Silent nightには程遠い


12月14日、放課後。
《遊戯》は遊戯の様子を窺っていた。
それというのも、どうにも今月に入ってから遊戯はよく溜息を吐くのだ。最近ではそれが顕著になってきた為、何か悩み事でもあるのかと感じていた。
それならば自分に相談してくれればいいと思う反面、遊戯が自分に打ち明けないのには何か理由があるのか…と中々切り出す事が出来ないでいた。

「よォ、遊戯!」
「あ、城之内くん!!」

そんな事を考えている内に遊戯の隣には城之内の姿が。何やら楽しげに話し込む遊戯に、先程までの憂いの表情は見当たらない。
「じゃあオレ、これからバイトだから」
「そっか。頑張ってね!」
「おぅよ。じゃあなー!! そっちの《遊戯》もなー!!」

ビクンッ、と《遊戯》という単語に遊戯が反応した。そして帰って行く城之内の背中を見て…溜息。


オイオイオイ、その反応は何なんだ相棒!?
城之内くんを見た後に溜息って…まるで恋患いのソレじゃないか! 見た所、喧嘩をした後の気まずさからくるものでも無さそうだし。
しかも何故オレの名前に反応した!? もしかして相棒は城之内くんの事を好きになってしまったのか…? だから恋人であるオレの名前に後ろめたさを感じて…?
いや! 相棒に限ってそんな事は無いだろう。オレは誰よりも相棒を愛しているし、その想いは相棒だって同じはず。
だがしかし、城之内くんは外見も内面もいい男だ。それは事実…。相棒は彼に惹かれてオレから乗り換えてしまったんだろうか?
"ボク、城之内くんの事が好きになったから君とは別れる"なんて事を言われてしまったら!?
オレはどうしたらいいんだ、相棒! 教えてくれ!!


「もう一人のボク」
《遊戯》が一人であれこれと考えている内に、当の本人が目の前に来ていた。
そして言い難い事を告げる時のように視線を泳がせ、口を開く。
「いつまでも黙っている訳にはいかないな、と思って…」
パチンと両手を合わせ、《遊戯》に対して頭を下げる遊戯。
「ごめん、もう一人のボク! 今年のクリスマスは一緒に過ごせない…!!」
「だっ、ダメだ! おおおオレは、お前とは絶対に別れないからな!!」
「…へ!? 何言ってるの、もう一人のボク。ボクはただ城之内くん…」
「城之内くんが何だ!? その言葉の後に何を続けるつもりなんだ!! オレは、オレは…こんなにもお前を愛しているのに!!」
「いきなりどうしたの!?」
「相棒の、相棒のッ…、相棒のバカァァァァァ…!!!!」
「えぇぇえぇえぇぇ!?」
走り去る《遊戯》を見ながら、遊戯は盛大に叫んだ。
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