noisy party!


「ねぇ、もう一人のボク。明日って暇?」
日付も変わるかという頃、自室のベッドに潜り込んでから遊戯はもう一人の自分に問い掛けた。
『暇もなにも、お前に予定が無ければオレにも無いぜ』
「そっか、そうだよね。じゃあ覚悟してて、もう一人のボク! 明日はきっと忙しいよ!!」
『明日? 学校は休みだったよな。どこか出掛けるのか?』
「うん! きっと楽しい一日になるよ~!!」
ちらり、と時計に目をやると、丁度夜の12時を回った所だった。
「…あのさ」
視線を下に落とす事で、身に纏う空気を変える。
『どうした』
「ちょっとワガママ言ってもいい?」
体に掛けていた布団を口元まで上げ、モゴモゴと恥ずかしそうにしながら遊戯は言った。
「オヤスミのキス、して欲しいな…。ダメ?」
すると《遊戯》は軽く吹き出して、
『ダメな訳あるか。こんなワガママならいつでも歓迎するぜ』
未だ隠された唇にするのは叶わず、《遊戯》は遊戯の額にそっと口付けを落とす。
お互いにその感触を得る事は出来ないが、それでも遊戯は幸せそうに笑った。
「ありがと! それじゃあボクはもう寝るね。オヤスミ」
『あぁ、オヤスミ。相棒』

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起床時間を告げる目覚まし時計を止め、遊戯はぱっちりと目を開けた。窓から差し込む光が眩しい。


…こんな時だけ寝坊しないなんて、ボクってゲンキンな奴。いつもこうなら遅刻しないのにさ。


「でも晴れて良かった! さっそく出掛ける準備しなくちゃ!!」
千年パズルを首に掛けて部屋を出た。
トタトタと階段を降りると食欲をそそるいい匂いが遊戯の鼻をくすぐり、朝食の用意をしていた母と、それを手伝っていた祖父と目が合った。
「おぉ、遊戯。誕生日おめでとう」
「ありがとう、じーちゃん」
『!』
双六の言葉を聞いた瞬間に、遊戯の隣に居た《遊戯》の顔色が変わる。
「おめでとう、遊戯。今日はお友達と出掛けるのよね?」
「うん!」
「楽しんでらっしゃい。でもあんまり遅くなっちゃダメよ。夜ご飯は遊戯の好きなもの、沢山作って待ってるからね」
「やった! ありがとう、ママ」
朝食を終え、再度自分の部屋で外出用の身支度をする。鏡の前に立ち、ああでもない、こうでもないと服やアクセサリーを選ぶ遊戯の隣から、遠慮がちに声が掛けられた。
『相棒』
「なぁに?」
『今日は、あ…相棒の誕生日だったのか?』
普段の威厳ある彼の姿からは想像もつかない程、困り果てた顔をしている。
「そうだよー」
『…すまない! その、知らなくて…。前以って分かっていたら、何かお前の喜びそうな事を…』
「知らなくたっていいよ~。だってボク、言ってないもの」
『だが…!』
「いいから、いいから! それに、もう君からはプレゼント貰っちゃったよ?」
『え?』
何の事か分からない、という顔をしている《遊戯》にパチンとウィンクをしてみせ、遊戯は用意していた鞄を手に駆け足で部屋を出た。
「もう行かないと!! 今日の10時に童実野駅に集合だよ、もう一人のボク!!」

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「良かった。遅刻しなかったみたい」
待ち合わせ場所に着き時計を見ると、約束の時間にはまだ少し余裕があった。
『城之内くん達と待ち合わせしてるのか?』
「城之内くん達とはお昼から遊ぶよ! 今、待ってるのは海馬くん」
『海馬!? 海馬と二人っきりで遊ぶ約束をしたのか…!? そんな事聞いてないぜ、相棒!!』
「昨日、珍しく海馬くんが学校に来たんだよ。それで誘われたんだけど、君はずっと奥に居たから知らなかったんだね」
『それで二人だけで会う事になったのか』
「う~ん…。二人というより、多分モクバくんも一緒に来ると思…」
とその時、穏やかな童実野駅の雰囲気には似つかわしくないリムジンが現れ、目の前で急停車する。すると、その中から二人の人物が降りてきた。海馬コーポレーション社長、海馬瀬人と弟のモクバだ。
「ワーハハハハハ! 来ていたか遊戯ぃ!! このオレが直々に貴様の誕生日を祝ってやる! さぁ、オレと決闘だ!!」
『何故いきなりそうなる!?』
「海馬くん、昨日学校に来た時にボクの誕生日が明日だって知って、『なら決闘してやる』って言ってくれたんだ。きっとボクが楽しめるように気を遣ってくれたんだよね」
『いや、自分が楽しみたいだけなんじゃないか…? 登場の仕方も派手だしな』
「そう? ボクはもっと派手に来るんじゃないかってちょっと心配してたよ。ヘリかジェット機で来ると思ったもん」
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