Silent nightには程遠い
---
う、嘘だ…。相棒がオレと会いたくないなんて!!
相棒に嫌われるような事を、オレは知らずしてしまっていたのか!?
……………。
くっ、いくら考えても答えが見つからないぜ。
しかしお前に嫌われたとしても、オレはお前を手放す気なんてこれっぽっちもないんだ。悪いが24日は尾けさせてもらうぜ…!
様々な想いが交錯する中、刻々と時は過ぎて行く。あれから何度か《遊戯》は遊戯と話をしようと試みたがそれは叶わなかった。先日、碌な説明もせずにその場を去ってしまった遊戯が後ろめたさ故に顔を合わせられなかった為だ。
そして12月24日、午前10時。
遊戯がパタパタと家から出た所を、ほんの少し前にここへ到着した《遊戯》が確認した。
こんな事をしている所を遊戯に見られでもしたら余計に嫌われてしまうかも知れないと思ったが、やはり居ても立っても居られずに遊戯の後を追い始める。
一定の距離を保ちながら歩き、その背中をじっと見詰めた。いつもより小さいと感じてしまうのは気のせいだろうかと思う。
…消えてしまいそうだ。オレの手の中から。
そんな考えに捕われて思わず頭を振った。一層小さくなってしまった遊戯を追おうとして前を向いたが、先程より中々前に進めない。
遊戯が街の中心へと進むにつれて、カップルや家族連れなど周りの人の数が増えてきているのだ。
ドンッ
前方から歩いてきたカップルとぶつかってしまい、視線が遊戯から外れる。謝る彼らに自分も詫びを入れている間に遊戯を見失ってしまった。
「相棒ッ!」
焦燥に駆られ走り出したが、この人込みでは上手く行かない。
「《遊戯》?」
それでも進もうとしていた所で声を掛けられ、振り返るとそこには城之内の姿があった。隣には妹の静香も居る。
「何してんだよ、こんな所で」
「相棒を探しているんだ。城之内くん、どこかで相棒を見かけなかったか?」
「いや、見ちゃいねーけど遊戯ならオレの代わりにバイト先に行ってくれてるはずだぜ?」
「えぇ!?」
驚きの声を上げたのは《遊戯》ではなく静香だった。いや、同時に反応してはいたのだが静香の声に掻き消されたと言った方が正しい。
「お兄ちゃん、今日アルバイトだったの? 私、そんな事全然知らずに遊びに来ちゃった…」
しゅん、と項垂れてしまった妹に城之内が慌てて声を掛ける。
「いや、オレも言ってなかったしさ! まぁ立ち話もなんだし、その辺の喫茶店にでも入ろうぜ。《遊戯》にもちゃんと説明する」
---
「つー訳で、遊戯にバイト代わって貰ったんだよ」
「そうだったのか」
目の前に置かれたブラックコーヒーを飲みながら、《遊戯》は呟いた。ここ最近、遊戯と城之内がより親密になっていたように見えた理由が分かり、やっと安心する。
「ごめんね、お兄ちゃん。私が今日ここに遊びに来たいなんて言わなければ、遊戯さんに迷惑かける事も無かったのに」
「静香ちゃんが謝る事は無いぜ。誰だって大切な人には会いたいんだ。その気持ちを我慢する事なんて無い。相棒だってきっと、喜んで引き受けたんだろう」
《遊戯》の言葉に静香が顔を上げる。
「本当ですか?」
「あぁ」
遊戯のその時の気持ちが、《遊戯》には手に取るように分かった。城之内の力になりたいと思ったに違いない。
「ありがとう…ございます」
明るさを取り戻した静香と三人で、暫く他愛もない話をして別れた頃には、時計の針は午後2時を指していた。
今頃もきっと、相棒は一生懸命働いているんだろう。そういえば城之内くんに何のアルバイトなのか聞くのを忘れたな。
まぁいい。明日にでもきっと相棒が、今日あった嬉しい事や大変だった出来事を教えてくれるだろう。
何故、今日会うのを拒まれたのかという事すら大した問題ではないと思える程に、《遊戯》の心には余裕が戻っていた。
少し離れた場所から聞こえる"クリスマスケーキはいかがですかー"という心地の好い声を耳にして、どこかで頑張って働いている遊戯を労うべくケーキでも買って帰ろうと、《遊戯》はその声の方へと進んで行った。
う、嘘だ…。相棒がオレと会いたくないなんて!!
相棒に嫌われるような事を、オレは知らずしてしまっていたのか!?
……………。
くっ、いくら考えても答えが見つからないぜ。
しかしお前に嫌われたとしても、オレはお前を手放す気なんてこれっぽっちもないんだ。悪いが24日は尾けさせてもらうぜ…!
様々な想いが交錯する中、刻々と時は過ぎて行く。あれから何度か《遊戯》は遊戯と話をしようと試みたがそれは叶わなかった。先日、碌な説明もせずにその場を去ってしまった遊戯が後ろめたさ故に顔を合わせられなかった為だ。
そして12月24日、午前10時。
遊戯がパタパタと家から出た所を、ほんの少し前にここへ到着した《遊戯》が確認した。
こんな事をしている所を遊戯に見られでもしたら余計に嫌われてしまうかも知れないと思ったが、やはり居ても立っても居られずに遊戯の後を追い始める。
一定の距離を保ちながら歩き、その背中をじっと見詰めた。いつもより小さいと感じてしまうのは気のせいだろうかと思う。
…消えてしまいそうだ。オレの手の中から。
そんな考えに捕われて思わず頭を振った。一層小さくなってしまった遊戯を追おうとして前を向いたが、先程より中々前に進めない。
遊戯が街の中心へと進むにつれて、カップルや家族連れなど周りの人の数が増えてきているのだ。
ドンッ
前方から歩いてきたカップルとぶつかってしまい、視線が遊戯から外れる。謝る彼らに自分も詫びを入れている間に遊戯を見失ってしまった。
「相棒ッ!」
焦燥に駆られ走り出したが、この人込みでは上手く行かない。
「《遊戯》?」
それでも進もうとしていた所で声を掛けられ、振り返るとそこには城之内の姿があった。隣には妹の静香も居る。
「何してんだよ、こんな所で」
「相棒を探しているんだ。城之内くん、どこかで相棒を見かけなかったか?」
「いや、見ちゃいねーけど遊戯ならオレの代わりにバイト先に行ってくれてるはずだぜ?」
「えぇ!?」
驚きの声を上げたのは《遊戯》ではなく静香だった。いや、同時に反応してはいたのだが静香の声に掻き消されたと言った方が正しい。
「お兄ちゃん、今日アルバイトだったの? 私、そんな事全然知らずに遊びに来ちゃった…」
しゅん、と項垂れてしまった妹に城之内が慌てて声を掛ける。
「いや、オレも言ってなかったしさ! まぁ立ち話もなんだし、その辺の喫茶店にでも入ろうぜ。《遊戯》にもちゃんと説明する」
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「つー訳で、遊戯にバイト代わって貰ったんだよ」
「そうだったのか」
目の前に置かれたブラックコーヒーを飲みながら、《遊戯》は呟いた。ここ最近、遊戯と城之内がより親密になっていたように見えた理由が分かり、やっと安心する。
「ごめんね、お兄ちゃん。私が今日ここに遊びに来たいなんて言わなければ、遊戯さんに迷惑かける事も無かったのに」
「静香ちゃんが謝る事は無いぜ。誰だって大切な人には会いたいんだ。その気持ちを我慢する事なんて無い。相棒だってきっと、喜んで引き受けたんだろう」
《遊戯》の言葉に静香が顔を上げる。
「本当ですか?」
「あぁ」
遊戯のその時の気持ちが、《遊戯》には手に取るように分かった。城之内の力になりたいと思ったに違いない。
「ありがとう…ございます」
明るさを取り戻した静香と三人で、暫く他愛もない話をして別れた頃には、時計の針は午後2時を指していた。
今頃もきっと、相棒は一生懸命働いているんだろう。そういえば城之内くんに何のアルバイトなのか聞くのを忘れたな。
まぁいい。明日にでもきっと相棒が、今日あった嬉しい事や大変だった出来事を教えてくれるだろう。
何故、今日会うのを拒まれたのかという事すら大した問題ではないと思える程に、《遊戯》の心には余裕が戻っていた。
少し離れた場所から聞こえる"クリスマスケーキはいかがですかー"という心地の好い声を耳にして、どこかで頑張って働いている遊戯を労うべくケーキでも買って帰ろうと、《遊戯》はその声の方へと進んで行った。