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ある者は泳ぎ疲れた体を休める為にホテルへ、またある者はホテルの食事に飽きたからとメインストリートへ繰り出す夕刻の時間帯
ビーチの外れにある小さな入江の上に立つ天草の視線の先では海を満喫するルシティカが手を振っている、瞬く間にその存在を小さくする彼女の事だ、地平線の果てまで行くのも時間の問題だろう
「マスター!そろそろ!」
沖まで行く事はないとは思われるが、おっちょこちょいな所がある自身のマスターに万が一の事があってはと天草は声を張った
はーい、と返事を天草と同じ声量で返事をするとルシティカは海の中へと姿を隠す。そうして戻って来たルシティカは濡れた髪を手で絞りながら、自分を待つ天草へと笑顔を咲かせた
「はー…気持ち良かったぁ!久しぶりに目いっぱい泳いだよ!」
「思わずこちらが見惚れる程に綺麗なフォームでしたね、少し意外でしたよ」
「私が泳げること?故郷が水の都だからねー、他の子達にも良く泳ぎ方を教えて!って言われたなぁ」
「マスター、水分補給も大切ですが、まずは髪や体をタオルで…」
持参していた大きめのタオルを彼女の頭からかぶせ、上下に動かす天草の手に合わせて、ルシティカの口からきゃーとそれはもう楽しそうな悲鳴が聞こえる
背中と右足に傷を抱えるルシティカ、彼女自身はその傷に何の感傷も抱いていないのだが、今回共にこの特異点へ訪れたマシュや藤丸はそうもいかない様で
泳ぐ事を諦めていたルシティカに昼間ではなく夕方ならどうかと提案したのは天草だ、彼女に提案した者として、そして変な虫がつかぬ様にとルシティカが海へ行く時は必ず天草も一緒に着いていった
リツカやマシュがあんな顔をする必要ないのにね、そう苦笑したルシティカだが、天草からすると彼らと己のマスターは似た者同士だ
親しい誰か―この場合はマシュ達に気を使わせない為に長袖のパーカーを着て、人のいない時間を見計らって海に繰り出している
それは何て尊いことで、どんなに生き辛い事なのだろうか。二人を気遣うルシティカの苦笑はとても不器用で、それと同じくらいに庇護欲を駆り立てられた事は記憶に新しい
ああ、でもあの苦笑よりもこうしてタオルの下で年相応にはしゃぐ笑顔の方が彼女らしい。見る相手も釣られてしまう笑顔だ
「──海が綺麗ですね」
気が付けば、ルシティカの髪を拭いていた手を止めて、その笑顔を見守っていた視線すらも海に投げて呟いていた
古風な言い回しだ、この言葉は。流石にそこに秘められた言葉の意味をルシティカが理解できるとは思わず、天草は何の気兼ねなく彼女へと視線を落とし──絶句する
丸々と見開いていた瞳は天草と視線が交わる寸前に地面に落ち、頭からかぶるタオルは更に深く籠る。一瞬だけ見た、この夕焼けに感化された色の表情が全てを物語っていた
「……知っていたんですね、意味」
「う、ん…マシュが読んでた本に載ってた…」
なるほど、マシュ・キリエライトは勤勉で良く本も読んでいるとルシティカから聞いた事があった。マシュは色んな本を知ってて凄いんだよとも聞いていた
あまりにもこれは気恥ずかしい、何とも微妙な空気の中で眉を寄せながらも笑みを絶やす事がない天草の手首に触れた小さな熱
「シロウの言葉にどう返すのが正解なのか、教えて?」
その言葉は天草四郎の羞恥心を更に拍車させ、同時に体に籠る感情という名の熱が表面に出るきっかけとなる
この特異点を出現させたムーンキャンサーよりも小悪魔過ぎるルシティカはこれ以上、自分をどうしたいのか。手始めに頭からかぶる、ヴェールの様なタオルをはぎ取ってしまおうか。話はそこからだ
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