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「マスター、少しいいで…」
「シロウ?あ、わー!ちょ、ちょっと待って!」
―扉の先には、シャワーでも浴びていたのか、上半身裸で辛うじて黒のキャミソールのワンピース姿の無防備な自身のマスター ルシティカがいた
「あはは…待ってって言ったのに~」
「…申し訳ありません」
「…それってどっちに対しての謝罪?」
華奢な白い背中に不釣り合いな赤く咲いた傷跡
それは――まるで何かの呪いの様だった
何か月か前にレイシフトした第六特異点 キャメロット。獅子王の統治する大地で出会った山の翁が治める村が戦火に呑まれた際、戦う天草の目の前でルシティカは傷を負った
強い生命力と根っからの諦めの悪さが生存へ結びついたルシティカは一命を取り留めた、代わりにその背中に一生消える事のない傷跡を抱えて。
「私はこの傷を背負った事に対して、後悔してないよ。シロウ
確かに凄く痛かったけど、おかげで「神様」は存在しない。「人間」の願いを叶えるのは「人間」なんだって気付けたんだから。…遅すぎたかな?」
いいえ、と天草は即座にルシティカの問いかけに首を横に振った。ルシティカが得たものはきっと一生ものの傷を背負う事よりもかけがえのないものだったに違いない
「神」の愛に依存し、信仰し、そうする事でしか生きていけないと自分を縛り付けていた少女。けれど、その「神」も少女があの間際に願った「生きたい」という執着を掬い上げる事はなかった
生きる事を強く望んだ彼女の願いを叶えたのは、人の形をした英霊である天草四郎。「人間の願いは、人間が叶えられるものでしかない」ルシティカはその結論に至ったのだ
「でも、傷物になったのは確かだから…貰い手がなさそうだよね
可笑しいの、そこをドクターが凄く気にしてね?…シロウ?」
恐らくカルデアに帰還し、すぐにDr.ロマンの治療を受けたルシティカに彼は至極言いづらそうな表情でこの傷は一生、癒える事はないと下した筈だ
その時に抱いた感情が「貰い手」がなさそうだと笑い飛ばす言葉に天草は見えた気がした。今のルシティカなら、「神」しか見ていなかった頃とは違う
どんなに醜い傷跡を背中に負っていても貰い手はいる筈だ、それを考えながら、天草は終に口にしなかった
「覚えていますか。マスターと私が最初に出会った時に私が貴女に言った言葉」
―貴女の歪みを「救済」する為、参上しました
「結局、私は貴女をあの場で「救済」する事は出来なかった。その逆に貴女に一生ものの傷を背負わせる結果になった」
「えっと、私、言ったけど…」
「ええ。その傷のおかげでマスターは確かに自身の歪みを正す事が出来た、それでは私の役目はお払い箱です
だから、我がマスター ルシティカ。俺に新しい役目をください」
「…シロウは人類救済の夢を果たしたいんでしょ?じゃあ、新しい役目なんて邪魔になるだけじゃ…」
「確かに召喚当初はそのつもりでした。白状しますといつか、マスターから聖杯か令呪も奪うつもりでしたよ」
「うわあ、ついに言いやがったなこのやろう」
気付いてても気付かないふりしてたのに!と非難しようとする事を隠そうともせずにルシティカは喚く
それでも、そんな自分の企みに気付いていながらもこのマスターである少女は自分を座に返そうともしなかった、逆に自分に信頼を置いてくれた
その信頼は何とも重圧でありながら、同時に幸福の重みである様な気がして――いつの間にか、聖杯も令呪の奪取の企みも消え、純粋に思った事がある。それを今日はルシティカに口にしようと覚悟を決めた
「ですが、マスターと過ごす日々がいつの間にか何物にも代えがたいものに変わっていったんです
貴女を好いてしまった、貴女から離れがたくなってしまった…だからどうか、令呪ではなく貴女の言葉で俺を貴女の傍に縛り付けてほしい」
天草四郎は人類救済の夢を諦めたつもりではない
その夢は自分がルシティカの命を看取るまで、大事に大切に胸の内に保管しておけばいい
どうせ、ルシティカが生きている間は人類救済の夢を果たそうとする自分の企みは悉く彼女の手で妨害されるのが目に見えているのだから
「シロウだけ、ずるい」
「マスター?」
「私だって自分がどれだけ酷く歪んだ人間か分かってたよ、でも私は「神様」の愛を貰う事でしか存在できないって思うしかなかったの
そんな私を「救済」してくれる為にシロウが召喚に応えてくれた時から…シロウに私は恋、してたんだよ」
それは何て呪いの言葉だろうか
天草が願うまでもない。自分はいつの間にかルシティカに一方的に”恋”され、彼女の傍に縛り付けられていたのだ
「これでお揃いですね、マスター」
―天草はルシティカの想いに縛られ、ルシティカは天草の想いに縛られる
彼が言う様にこれでお揃い、これで自分とルシティカは対等の関係となった。短く言えば、恋仲の成立である。
二回目の恋をあげる
(一度目は親愛なる神へ)
(破れた愛を貴方は)
(拾い上げてくれた)
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