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空気の一片にまで一切の汚れを許されない聖域
息を吸い込めば、アルコールで満たされた酸素が入り込む医務室で少女らしからぬ野太い悲鳴が木霊していた
「──いだだだだっ!」
「申し訳ありません、これ以上は優しくする術がない為、どうか我慢を。マスター」
「さっきと全然変わらないけど、そっかー!」
戦闘の最中、怪我を負ったルシティカを連れた天草の治療は最終フェイズへ
普段使いされてきたグローブを外した先でお目見えする真新しい傷──と幾つもの古びた傷の数々は、少女が過酷な運命の中にある証明のようで包帯を巻くことに天草は一瞬、躊躇した
「そんな顔しないで、シロウ」
「……どういったように映りましたか?」
「んー?今までの戦闘の中で怪我した所を見る私みたいな顔かな」
「ああ、それは…確かにそれならば、マスターも私に声をかけざるを得ませんね。かつての私のように」
「気にしないでって難しいかもしれないけど、本当の本当に大丈夫なんだよ
背中の傷と同じで手や腕、ロシアで貰った肩の傷も全部、シロウに会う為、今の私になるまでの道程なんだから!」
ルシティカの言いぐさは自分達にとっての転換期とも言える、キャメロットから変わりない
変わりのない中で微かに見え隠れする、これまでの異聞帯を乗り超えて来た”自分”という理由に天草はむず痒ささえ覚える
行動の支柱として根付かせたのは自分と再会するという道標。それが自惚れではないと確信させてくれるのは夏空色の瞳を瞬かせ、力強く笑うルシティカ本人に他ならない
取り繕わなければ生きていられなかった少女が本音で生きるようになった、その強さは瞳の光もあって眩く映った
「それに……」
「それに?」
「私が自分の傷を負い目にしたら、自分の夢の為に傷つくことを厭わないできたシロウも否定する事になるから」
「────、」
「…え?私、何か変な事を言ったかな?!」
「いえ、なんとまあ……貴女と遠くまで来たものだと感慨に耽っていただけですよ」
強くなった、と思う。幾つも繰り返してきたであろう出会いと別れで齎された学びはルシティカにとっての強さの一つだ
どうか跡として残った戦いの傷に、それ以上の福音が降り注ぐように。躊躇ったままであった包帯をルシティカの手の甲に巻き、天草は彼女へ笑いかけるのであった。
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