉伴を突き刺し、微笑んでいる。その少女は他ならぬ羽衣狐自身だった
自分と思われる少女がぬらりひょんに似た男を殺害している所を目撃したであろう、その記憶にリクオへトドメを指す事も忘れ、羽衣狐は目を奪われた。この記憶を羽衣狐は、知らない。この記憶は彼女のものではなかった
「な…なんだ、あの記憶は」
「二代目…?」
「鯉伴様が刺されておる…」
「…」
ーあの視点は―――リクオ様の、記憶―――?
『これは鯉伴おとうさまが、殺された夜の…?』
それぞれの主の下僕達のざわめきを背景に花雪もその記憶を見上げていた。あの少女に刺されている男性、リクオの父ー鯉伴が殺されたのを目撃したのはリクオしかいないと聞いた、だとするならこの記憶は――
欠片が次々と降る様にリクオが目撃した、あの夜の記憶が次々に映り込む中、リクオのものではない記憶が混じる。その記憶に感化される様に羽衣狐の脳裏に蘇った依代の記憶が、リクオの記憶の中に混ざり合う
ーまた―――
「うぅ、ううううううう」
「お姉さま!?」
ーようすがおかしい…!!
リクオにトドメを刺す筈であった太刀を手放し、羽衣狐は頭痛に苛まれる頭を抱える。頭痛の原因はリクオの記憶によって引き出された依代の記憶、完全に目覚めようとするその記憶が羽衣狐という人格を苦しめていた
依代の記憶に苛まれる羽衣狐の背後を一つの影ーゆらが陣取っていた、羽衣狐の今の状態なら、彼女に気配を気付かれる事なく攻撃が通るかもしれない。――だが指の隙間から覗く目が低く、ゆらの存在を指摘してきた
「そこで何をしておる、娘…」
完全にこちらの場所を把握される前に廉貞を放とうと力を込めるゆら、だが廉貞と尾の俊敏性を天秤にかけると羽衣狐の尾の方が勝った様でゆらを羽衣狐の尾が襲う
反射的に目を瞑り、けれど衝撃が来ない事に不信感を持ったゆらの目の前では自身を叩き潰そうとする尾が、護の札と水性の式神を前に進行出来ずにいた。そして自分の前に躍り出る黒い布に包まれた背中を目の当たりにする
「地を這え、"言言"」
「!!」
「ゆらは、ボクが守る」
目の前に現れた竜二の命によって、ゆらへの攻撃を阻んでいた式神ー言言がその尾を伝い、羽衣狐の体を再び冷たい水で浸した。先程は失敗した竜二と魔魅流の連携が再び羽衣狐へと向かっていく
雷を帯びた魔魅流の腕が羽衣狐の腕を掴み、その力を放出しようと寸出まで流れは彼らへと傾いていた。だがゆらの時と同じく尾の俊敏性に勝る事は出来ずに、魔魅流の胸を羽衣狐の尾が貫き、連携は失敗に終わってしまう
「!!」
「お兄…」
羽衣狐を捕らえながらもその前に倒れた魔魅流の姿が想定外だったのか、隙を生み出す程に驚愕する竜二の体を羽衣狐の尾がその場から退出させる
吹き飛ばされる兄を気遣い、駆け寄ろうともするゆらの足が完全にその場を離れる前に竜二は叫ぶ。自分達が繋げたこの道を無駄にするなと
「ゆらぁ、うてぇええ」
破軍 発動
「羽衣狐さまぁあ」
吹き飛ばされながらもそう叫んだ兄の言葉を受け、ゆらは秀元を含んだ花開院家先神の力を得た術を羽衣狐目掛けて放つ。苛む記憶の存在もあって、破軍は羽衣狐の拘束成功を果たす、ここからは祢々切丸の仕事だ
身動きが取れなくなった羽衣狐の背後からは最後の気力を振り絞ったリクオが接近。接近してくるのが分かっていながら、尾は破軍によって一寸足りとも動く事ができない。盾を失った身に祢々切丸の刃が飛び込んだ
リクオの背後に浮遊する欠片からこちらへと振り返る鯉伴の視線と祢々切丸の刃を受け、意識が朦朧とする羽衣狐の瞳が暫しの間、見つめ合う。この時、"彼女"はすでに羽衣狐という妖でなくなっていたのかもしれない
「お父…様…」
溢れ出す零墨に鯉が覗く
(懐かしい記憶、愛しいひと)
自分と思われる少女がぬらりひょんに似た男を殺害している所を目撃したであろう、その記憶にリクオへトドメを指す事も忘れ、羽衣狐は目を奪われた。この記憶を羽衣狐は、知らない。この記憶は彼女のものではなかった
「な…なんだ、あの記憶は」
「二代目…?」
「鯉伴様が刺されておる…」
「…」
ーあの視点は―――リクオ様の、記憶―――?
『これは鯉伴おとうさまが、殺された夜の…?』
それぞれの主の下僕達のざわめきを背景に花雪もその記憶を見上げていた。あの少女に刺されている男性、リクオの父ー鯉伴が殺されたのを目撃したのはリクオしかいないと聞いた、だとするならこの記憶は――
欠片が次々と降る様にリクオが目撃した、あの夜の記憶が次々に映り込む中、リクオのものではない記憶が混じる。その記憶に感化される様に羽衣狐の脳裏に蘇った依代の記憶が、リクオの記憶の中に混ざり合う
ーまた―――
「うぅ、ううううううう」
「お姉さま!?」
ーようすがおかしい…!!
リクオにトドメを刺す筈であった太刀を手放し、羽衣狐は頭痛に苛まれる頭を抱える。頭痛の原因はリクオの記憶によって引き出された依代の記憶、完全に目覚めようとするその記憶が羽衣狐という人格を苦しめていた
依代の記憶に苛まれる羽衣狐の背後を一つの影ーゆらが陣取っていた、羽衣狐の今の状態なら、彼女に気配を気付かれる事なく攻撃が通るかもしれない。――だが指の隙間から覗く目が低く、ゆらの存在を指摘してきた
「そこで何をしておる、娘…」
完全にこちらの場所を把握される前に廉貞を放とうと力を込めるゆら、だが廉貞と尾の俊敏性を天秤にかけると羽衣狐の尾の方が勝った様でゆらを羽衣狐の尾が襲う
反射的に目を瞑り、けれど衝撃が来ない事に不信感を持ったゆらの目の前では自身を叩き潰そうとする尾が、護の札と水性の式神を前に進行出来ずにいた。そして自分の前に躍り出る黒い布に包まれた背中を目の当たりにする
「地を這え、"言言"」
「!!」
「ゆらは、ボクが守る」
目の前に現れた竜二の命によって、ゆらへの攻撃を阻んでいた式神ー言言がその尾を伝い、羽衣狐の体を再び冷たい水で浸した。先程は失敗した竜二と魔魅流の連携が再び羽衣狐へと向かっていく
雷を帯びた魔魅流の腕が羽衣狐の腕を掴み、その力を放出しようと寸出まで流れは彼らへと傾いていた。だがゆらの時と同じく尾の俊敏性に勝る事は出来ずに、魔魅流の胸を羽衣狐の尾が貫き、連携は失敗に終わってしまう
「!!」
「お兄…」
羽衣狐を捕らえながらもその前に倒れた魔魅流の姿が想定外だったのか、隙を生み出す程に驚愕する竜二の体を羽衣狐の尾がその場から退出させる
吹き飛ばされる兄を気遣い、駆け寄ろうともするゆらの足が完全にその場を離れる前に竜二は叫ぶ。自分達が繋げたこの道を無駄にするなと
「ゆらぁ、うてぇええ」
破軍 発動
「羽衣狐さまぁあ」
吹き飛ばされながらもそう叫んだ兄の言葉を受け、ゆらは秀元を含んだ花開院家先神の力を得た術を羽衣狐目掛けて放つ。苛む記憶の存在もあって、破軍は羽衣狐の拘束成功を果たす、ここからは祢々切丸の仕事だ
身動きが取れなくなった羽衣狐の背後からは最後の気力を振り絞ったリクオが接近。接近してくるのが分かっていながら、尾は破軍によって一寸足りとも動く事ができない。盾を失った身に祢々切丸の刃が飛び込んだ
リクオの背後に浮遊する欠片からこちらへと振り返る鯉伴の視線と祢々切丸の刃を受け、意識が朦朧とする羽衣狐の瞳が暫しの間、見つめ合う。この時、"彼女"はすでに羽衣狐という妖でなくなっていたのかもしれない
「お父…様…」
溢れ出す零墨に鯉が覗く
(懐かしい記憶、愛しいひと)