SS-fgo
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「シロウ!シロウシロウシロウ!あれ!あれやって!洗礼詠唱!ぎゃーーー!!」
うら若き少女の声とは思えない程に野太く、濁音交じりの悲鳴が空間の隅々へと響き渡っている
アークティックパーク、北極に出現したうたかたの遊園地のエリア・ほーんてっど鬼屋。そのエリアを一言で説明するなら『お化け屋敷』
つい先日まであまりにもガチすぎるホラー演出に客足が遠ざかっていた程の評価が上向きになったと聞きつけ、こうしてルシティカは天草を伴って足を踏み入れたのだが──
「シ、シロウ早くー!」
「洗礼詠唱は館内では禁止と言われていたので……」
「そうだったッ!」
ぎゃーーー………
最初から最後まで悲鳴を上げずにはいられないまま、ただのひと時も心休まらず、肝を冷やし続けるばかりであった少女が漸くゴールへたどり着いた
お化け屋敷という雰囲気を損なわない程度の仄かな明かりは今のルシティカには何にも勝る癒しだ
緊張の糸が解け、今にも地面に座り込みそうになった彼女をベンチにまで誘導する天草には飲み物を用意できる程に余裕が残っているよう
「恐怖の度合いが落ち着いたという噂は本当だったようですね」
「どこが?ねえ、どこが?どこがどう落ち着いていたの?十分怖かったよ?!」
「私にとって飢餓ほどに恐ろしいものはないので、マスターと差がついたのかもしれませんね」
「唐突に笑えないブラックジョークやめよう?」
「はは」
そうルシティカに言ってみたはいいものの、どちらかと言えば、恐怖に目をやる程の余裕が天草にはなかった
アトラクション内の仕掛けで飛び上がり、隣にいる自分にルシティカが抱き着いてくる度、密着する温度や柔らかさへ理性と本能がせめぎ合っていた
しかも夏の特異点に滞在する為、ルシティカは水着姿だ、恐怖以上に彼女は無意識に天草を煽ってくれたものである
だが自らの内で発生した理性と本能の戦闘も、お化け屋敷を出た事でこうして再戦が始まる様子もない
何とか耐えきった理性側の自分を表彰台に迎え入れ、落ち着きを取り戻したマスターとエリアを出ようとする天草。いつもならすぐに彼に続く筈のルシティカがどうしたことか、椅子に座ったまま動かないでいる
「…マスター?」
「…………」
「マスター、どうしました?
もしや、あの暗がりで足を挫いたりなどしていましたか?」
「………………こ、腰が抜けた…」
「……は?」
──こうして早くもチャンピオンベルトを巡り、理性と本能における再戦がすぐさま火蓋を切った
「うぅぅ……」
「どうされました?マスター」
「遊園地を、しかも水着で、シロウに抱っこされて移動されるのに私だって恥ずかしくなるんですー!」
「あのままお化け屋敷のエリアにいても、他の客や運営に差支えが出るでしょう」
「分かってるもん……」
「それに水着だって良くお似合いです、恥ずかしがる必要なんてありませんよ」
「……シロウのてんねんたらしめぇ」
正論で気付きを与える事がムチであれば、水着姿を褒められるのはルシティカにとって飴だ
好きな人に褒められて嬉しくなるのは当然、けれど素直に喜べない現状に頬を膨らませながら、自分を背負って歩く天草の背中に顔を埋めてみる
合わせて、ぎゅうぎゅうとルシティカが密着率を上げるもので天草が心配になるものの、腰が抜けて歩けないというステータス状態のルシティカを前に本能も理性もないと平常運転を保っているようだった
「ねえシロウ、ジャンヌ達もまだ本が出来るまで時間があるって言ってたから、フラワーパークに行ってみようよ」
「このままですか?」
「怖いのを体験した後に綺麗なものを見て、屋台でおいしいご飯も食べたら歩けるようになると思うの!」
「……仕方ないですね、他ならぬあなたのお願いなら聞きましょうか」
己がマスターであるルシティカの笑顔を損なわない、その一点が天草を彼たらしめる
澄み渡る晴天の笑顔でおねだりされれば、滅多な事では否定も出来ない程にこの少女は天草四郎の弱点なのだ。だがワルキューレカチューシャをつける事に関しては、例外として自問自答の時間が発生した。
12/18ページ