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奥まった場所に存在する礼拝室。その高い天井の先端で弾け、室内には歌声が降り注いでいる
思い出すのは今よりも昔のクリスマス──世間一般的に言う所の聖夜、あの夜の中でも今日と同じようにソプラノボイスで奏でられる聖歌が響いていた事を天草四郎は記憶していた
「シロウ、どうかした?」
「いえ、流石に歌い慣れているなと思いまして」
「そうでしょ?ふふー!これでも聖歌隊の一員だったからね、私!」
「それも納得の歌声でしたよ」
歌を捧げる横顔は大人びていて、ルシティカを知る人でいればいる程に声をかける事へ躊躇いを覚える凛然さ。彼女は弓に矢をかける時も同じ表情を浮かべる
自分の愛するヒトの存在に気付き、くるり、と白い髪の尾で線を引いて振り向いたルシティカの笑顔に天草は安堵する。長い旅の中、確かな変化はあれどもその笑顔だけで彼女は彼女なのだと実感するのだ
「それに私は歌うことでしか、自分の想いを外側に出せなかったから」
「……そうですか」
「あ、今は平気だよ!シロウ達が話を聞いてくれたりするもの!」
「では聖歌を歌うのは、長年の癖というもので?」
「うーん……ううん、暫く居場所を教える為に歌ってたから、癖というよりもルーティン
『私はここにいるよ』『待ってるんだよ』って聞いてほしかった」
「それは──」
じっとこちらの返事に期待するように見上げてくる視線に、天草は一瞬口籠る
受け取ってしまってもいいのだろうか、という迷いと受け入れてほしい、という願い。水面下の攻防に対し、先に認めてしまったのは青年の方だった
「──それは、自惚れてもいいものでしょうか」
「……いいですよー、だって本当の事だもん」
「ではもっとマスターの歌声を聞かせてくれませんか?」
手で隠した口元はにやけるのを必死に堪えようと可笑しな様相と成れ果てているだろう
それも全てひっくるめて、ルシティカは仕方ないなあと笑うのだ。そして珍しい天草からのお願いに歌で応えてみせる
かつて彼女が縋り続けた主ではなく、信じ続けた天草へ捧げられる歌はさながら揺り籠のようで
嵐の海の向こう側──英霊の座にまで響かせた想いを、今はルシティカの隣で受け止める天草四郎がそこにはいた。
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