自業自得ループ!


「んー…」
一口、二口とグラスに注がれたお茶を飲みながら、遊戯は考え事をするように声を漏らした。
"もう高校生なんだし、夏休みくらい女の子とデートしたらどう?"という母の言葉が頭の中を回り、デートするのに高校生だからも何もないじゃないか、と拗ねるようにそっぽを向く。自分はこの夏休みも《遊戯》と一緒に居たいから、《遊戯》を誘って共に居るのだ。
それはきっと目の前に居る相手も同じで、だからこそ貴重な時間を遊戯に割いていてくれる。

…でも本当は、そうじゃないとしたら?

《遊戯》も世間一般の男子高生のように、女の子と遊び回りたいと思っているのだろうか…と一瞬考えて、"いや、ないだろうなぁ"とそれを打ち消した。
目の前に居る人物は、そういう欲とは無縁に見える。誰か女の子と一緒に居るよりも、ボクや城之内くんのような仲間内で遊んでいた方が余程楽しそうだ。
…しかし、先程母が言っていたように、自分達ももう高校生である。『デート』だとか、『付き合う』という事に興味が無いのかと聞かれたら、少なくとも遊戯の方はある。特別な誰かと特別な時間を共有出来たなら、それはどんなに幸せな事だろう。
誰でもいいって訳じゃない。一緒に居ると楽しくて、心の底から嬉しくなってしまうような人。
そんな人居たかなぁ、と自分の身近な人物を思い浮かべて真っ先に出てきたのは…

「…もう一人のボク」

口から滑り落ちた言葉で《遊戯》がこちらを向いた。ぱっちりと合った視線が"どうした"と問う。
自然と出てしまった彼の呼び名は、遊戯に一つの事実を告げた。そうか、ボクがどうしたって一緒に居たいと願うのは君なんだ。共に笑っていたいと思うのは君なんだ。
どうしてそう思うのか、その答えに辿り着きそうで手を伸ばす最中、目を《遊戯》から離す事が出来ない。紡がれる言葉を止める事が出来ない。
ボクは、君が-…

「ボクと、付き合ってみる?」

-…好き?
2/3ページ