noisy party!

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「そんな曲しか歌えないのかい? 君が女の子にモテないワケが解ったよ。選曲センスゼロだね」
「んだと!? テメ、御伽! そんなに言うなら、おめーの選曲センス溢れる歌を披露してみやがれってんだ!!」
決して広いとは言えないカラオケボックスの個室に、マイクを持ったままの城之内の声が響く。
「勿論いいけど。でも次は遊戯くんと獏良くんの番だからね。ボクはその次さ」
「え、もうボクの番? ボクはさっき歌ったから……えぃ!!」
再び、自分ともう一人の自分の心を入れ替える。
「相棒!?」
『次は君が歌ってみてよ』
「歌うったって、何をどうしたら…」
「何だァ? 王様は流行りの歌も知らねぇのかよ。笑わせるぜ!!」
"ヒャーハハハハハ"と笑う人物は、先程までのおっとりとした雰囲気からは掛け離れている。
「貴様は…バクラ!!」
「器の方の遊戯が誕生日だって聞いて出てきてみれば、今居るのは王様の方じゃねぇか。しかも自分じゃ何も歌えねぇときた」
「何だと…! ならば貴様は歌えるというのか!!」
「ケッ。オレ様を誰だと思ってやがる! そこで大人しくオレ様の美声でも聞いてな!!」
『凄ーい! バクラくんの歌とか貴重そうだよ、もう一人のボク!!』
「くっ…!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ中、不意に部屋の照明が落とされた。
「ちょっと待ったぁ!!」
『その声は…モクバくん!?』
何が起こったのか分からずに全員が自然と口を噤んだその時、よく聞き慣れた少年の声がした。つい先程も一緒に居た人物の為、遊戯も聞き間違う筈がない。
「やっと見つけたぜ、お前ら! 今だ、磯野! 兄サマからのプレゼントを見せつけてやれ~!!」
「はっ!!」
薄暗くなった室内に仄かな明かりが入ってくる。それはどうやらケーキに差された蝋燭の火のようで。しかもその大きさは、部屋の扉をギリギリ通過できる程のものである。
パチン、と部屋の照明が点けられその場に居た全員の目の前に姿を見せたものは、確かにケーキには違いなかったが、形が何やら普通ではなかった。
「どーだ、スゲーだろ!! 兄サマが特注で作らせた青眼の白龍ケーキだぜぃ!!」
「………」
「やったぜ、磯野! 皆驚いて声も出ないぜ! 帰って兄サマに報告だぁ!!」
「えぇぇぇ!! いやいやいや、待ってモクバくん! ここのカラオケ、持ち込みはダメだよっ」
あまりの事に、思わず表に出てきてしまった遊戯。
「遊戯、最初に突っ込む所はそこじゃないわ」
「でもコレ、美味しそうだね~」
こちらもいつの間にか入れ替わっている獏良。
「つーか大体よぉ! 何でオレ達の居場所分かってんだよ!!」
「KCと兄サマに不可能は無い! 持ち込みの許可もちゃんと取ったぜぃ」
「KC怖ぇぇぇ!! …それに、海馬からのプレゼントだってんなら何で本人が持ってこねーんだよ!!」
「兄サマがこんな狭っ苦しい場所に来るワケないだろ? いいから早く食えよーー!!」
「うん、コレ美味しいよ。遊戯くん」
「あっ、何で遊戯より先に食べちゃうんだよー!! おい、磯野! お前もちゃんと見張ってないとダメだろ!?」

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「楽しかったぁ~ッ!!」
ばふっ、と遊戯はベッドに沈み込んだ。自室のベッドではなく、今は遊戯の心の部屋だ。
「ママの料理も美味しかったし、食べ過ぎちゃったね~」
「…相棒」
「何? もう一人のボク」
「誕生日おめでとう。…まだ、お前にそう言えていなかったから…」
「…そんなに辛そうな顔しないでよ、ありがとうって言えなくなるじゃないか。…どうしたの?」
遊戯は体を起こし、ベッドに腰を掛けて座っていた《遊戯》の顔を見つめた。
「皆が相棒の誕生日を祝ってプレゼントまで用意していたのに、オレは何も…」
「もう。まだそんな事気にしてたの? ボクは、君からはもうプレゼント貰ってるよって言ったはずなんだけど」
「……?」
「"オヤスミのキス、して欲しいな…"」
そう言われて《遊戯》は、昨夜…というより今日へと日付が変わった頃、遊戯から"ワガママを聞いて欲しい"と言われた事を思い出した。
「ボクが今日、6月4日になった瞬間に一緒に居たのは君。誰よりも早く、ボクを幸せな気持ちにしてくれたのは君だよ」
「…意地が悪いぜ、相棒。あんな言い方じゃ、オレは気付けない」
「ふふっ。だってボクは、君のそんな不器用な所も全部好きなんだ…って、うわ!」
せっかく起こした体を、《遊戯》に勢いよく抱きしめられて倒れ込む。
「…これは、今日もオヤスミのキスしてくれるって事?」
「キスならいくらでも。…ただ、今夜は寝かせないからオヤスミのキスにはならないと思うぜ」
「ちょっ…!」
「ダメか?」
「…なら、今日もボクのワガママ聞いて…」
「あぁ。…何だ?」
「おめでとうって言ってよ。今度は、ちゃんと笑って」
見上げた《遊戯》の顔は、言うまでもなく幸せそうに綻んでいて。
「相棒、誕生日…おめでとう」
「ありがとう、もう一人のボク」

今日は、世界中の誰よりも幸せになる事を許された日。


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