真紅の微睡み
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小さく、この戦火の中では聞き逃してしまいそうな程、小さなくぐもった声に戦闘中であった天草四郎は振り返った
村を戦場に作り替えた騎士の一人が、その足元に踞った存在に剣を振りかぶろうとしていた
共に戦っていた村の民だろうか、と切り捨てた騎士の血がべったりとついた刀を拭い払う天草だったが、騎士の前に屈した存在が自分にとって何たるかを確認し――地を蹴った
「…!」
常時、冷静であろうとする彼が今日は焦燥していた
自分の靡く長く束ねた髪も、自分の目の前に立ちはだかろうとする傀儡も酷く鬱陶しい
―間に合え
―間に合ってくれ
―間に合わなければ、自分は何のために、
「マスター」
抱き上げた拍子に天草の戦闘装束がまだ真新しく流れた血によって濡れる。そんな事よりも今、注意しなければならないことはこの腕の中で今にも息を止めてしまいそうなルシティカにあった
ルシティカの指示を受けたジャンヌが率いた女子供達からはぐれ、村に戻ってきてしまった子供を庇い、背中に深い一太刀を受けた彼女は浅い呼吸を繰り返し、天草の言葉に目蓋を震わせた
「シ、ロ…」
「喋ってはいけません」
「シロ、ウ…」
「大丈夫、傷は浅いですよ」
気がつけば、そんな浅はかな嘘を天草はルシティカについていた
そうしなければ、生への望みも執着も『傷が深ければ仕方ない』と彼女が諦めてしまいそうだったから
「シロ、ウ…」
「貴女が守った子供は大丈夫です、無事です」
ルシティカという少女は自身にもその優しさを分ければいいのにと思う程に他人には優しい彼女、意識が朦朧とする中でも自分が盾になっても守ろうとした存在を気にかけているのだろうと思った
不意にルシティカの肩を抱く天草の手に触れる何か。それは位置的にも、瀕死のルシティカが振り絞った力で動かした腕に相違なかった
「シロ、ウ…わたし…しにたく、ない、なぁ」
――瞬間、天草の呼吸が止まった
なんてこと、なんてことだ
彼女は『深い傷を負ったのだから、死んでも仕方ない』と生への望みを諦めるなんてこと、元からしようとしなかった
彼女は、ルシティカは、自分のマスターはこんなにも――生きたがっている
『死にたくない』
それだけを呟いて、ルシティカは微かに開いていた瞳を再び震わせ、目蓋を閉ざしてしまった
天草の腕に自分の腕を重ね、幾度となく夢の中での出来事の様に繰り返し、発声したせいで力を出しきってしまったのだろう
「死なせない」
浅はかであった自分の今までの言葉を否定する様に呟く
「死なせて、たまるか…!」
未だに自分達を根絶やしにしようと殺意を向ける騎士の群れへ天草は飛び込んだ
――その腕に生への執着を初めて口にし、その執着を夢のままで終わらせないと誓ったルシティカを抱いて。
深紅の微睡み
(それは温かな抱擁)
(それは初めての死との対面)
村を戦場に作り替えた騎士の一人が、その足元に踞った存在に剣を振りかぶろうとしていた
共に戦っていた村の民だろうか、と切り捨てた騎士の血がべったりとついた刀を拭い払う天草だったが、騎士の前に屈した存在が自分にとって何たるかを確認し――地を蹴った
「…!」
常時、冷静であろうとする彼が今日は焦燥していた
自分の靡く長く束ねた髪も、自分の目の前に立ちはだかろうとする傀儡も酷く鬱陶しい
―間に合え
―間に合ってくれ
―間に合わなければ、自分は何のために、
「マスター」
抱き上げた拍子に天草の戦闘装束がまだ真新しく流れた血によって濡れる。そんな事よりも今、注意しなければならないことはこの腕の中で今にも息を止めてしまいそうなルシティカにあった
ルシティカの指示を受けたジャンヌが率いた女子供達からはぐれ、村に戻ってきてしまった子供を庇い、背中に深い一太刀を受けた彼女は浅い呼吸を繰り返し、天草の言葉に目蓋を震わせた
「シ、ロ…」
「喋ってはいけません」
「シロ、ウ…」
「大丈夫、傷は浅いですよ」
気がつけば、そんな浅はかな嘘を天草はルシティカについていた
そうしなければ、生への望みも執着も『傷が深ければ仕方ない』と彼女が諦めてしまいそうだったから
「シロ、ウ…」
「貴女が守った子供は大丈夫です、無事です」
ルシティカという少女は自身にもその優しさを分ければいいのにと思う程に他人には優しい彼女、意識が朦朧とする中でも自分が盾になっても守ろうとした存在を気にかけているのだろうと思った
不意にルシティカの肩を抱く天草の手に触れる何か。それは位置的にも、瀕死のルシティカが振り絞った力で動かした腕に相違なかった
「シロ、ウ…わたし…しにたく、ない、なぁ」
――瞬間、天草の呼吸が止まった
なんてこと、なんてことだ
彼女は『深い傷を負ったのだから、死んでも仕方ない』と生への望みを諦めるなんてこと、元からしようとしなかった
彼女は、ルシティカは、自分のマスターはこんなにも――生きたがっている
『死にたくない』
それだけを呟いて、ルシティカは微かに開いていた瞳を再び震わせ、目蓋を閉ざしてしまった
天草の腕に自分の腕を重ね、幾度となく夢の中での出来事の様に繰り返し、発声したせいで力を出しきってしまったのだろう
「死なせない」
浅はかであった自分の今までの言葉を否定する様に呟く
「死なせて、たまるか…!」
未だに自分達を根絶やしにしようと殺意を向ける騎士の群れへ天草は飛び込んだ
――その腕に生への執着を初めて口にし、その執着を夢のままで終わらせないと誓ったルシティカを抱いて。
深紅の微睡み
(それは温かな抱擁)
(それは初めての死との対面)
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