自業自得ループ!


静まり返った室内で、グラスの中の氷が溶けて小さな音を立てる。その音にハッとして、遊戯は自分の口から飛び出した発言の重大さに漸く気付いた。


ちょっ…と、ボクいま何て言った!? 『付き合ってみる?』とか言ったの!? 何でちょっと上から目線なの!? …いや、そうじゃなくて提案のつもりだったんだけど…って違う! そういう事じゃない!!
どうしてボク、そんな事急に言っちゃったの!? …好きだから? え!? ボク、今、もう一人のボクの事を好きだって思ったの!?


ありったけの疑問符を自分に投げ付けて、跳ね返って散らばったそれを拾い集めている内に考えがまとまってくる。
どうやら自分が《遊戯》を好きらしいという結論が見えてきたのだが、見えてきたらそれはそれで焦る。


どっ、どうしよう。さっきからもう一人のボク黙ったまんまだし、変な風に思われてたら…!!
まさかこんな訳の分からないまま告白しちゃうなんて思わなかったし、そもそもボク達、男同士だよね!?
もう一人のボクからしてみると完全に友達だと思ってた相手から急にこんな事言われて、驚かない訳ないよ! この空気、一体どうしたら…!?


「相棒」
「はっ、はいっ!!」
「…いいのか?」
「え、何……んっ」
何が、という言葉はその疑問ごと《遊戯》の唇に遮られた。何が起こったのか理解出来ずに目を見開くと、熱を帯びた相手の視線をゼロ距離で浴びてしまい、慌てて目を閉じる。
「んぁ…ん、ぅ…」
ほんの少し開いた唇の隙間から《遊戯》の舌が入り込み、遊戯の舌と絡み合う。つい先程まで飲み物を口にしていたせいか、少し冷えた相手のそれが気持ちいいと思った。
いつの間にか掴まれた手も指同士が絡まり、親指の腹で手の平をなぞり上げられて身体がぴくりと震える。思わず遊戯も彼に応えるように舌を絡めようとしたその時、再びグラスの中の氷がカラン、と音を立てて遊戯の思考を呼び戻した。
「…!」
弾かれた様に身を引くが、座っている状態ではほんの気持ち程度だ。唇は離れたものの、両手は未だ《遊戯》に捕まったままである。
「も、一人のボク…?」
「取り消すなら今の内だぜ、相棒。付き合ってみるか、なんて気まぐれだったと…冗談だったと笑ってくれ」
「…っ」
「じゃないとオレは、もうお前を手放せない」
目の前で紅い瞳が、切ない程の想いをぶつけてくる。
「……好きだ、相棒…」
絞り出すような声に、遊戯の胸が締め付けられた。本気の言葉と表情に、今までどうして彼の想いに気付けなかったのだろうと悔しくなる。あんなにずっと一緒に居たのに。
「…取り消しなんてしないよ。もう一度、ちゃんと言わせて」
自分の想いに気付いた今、今度こそ伝えられる。こちらの本気が伝わるように、指を強く絡めて相手の目を覗き込んだ。

「君が好きです。ボクと、付き合って下さい」


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