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「ところで花村センパイ、まーたナンパに失敗したんですって?」
「お、お前、その情報をどこから……!」
「それを聞いて私、ぴんと思ったんですよね
悉くナンパとか失敗するのは、センパイの彼女さんが欲しいって想いが強すぎるからじゃないかって」
「なるほど、逆に俺が女の子達を遠ざけてるパターンね。それは全く新しい発想だわ
…って彼女が欲しいなんて、男子高校生なら誰でも思う事だろ?!何で俺だけダメなんだよ?!」
「ダメとは一言も言ってないんだよなぁ」
外で降る雨粒が二年教室の窓ガラスを叩き、伝い落ちていくのを灰音は横目に眺め、花村の騒ぎ立てる声をも聞き流しながらおかずを口へと運ぶ
更に話を聞いてみた所、ナンパに失敗しただけでなく新車である原付も壊されたという不幸話で幕を閉じられたもので、流石の灰音にも同情心が沸き、そっと弁当のおかず一品を彼に差し出さずにはいられなかった
……ありがとな、と遠くを見る瞳が何とも切ない気持ちにさせる
「というか!神楽坂だって彼氏の一人や二人は欲しいだろ?!」
「……私は恋愛は暫くは、いいかなーって」
「マジかよ。その歳で恋愛は暫くいいとか、悟りを開くのが早すぎだろ……」
「センパイと一つしか変わらないのですがそれは」
その時は確かそもそも彼氏の一人や二人とか一夫多妻の逆バージョンを後輩に促すな、と冷たい視線を花村に注ぎ、話を終わらせたと灰音は記憶している
恋愛なんて懲り懲りだと本気で思っていた。駆け引きなんて面倒くさい、そもそも昔の失恋を引きずってる時点で前を向くのに時間がかかるだろうし──そう思っていた自分がまさか花村と付き合う事になるなんて、誰よりも灰音自身が予想もしていなかったことだった
「──お前のシャドウと戦った後だとあの時の話、洒落になってねぇなって今更思った訳よ」
「どうして、今になって思い出しちゃうんですか……忘れてろよぉ…………」
「知らなかった事とはいえ、悟りを開いたーとか無神経な事を言っちまっただろ
神楽坂にも俺にとって小西先輩みたいに忘れられない人がいたってだけなのに、ごめん」
……今まで口に出した事はなかったが、灰音はこのセンパイが何故モテないのかと常々疑問であった
確かに調子が過ぎると口が滑って地雷を踏む発言をする事はある。けれど後からあれは言い過ぎたと謝れる人なのだ、この人は
人の心の痛みに鋭くて、気を回し過ぎて逆に鬱陶しがられて────それを誰も知らない、気付いていない。そこに居心地の良さを感じて、気が付けば花村を好きになっていた自分だけが知る特権
「……凄く傷付いたのに、今更謝られたって許しません」
「うぐ……!マジでごめん……本当に悪かった!」
だから灰音としてはもし花村のそういった部分に気付いた人達が現れて、取られでもしたらと気が気ではないのである
居候しているクマも菜々子と遊びにいくと出ていって戻らない花村宅で二人きりなのをいい事に、灰音は隣に座る恋人の肩に頭を預ける行動に出た
何度もどもりながら、自分の名前を呼ぶ声に年上なのにかわいいとつい口元も綻ぶ
「えーっと、神楽坂さん…………?い、いかがされました?」
「恋愛は懲り懲りだって思っていた私を、好きにさせたって花村センパイが思ってる以上に重い事ですよ
……今後よそ見なんてしたら、それこそ一生許してあげませんから」
「おま……言ってる意味、ちゃんと分かってんのか?
いや、そもそも俺でいいのかって話なんだけど……」
「これ以上、私に言わせる気ですか?別料金取りますよ」
「俺が思ってる以上に責任重大ってワケね……
ま、これも神楽坂を惚れさせた責任って事で悪い気はしないかな!」
花が咲き始める春の明るさで告げられた言葉に繰り出した頭突きすらも受け入れられてしまう中、惚れた弱味とやらが実在すると灰音は痛感するのであった。
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