私はヒロインじゃない
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その接触は、思っていたよりも直ぐにきてしまった。
「じゃあ、今回は私のおごりよ!お邪魔虫の私は帰るわ。またねぇ蘭!」
「え、園子まって!」
呼び止めるも笑ってアポロを去ってしまった友人。
残されたのは真向かいの席に座った降矢さん。
「すみません、僕が園子さんに頼んだんです。蘭さんとお話したくて。」
すまなそうに、でも僅か照れたような様子で言葉を口にした。
このタイミングでこんな意味深げな言葉を言うのは・・・探りを入れるためだろうとしか、私には思えなかった。
「お話・・とはなんでしょうか?」
「ははは、ここまでアピールしていても気付かれないのはへこみますね。」
苦笑とこの言葉に私はただ困惑する。
「ご冗談を・・安室さんはステキな方なので、余りそのような発言はされるべきではないと思いますよ?」
笑って冗談だと流そうとして、席を立とうとしたが・・手を掴まれた。
「・・蘭さんこそ、サラリといいますね。勘違いしてしまいますよ。」
勘違いも何も・・・当たり障りのない発言だったと思うのだが。
首をかしげた私に、僅か目を見開いてため息をつかれた。
「蘭さんが僕を見る時の表情に哀しみがなくなったので、僕の事をみてくれているのかと期待したのですが・・まだまだのようですね。」
思わずドキッとした。
いや、恋愛的なものではなくて・・余りに彼の観察眼がすごすぎてだった。
「・・・あの表情をしていた理由、僕に教えてはいただけませんか?」
その理由は、到底彼に言えるわけがない。
「あれは・・・ただの私の勘違いであり、驕りだっただけのことです。」
そう、私がいなくても彼は二人の友人を助け出していた。
助けられなかったと嘆いていたアレは、結局驕り。
私が何か出来るなんて・・・・本当に思い上がりだった。
そして、表向きは物語どおりだったのだとしても、もしかしたら裏での真実は違う物だったのかもしれない。
全部が全部、私が知る通りではないのだと、希望がもてたから。
「安室さん、私は貴方のおかげで前に進めそうです。貴方がいてくださってよかった・・ありがとうございました。」
話すことは出来ない、でも・・コレだけは伝えておきたかった。
心からの感謝を。
目を見開いた彼が掴んでいた手が緩む。
私は一つ礼をしてそそくさとアポロからでていった。
情報を聞き出すが為の演技で思わせぶりな言動をしたのだが、冗談と受け流す高校生の少女。まるで成人女性を相手にしているかのようだ。
『ただの私の勘違いであり、驕りだっただけのことです』
何を思っていたのか、自嘲したような笑みを浮かべて口にした言葉。
もう恋愛の線は消えた。
だが、それなら余計に気になる彼女の態度は・・もしかしたら俺自身に対するもの?
其処まで考えて、思考をはらう。
俺はこの少女のことはつい最近まで知らなかった。
泣かれるまでの事をした覚えがない以前に一度も会ったことがない。
『安室さん 私は貴方のおかげで前に進めそうです』
真っ直ぐに俺を見つめた少女。
『貴方がいてくださってよかった ありがとうございました』
心の其処からの感謝の言葉。
その笑顔に、偽りはまるで感じられなかった。
俺は何もした覚えはない。
何に、何故其処までの言葉が彼女から出てきたのか分からず、俺は思わず掴んでいた手を緩めていた。
その隙に彼女は去ってしまい、余計に毛利蘭という少女が分からなくなった。
だが、一つ。
やはり“理由”が鍵のように思える。
理由について問いたときの彼女の掴んだ手・・・脈の触れが速かった。
「蘭ねえちゃんは・・新一兄ちゃんのこと、どう思ってるの?」
コナン君の言葉に、私は目を見開いて固まってしまった。
当の本人を前に私はどう答えるべきだろう?
新一は物語の通りまではいかなくとも、ある程度の好意は寄せているのは何となく分かっていた。
だが、私は恋愛に関してまったくの初心者。
「推理がとっても好きで、頭がすごくよくて、運動神経もいいし、色々な知識を持っているし、かっこいい、とっても優しくて心が強い人だと思うよ。」
工藤新一について私が思っているままを口にしていく。
「そ、そうなんだ///」
「でも、時々恐くなるの。」
「え?・・恐いってどうして??」
「・・・新一は真っ直ぐすぎて、危険なことにも正しいと思えば突っ込んでいっちゃう。」
そして何よりも・・・
「私のことも、見つけだしてしまいそうだから・・・。」
コナン君に視線を戻せば、困惑した表情をしている。
私は彼に笑いかけた。
「新一のことは好きだよ。でも、恋愛ではないかな?私、初恋もまだだから。」
笑う私に、彼はカチンと固まる。
本音しか、私には言えない。私は、毛利蘭に成り代わっても・・彼女自身のようには到底なれないのだから。
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