自業自得ループ!


「もう一人のボク。…ボクと付き合ってみる?」

自分がとんでもない事を口走ってしまったのだと気付いたのは、いつもなら自分のどんな問い掛けにでも答えてくれる《遊戯》が、目を見開いて固まっているのを見てからだった。

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「あっつーーい! ただいま~!」
「お邪魔します」
ジリジリと照り付ける太陽の熱から逃げるように、二人は遊戯の家へと駆け込んだ。
「あら、早かったのね。今日は夕方まで遊んでくるんじゃなかったの?」
「暑いから外はやめたんだ。ほら、もう一人のボクも早く!」
母への返事も程々に、履いていた靴を脱いで忙しなく階段を上っていく。
「あっ、遊戯! ちゃんと手洗いとうがいしなさい!」
「は~い」
「…もう。そんなに急がなくたって、何も逃げないでしょうに…。《遊戯》くん、いらっしゃい。今、冷たい飲み物でも持ってくからゆっくりして行ってちょうだいね」
「ありがとうございます」
夏休みが始まってからというもの、《遊戯》が武藤家に遊びに来るのもこれで三度目だ。夏休みでなくとも、昔から遊戯の家へ訪れては世話になっている。
毎回申し訳ないもいう気持ちで眉を下げつつも、変わらず優しく迎えてくれる事が嬉しく、《遊戯》は小さく笑みを浮かべて遊戯の後へと続いた。

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「はい、麦茶とお菓子ね」
程なくしてやって来た遊戯の母は、部屋に客人-主に《遊戯》だが-が来た時に出される小さなテーブルに、お茶と菓子を置いていく。
「《遊戯》くんもごめんなさいね、いつも遊戯と遊んで貰っちゃって」
「ちょっ…ヒドイよ、ママ! 別にもう一人のボクに無理させてる訳じゃ…」
「そう? でもあなた、《遊戯》くんとしか遊んでないじゃない」
「そんな事ないよ~!」
「もう高校生なんだし、夏休みくらい女の子とデートしたらどう?」
「デ…!? あ、明日、杏子と遊ぶ約束してるもん!!」
「あら、二人きりで?」
「………城之内くん達も一緒」
「…ぷっ」
武藤親子が繰り広げる会話を大人しく聞いていた《遊戯》だったが、とうとう耐え切れずに吹き出した。
「なっ! 笑わないでよ、もう一人のボクー!」
「くくっ…」
「そうよねー。《遊戯》くん以外にもちゃんと友達は居たわね~」
友達、という単語を少し強調され、遊戯はぐっ、と詰まる。
「いつか彼女が出来るといいわね」
「もー!! ボクの事からかうのはいいから、ママはもう下に行っててよー!」
ぐいぐいと無理矢理母を追い出すと、遊戯はその場にペタリと座り込んだ。何だかとても恥ずかしい所を《遊戯》に見られたような気がする。
「仲、いいよな」
「えぇ? そうかな~。ママってたまに意地悪言うんだよ」
「そこが仲いいんだろ」
楽しそうに笑う《遊戯》に、恥ずかしがっているのは自分だけなのかと安心して元に居た場所へズルズルと戻る。小さなテーブルに向かい合って座ると、置かれた麦茶へ手を伸ばした。
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