小ネタまとめ

「ママ~、お腹痛い…」
「あら、どうしたの。遊戯」
これから家を出ようかという中、遊戯は甘えるように母へ自分の不調を訴えた。
「今日は数学の授業で当てられる日だし、その後は体育だし…。憂鬱だよぉ~」
「それは大変ね。でも風邪じゃないなら行きなさいね」
「うぅ…」
さらっと流され、"いってらっしゃい!"と送り出されたら家を出るしかない。遊戯は浮かない表情のまま、憎らしい程晴れ渡った空の下へ足を踏み出した。
「うー…、痛い…」
ぽてぽてと歩きながら独り言を漏らす。心配をかけるつもりで言った訳ではなかったのだが、その直後、自分の横に半透明の姿をした彼が現れた。
『相棒…』
自分よりも苦しげな表情をした彼に"大丈夫だ"と頬を撫でられる。その手は実際に遊戯の頬に触れてはいないのだが、自分を気遣うその優しさにどうしようもなく胸が温かくなる。
「もう一人のボク…」
ふっ、と細められた目に"大丈夫だ。オレが付いているから"と言われたような気がして、遊戯がありがとうと口を開こうとした時、もう一人の遊戯は自信ありげにこう告げた。
『大丈夫だ。オレも痛い』
「………ん?」
『オレも痛いから大丈夫だぜ、相棒!』
「…えぇぇぇぇぇ!? いやいやいや、どういう事!? 君のお腹が痛いからってボクの痛みまで治まるなんて事ないでしょ!? オレが付いてるから大丈夫だって言ってくれると思ったのに、ボクのトキメキを返してよ! 大体、君いま表に出てないじゃんか!! 実体のない君が、どうしてお腹痛くなるんだよ!」
『相棒が痛いなら、オレも痛いんだぜ』
「そんな話、聞いた事もないよ! ウインク決めてくれたけど、そんなセリフじゃ全然かっこよくないんだからね!」
一気にまくし立てると、相手のくつくつと笑う声が耳に届いた。
「もー! 何がおかしいのさ!!」
『元気になったみたいだな、相棒』
「え? …あ、ホントだ。痛くない…」


満足したように微笑む君を見ていたら、ボクもつられて笑ってしまった。
きっと君と一緒なら、いつだってどこでだって、ボクは笑っていられるんだ。


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