小ネタまとめ

新しく手に入れた自転車の後ろに相棒を乗せて、
「しっかり掴まってろよ」
と声を掛けて漕ぎ出した。

見える景色は前と同じなのに、世界を斬って入っていくような爽快感。

通いつめた高校、
思い出が詰まった様々な場所、
それらを通り過ぎて下りの坂道に入ると、オレを掴む相棒の腕にキュッと力が入った。

…どうしようもなく愛しいと思う。
オレより少しだけ小さなこの手の存在を。
それに守られるオレの世界の全てを。

愛しさが溢れて、この想いを少しでもいいからお前に伝えたくて、柄にもなく「好きだ」と叫んでみた。

坂道を下り続けるオレ達の耳には風の音しか聞こえず、自分の声すら聞き取る事が出来なかったけれど、
「何? 聞こえなかったからもう一回言って」
と返してくる相棒の声だけはしっかりと届いた。

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