居たい、痛い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「無理言っちゃってごめんね、クマくん」
「灰音チャンのお願いなら叶えない訳にはいかないクマよ!
だけど…長居は禁物クマ、用事が終わったらささっと帰るコト!」
「大丈夫、そこは分かってるつもり」
他の特捜メンバーに声をかけることなく、灰音はクマに案内役を頼み、テレビの世界に存在するコニシ酒店を訪れた。鳴上と花村がペルソナ能力に目覚めたきっかけの地にして、小西早紀が亡くなった場所を灰音も目にしたかったのだ
この辺りを縄張りとしていたシャドウは鳴上達のおかげで鎮圧されたものの、灰音とクマだけと知って襲ってくる可能性も捨て切れない。道すがらクマから受けた忠告通り、早々に用事を片付けてしまおうと灰音は店内へと一歩足を踏み入れた
「中はセンセイやヨースケと一緒に来た時と変わってないクマね」
「…………」
「……クマ、シャドウが入ってこないか、外で見張ってる!
だから用事が終わったら、クマに声をかけてほしいクマ。すぐに灰音チャンの所に駆けつけるクマよ」
「クマくん……うん、ありがとう」
身近であった人の死を悼む灰音をその場に残し、クマはいつものように軽快な音を弾ませながら店外へ出ていってしまった。彼なりに灰音の事を気遣ってくれたのだろう
店内は淀んだ空気と暗がりが充満し、酒瓶が保冷されたケースから漏れる微かな光が足元で散乱する酒瓶の存在を誇張している。小西が体験したであろう死という一瞬を保存したかのような場所に、灰音は思わず身震いした
どんなに、恐ろしかった事だろう
訳も分からずに化け物が跋扈する異世界に投げ入れられ、助けを求める声も届かないまま、独りで命を終える恐怖は想像する事すら憚れる
生きてやりたい事を突然奪われて、未練を遺さずにはいられないだろう。小西だけでなく山野アナも、諸岡とてきっとそうだ。死のタイミングは計れないにせよ、他人が奪っていい訳ではない
特捜のメンバーとして犯人を追う。犯行を阻止する為の理由を探しに、そして犠牲者の未練を焼き付ける為にここへ来た
死という概念に対する恐怖を抱えながら追体験出来た事で、その目的も達成出来た。外で待ってくれているクマに声をかけよう──そう思った矢先だった
「な、んっで……!」
壁に叩きつけられただけでも息苦しいというのに更に首まで圧迫されては最早、呼吸もままならない
その”影”は思い人のカタチをしていた、この場所で命を落とした彼女を想い続ける彼──とは違う、歪な金の瞳が彼であって彼ではない存在と灰音に認識を与えていた
『わざわざこんな所に来てまで、”俺”の心を覗き見したかったのか?』
「っ、は…?」
『はは、でも残念だったな
お前はどう足掻いても先輩には成り代われない、俺がお前を見る事は一生ないんだよ』
「…………」
『言葉も出ないってか?可哀想にな』
花村のカタチをしたシャドウは、灰音の心を傷付ける行為がさも愉しいとばかりに高笑いを決め込んでいる
下手に反論して逆上でもされた日には首にかかる手に更なる力が加わり、簡単に骨は折れてしまうだろう。故に灰音はシャドウの言葉に甘んじるしかないのである
『なあ』
「……?」
『俺が代わりに、お前の名前を呼んでやろうか
小西先輩を呼ぶようにして、”俺”から名前を呼ばれたがってんだろう?俺なら叶えてやれるぜ?』
「────」
1/2ページ