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それは何の気負いもなく、突如として花村へと手渡された
「今日ってセンパイ待望のバレンタイン…ですよね
なのでこちら、可愛い後輩の私からセンパイへのプレゼントです」
「神楽坂様…!」
「え、思った以上にガチめの反応」
2月某日 バレンタインデー
涙で彩られ続けてきた苦く、辛く、時には険しい連敗の記録に、新たな歴史が生まれた喜びに彼はすっかり有頂天と化す
「この日に女子からのチョコなんてありがたいにも程があるッ!」
「いや、あの、」
「そうだよな、気遣いの出来る奴なんだよな!お前は!」
「私の話、」
「誰からも貰えないと思ってたからさ、キラキラ輝いて見えるぜ!
サンキューな、神楽坂!……ん?ど、どうした?何か…言葉では言い表せないような顔してんぞ?お前……」
ここまで何かしらの言葉をかけようとしていた灰音の悉くを徹底的に遮り続け、漸く花村は傍らで置いてけぼりを食らう後輩の異変に気が付ける冷静さを取り戻した
花村曰く「何とも言えない表情」を浮かべているらしい顔を確認する手段は、生憎とこの場にはない。自分は完全にバレンタインへとかける彼の情熱を、見誤っていたのだと灰音は敗北にも似た苦い味を噛み締める他ない
「「市販かよ!手作りとかじゃねーのかよ!」みたいなツッコミ待ちだった、っていうかぁ…」
「そこはまあ……来年とかに希望をってやつ?」
「……じゃあ今年のは、いりませんか」
新たな一手として盤上に登場するは、手作り感満載のラッピングに身を包んだ贈り物
そう、最初に手渡した市販のお菓子は花村の反応を伺う為の先駆けに過ぎず、灰音が本当に贈りたかったのはこちらだったのだ
まさか先駆けの時点であんなにも彼が歓喜に沸くとは思いもせず、呆気に取られている間に"本命"を出すタイミングを失っていった──甘い響きをもたらず筈のバレンタイン当日に、灰音は涙の味を幻想してしまいそうになる
「手作りのお菓子なんて贈るの、センパイが初めてでつい出しあぐねちゃって
だから一旦、市販のお菓子で様子見してから渡そうと企んで…って市販の綺麗なお菓子を見た後だと霞みますよねー! ああ、もう、何やってるんですかね、灰音さんってば、ついうっかり──」
「神楽坂の手作り、くれんの?」
「────、」
──市販品を手渡した時とは比べ物にならないくらい、その表情がキラキラと輝いていたものだから
味も、品質も、見栄えも市販品に劣るというのに、それでも花村は「これがいい」と自分への思いがこもった灰音からの本命を手に取った。先程よりも近い距離で彼の笑顔が咲いた瞬間、七色の火花が幾重にも弾け、神楽坂の視界を眩く埋め尽くした
「へへ、好きな奴からのチョコもーらい!」
「っ──!」
頭が焼かれそうな程のこの熱の正体とは、花村へ抱く灰音の愛情が過剰暴走したものに違いない。
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