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ペルソナ能力者としての覚醒による『心の怪盗団』の結成、そして体育教師 鴨志田の改心──
東京に辿り着いた4月から今や5月の頭、何とも慌ただしい春のはしりだったと暁は追想する
校内にも仲間や理解者が増え、他の生徒達よりも遅く、漸く穏やかな学校生活を手に入れた今、彼は自分の中で気がかりであった問題に着手する事にした
そう、あれは東京に来た初日のこと。人混みに埋もれ、右も左も判別が出来ないスクランブルの中での出会い。探し人である少女との再会をこれまた1か月が経過する中、暁はどうしても諦めきれずにいた
「んー…学校の名前が聞こえなかった、ってのがでかいよなぁ
他に何か特徴的な事でも覚えてれば、ワガハイにも探しようがあったってのによー」
「え?あれだけ特徴を伝えたのにまだ足りないのか?」
「お前の言ってるのは惚れた弱味であって特徴って言わねーよッ!」
「モルガナ、声が大きい」
「お前がそうさせてるんだろ?!」
幾ら放課後とは言っても部活動に励んだり、自習で校舎に残る生徒はまだ自分達以外にも存在するのだ。ましてや教師に見つかった日には、とモルガナを早く宥めなければと自分でつけた火の消火活動に暁は必死になる
ただでさえ暁は悪い意味での有名人だ。鴨志田の自白によって最初よりは幾分かはマシになったとは言ったものの、白い目が校内に張り巡らされている事に変わりはない
無実の暴行罪による保護観察処分、『心の怪盗団』のリーダー、そして校内への猫の持ち込み──これ以上は暁であっても隠し通すのが難しいレベルを迎えてしまう
「……猫?」
徐に背後からかけられた声は、思ってもみない方向から暁とモルガナの心臓を同時に鷲掴みにしてきた
パレスへの潜入、シャドウとの戦闘にも似た緊迫感。どう言い訳をしたものかと高速回転する思考回路とは別に勝手に動く体、錆び付いた金属音が聞こえてきそうな動作で暁は意を決して振り返る
────瞬間、ぱっと開ける視界。電灯よりもなお明るくなった世界と雑踏というノイズを失ったクリアな世界の到来、少女の姿というデジャブに暁は言葉を失ってしまった
「─────」
「ねえ、今 鞄の中で凄い声がしたけど大丈夫?怪我とか、」
「………た」
「え?」
「やっと、見つけた…!」
自分の気持ちだけが先行し、相手の事も考えないで目の前の細い肩を掴んでいる暁にいつもの冷静さは見受けられない。彼はそれほどまでに我を失っていた
5月の頭──暇な時間さえあれば、渋谷駅で捜索活動に勤しみ、見つからない度に屋根裏部屋で苦汁を飲み続けて来た暁の苦労が、この秀尽学園1階の廊下にてついに報われた日でもあった
「まさかそんなに探してくれてたなんて思わなかったよー!
そうだよね。あの時は休日で人がいっぱいだったし、声なんてかき消されちゃったか…えっと、ごめんね?」
「いや、仁奈が謝る事じゃない、君を探していたのも俺が勝手にしていたことだから
でもあれだけ探してたのに同じ秀尽の生徒とは思わなかったな、一体何組なんだ?」
「2年A組…なんだけど、ちょっと今はわけあって保健室登校中なんだ」
渋谷駅前のビッグバンバーガーにて、暁はついぞ諦められずにいた仁奈とテーブル越しに向かい合っていた。4月に彼女と別れ際に交わした約束を叶える為、奢る腹積もりなのである
今の内に彼女のデータを収集しようと質問をいくつも投げかけても、嫌な顔の1つも浮かべないでいた仁奈だったが、学校の話題になると今までの明るさに落ちた影を暁は見過ごさなかった
きっと保健室登校である事にも何か深い事情──それこそ、他人には話しにくい理由があるのだろう。まるで悪い事に加担でもしているかのように体を縮ませる仁奈に察する事が出来た
「──仁奈が良ければならなんだけどさ、保健室にいる時に会いに行ってもいいか?」
「え?」
「さっき一緒にいた猫…モルガナって言うんだけど、時々は外に出してやりたくて
いつもは俺の鞄か机の中にいて、窮屈そうにしてるからさ。お詫びって訳じゃないけど」
「さては来栖くん、私を共犯者にしようとしてるなー?悪いやつだなー」
「それも魂胆の一つだけど、俺が一番狙ってるのはいつか仁奈の力になる事って言ったら?」
「……優しいなって思う」
今、話したくないのなら話してくれる時を気長に待つしかないのだ
その時こそ本当の意味で彼女の心を暴いた日として喜べばいいし、もし仁奈が必要とするのなら、『心の怪盗団』として動く事に暁の中には躊躇いさえない
こうして仁奈と再会出来ただけでもと思っていたものの、欲望というものはどうにも汲めども沸く泉のようにこれだけでは満足してくれないらしい。懐から取り出したスマホの画面を操作し、チャットアプリを起動する
「登校してる時に知らせてほしいし、チャットのID交換をさせて貰ってもいいか?」
「ちょっと待ってね……うん、登録出来たよ。登校の報告以外の連絡とかしてもいい?」
「俺もする気だったからぜひ
あと今日はビッグバンだったけど、今度は俺の知ってる店に行かないか?そこの珈琲、凄く美味しいんだ」
「来栖くんがそこまで言う珈琲、気になっちゃうしお願いしようかな」
それから同じ時間を共に過ごしながら、寄る所があるからという仁奈とセンター街で別れた暁は彼女と話すという事で気を利かせてくれた相棒を迎えに渋谷駅へ足を運ぶのであった
「あの子との話、無事に終わったんだな」
「…………」
「無視すんなよな!おーい、暁ってば!」
「っ……聞いてくれ、モルガナ。スマートに連絡先の交換と次に会う約束をする事が、出来た…!」
「お、おう…それは…良かったな?」
駆け引きという名の綱渡りを上手く渡っているように見えて、実は心臓が飛び出しそうな緊張感を耐えた先で暁は漸く仁奈との再会に思いの丈をぶちまけた
ドン引きするモルガナの姿は最早、彼の瞳には映っていないことだろう
その夜、チャットアプリに新しく登録された可愛らしい画像のアイコンに『仁奈』という名前を何度も見返しては、夢でない事を自分へ言い聞かせる暁の姿があったとか何とか。
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