Silent nightには程遠い

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12月に15日、放課後。
《遊戯》も冷静になったのか、昨日の己の行動を反省していた。


昨日はオレもやりすぎた。もっと相棒の話をよく聞いてみるべきだったんだ。
そもそも、相棒がオレから城之内くんに乗り換えるなんてある訳がないぜ。
…ない筈だ。
ないと信じたい…。
いや、オレが恋人の気持ちを信じなくてどうするっ! ほら、相棒だってオレの目の前に来てくれた所じゃないか!!


「もう一人のボク? 昨日は何かその…ゴメンね。もっとよく話すべきだと思って。24日の事なんだけど、ずっと会えないって訳じゃなくて君さえ良ければ…」
「ゆーぎーー!!」
その時、バタバタと走って来た城之内によって二人の会話は中断された。
「悪ィな、《遊戯》。こいつ借りるわ」
ひょい、と小脇に遊戯を抱える城之内。
「オレ急いでっから! また明日な、《遊戯》!!」
「城之内くん!? な、待ってくれ! あ、相棒ぉぉぉ!!」
その場でくずおれる《遊戯》の姿を、クラスメート達が興味深そうに眺めていた。

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「城之内くん、どこ行くの~!?」
暫く走った後で、城之内は遊戯を降ろした。
「遊戯に頼むバイト先。顔出した後で別のバイト先に行かなきゃなんねーから急いでたんだけどよ。もう歩いても間に合うな」
ふと目に入った時計の時刻を見て歩き出す。
「そっか。ボクも"よろしくお願いします"って挨拶しておかなくちゃ。…ところで城之内くん、そのバイト先って何のお店?」
「あぁ、言うの忘れてたな。ケーキ屋なんだ。24日ってイブだろ? だから店頭で箱詰めにされたクリスマスケーキを客に勧めるっつー訳よ」
「そうだったんだ」
「会計は店内でやるから、遊戯はホント愛想振り撒いてりゃいいからな。店頭だからちっと寒いかもしんねぇけど…」
「それくらい、全然平気だよ!」
内心ホッとして、遊戯は笑った。


ケーキ屋さんかぁ、良かった!
お仕事の内容も分かったし、それならもう一人のボクもお客さんとして遊びに来れる。
少し位寒いのなんて、どうって事無いよ!!

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「…え!? あの、ボク困ります!!」
ケーキ屋に着き一通りの挨拶を済ませ、優しそうな店主とも打ち解けた後で問題は発生した。
「ゆ、遊戯なら…きっと似合うぜ!!」
「無責任な事言わないでよ、城之内くん! それに、本当にそう思ってるならどうして目を逸らすの!?」
「責任を感じちまって目が合わせらんねーっつか…。そ、そうだ!さっき寒いの全然平気って言ってたじゃねーか。男に二言は無ぇだろ?」
「そうだよ、ボク男なんだよ!? 寒いの平気って言ったけど、それが"スカート穿いてもいい"って事にはならないじゃんか!」
遊戯の手には、所謂サンタ服が渡されていた。イブ当日のバイトだと言う事でサンタの仮装をして欲しいと言われたのだが、遊戯の身長に合うサイズが女物しかなかったのだ。
「ミニスカート…」
この服を着た自分の姿を想像し気分が沈んだ遊戯だったが、店主と城之内に頼み込まれ、結局サンタ服を受け取ったのだった。

「はぁ…」
当日はよろしくお願いしますと改めて店主に挨拶をし、別のバイト先に行くと言う城之内ともその場で別れ、ゆっくりと歩きながら家へと帰る途中で前方にとても見慣れた背中を見つけた。
「もう一人のボク!」
振り返った《遊戯》の顔が綻んでお互いに駆け寄る。
「相棒! 良かった。話がしたかったんだ」


しまった! ボク、学校で24日会えるみたいな事言っちゃったけどあんなカッコ見せられるワケないよ!
だって、自分の恋人が女装癖アリなんて思われたら…ボク嫌われちゃうんじゃないの!?
そんなの…そんなの絶対イヤだ!!


「ごめん、もう一人のボク。やっぱり24日は会えない」
「なっ、何故なんだ相棒! さっきはそんな事…」
「ホントにごめんね。でもボク…とにかくイヤなんだ!!」
「嫌!? …嫌って、オレと会うのが!?」
「えぇ!? あ、違…!! あの、その、ホント…ごめんっ!!」
"相棒に会えた"と喜んだ《遊戯》だったが、混乱して走り去ってしまった遊戯によって、また取り残されてしまった。
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