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──ここに呼び寄せられて何日が経過したのだろう、何日太陽の光を浴びていないだろう
とても暗くて、冷たくて、真っ暗だ。カルデアは人理崩壊した時であっても明るくて、人々は温かくて、優しかったのに。これじゃあ真逆だ
「痛…っ逃げようとしたのは事実だけど、酷いなぁ…もう…」
動かない様にしていた右足を微かに動かしたみたいで、発生した痛みに顔を歪めた
天井を見上げていた視線をそちらへ移せば、そこには変わらずに私の足を貫いて、床とを縫い付ける剣─ううん、黒鍵の一本があった
手が拘束されている訳じゃないので黒鍵を抜く事は出来るけど、抜いた際の出血量を考えるとやらない方がいいと判断してこのまま
栓になってはいるけど、少しずつ血は溢れているのでこのままだと危ないのは変わらないんだろう。私はどうやら緩やかな死へ歩んでいるらしい
「──厭離穢土に至るまで、もう暫く
気分はどうだ?カルデアのもう一人のマスターよ」
彼と同じ声色の癖にそこには穏やかさなんて微塵も感じさせない鋭利な冷たさがあった
彼と同じ姿形の癖に最早、英霊でも人間という存在の枠からも離れたと赤い瞳が蛇の様にぎょろり、と私を射抜く
妖術師、いいえ、『天草四郎時貞』─この人こそ、私をこの特異点へ引き寄せた人物
カルデアでシロウと話していた中、私は暗闇へ意識を引きずり込まれる様にここへ呼び寄せられた。でもどうやら私以外にもこの特異点へ呼び寄せられた人がいるらしい
一人はリツカ、そしてもう一人は新免武蔵。確かリツカが以前に今と同じ状態に立った時に出会った人で、日本ではそれなりに有名なサムライだという
『天草四郎』は自分の問いかけに私が答えない事を不服とする様に眉を顰めた
「厭離穢土へと至れば、貴様の時代も厭離穢土へ呑まれる事になる
貴様の贄で完成する大願は世界を呪う術となるのだ」
……まあ、そういう事である
私は厭離穢土という大きな術式―呪詛の起動へ必要な生贄になる為にここへ呼び寄せられた
「不可能だよ」
「…ほう?何を以て、そう告げる?」
「この世界にリツカがいるなら、貴方の大願とやらは必ず妨げられる。今は遠くても彼はここへ、貴方を止めにやって来るよ
貴方もそれなりの地獄、修羅場をくぐって来たみただけどそれ以上のものの犠牲、助けを得てきたリツカの前に貴方は負ける」
「──知れた口を!」
肉からナイフが引き抜かれる様に、私の足から黒鍵が引き抜かれた
途端に溢れ出す血液は鮮やかで、頭がクラクラする
「貴様に何が、何が分かる!我が潜って来た地獄があの者よりも少ない?知れた口を利いたな、小娘!!」
「──分かる訳ないじゃん」
「なに…?」
「貴方もシロウも、何も教えてくれない。その目でどんな地獄を見て絶望して、嘆きを叫んで、その結論に至ったのか
私の世界はね、シロウやリツカ、マシュ達、それから教会で育った兄弟達だけ。百にも満たないのに貴方が失った同胞は三万と七千。きっと私の世界を喪っても、貴方達の絶望には届かない」
例えば目の前で教会の兄弟やシスター、リツカ達が殺されたとしよう
私はリツカ達を殺した人を怨むだろうし、地の果てまで追いかけても彼らの未練を晴らしたいと思う。でも呪いと成した『天草四郎』に想いの強さでは負ける
英霊であるシロウと目の前の『天草四郎』は最早袂を別ったと言っていたけど、元はやっぱり同じ人なんだ。きっと一蹴されるだろうけど
「ああ、残念だなぁって……
もし貴方と語り合う時間が十分にあったなら──私、ちゃんとそうするしかないと結論へ至った理由が聞きたかった」
理由を聞いたとしてもきっと理解は出来なかった、彼が言う様に沢山の民草を殺して叶う願いなんて外道以外に他ならないから
でもその願いを抱いただけなら、理解出来たかもしれないと思ったんだ。親しい隣人から愛する家族まで葬り去られた『天草四郎』の願いだけなら、きっと
「私はここで死ねないし死なない、約束したんだ」
鮮血を目の当たりにしてクラクラし続ける頭の奥から強引に記憶を引っ張り出す
私へ笑いかけてくれた聖女でありながら友達でいてくれた人、私やリツカをいつも案じて、信じて未来へ送り出してくれた人──その人達の為に私は、
「こんな所で死んでられないの」
「この期に及んで命乞いはなく、我への哀れみを口にするか」
「命乞いなんてした所で貴方は世界を全て呪い殺すでしょう」
「クク…可笑しな娘だ、我が大願は果たされぬと言いながら果たされる過程を語るとは」
「しょうがないよ、貴方は私が好きな人そのものだもの」
▽▲▽
──地平線の果てまで赤く染まった世界に私は一人で立っていた
木々や花は踏み荒らされ、死に絶えた家や人々に火を放たれ、酷い匂いがする
呼吸をする度に炎を飲み込む様で喉と肺を焼くので容易に息が出来ない、この先に待つのは窒息死か焼死だろう
「……」
これは彼が私に遺した呪いなのだろう
「…………」
これが、シロウの見た──
「ルシティカ」
目蓋に煉獄の火よりも生暖かい人肌の温もりが灯る、これも私が見ている悪夢なのだと気付くまで数秒もかからなくて、そっと薄目を開く
カルデアに戻って来て休む様に言われた私はマイルームで横になって、それから──それから───?
「そんな所から戻って来てください
いい加減、待ちくたびれました」
うっすらと開かれた瞳を撫でる様にして閉ざすと穏やかな寝息が聞こえてきた、今度こそ悪夢に捕まることなく意識を落とした様だ
何を語り合ったのかは知らない。それこそ、俺がルシティカに自分の事を語りたがらない様に彼女は何も語らなかったが、あの地獄を見せる気になったくらいには気に入られたらしい
「二人だけの秘密というやつですか…中々に妬くものですね」
この身は彼女の召喚に応えながら、その歪みに救いを与える事が出来なかった身だ。ルシティカに本当に相応しい者がいるなら、潔く身を引こう
だが貴様にだけは、俺と同じ『天草四郎』にだけは、彼女を渡すものか
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