私はヒロインじゃない
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いつかは会うと分かっていた。
でも、私はこの人と会うことを恐れていた。
「毛利先生の助手になりました、安室透です。よろしくお願いします。」
ニコリと作った笑みを浮べて答えた彼、安室さんは此方に手を差し出す。
「あ・・わ、私は毛利蘭です・・・。」
何とか答えて、その手をとった。
だが、直ぐに安室さんは目を見開いた。
「?!ど、どうした蘭?!」
焦る父と、明らかに狼狽する安室さん。
かしげた首で、私は漸く気付いた。
頬伝う涙と、震えるからだに。
「ご、ごめんなさい・・あなたのせいではないんです。」
そう、これは私の罪を思い出したせいだ。
彼の大切な人たちが死ぬのを知っていながら、何も出来なかった自分の罪を・・私が受け止め切れないせい。
「ごめんなさい」
ただ、その言葉しかでてこなかった。
「エンジェル!其処をどいて!!」
震えながらも私を抱きしめて、ベルモットから私を守ろうとする。
「どきません!この子は・・この子は絶対に死なせない!!」
なぜそんなに必死に私を庇うの?
疑問しか浮かばない。
でも、抱きしめられた大きくて柔らかくて・・暖かな温もり。
おねえちゃんを思い出させた。
毛利探偵・・元刑事ということもあってか、正義感のある男であることは分かった。
あの眠りの小五郎というのには何かあるのだろうが、きっとあの子供・・江戸川コナンが助言をしていることに何か理由があるのだろう。
そして、気になるのは毛利小五郎の娘。毛利蘭。
彼女の経歴はただの女子高校生で、特に目立ったものは出てこなかった。
だが、引っかかるのだ。
初対面であって泣かれたことに驚いたが、何でも知り合いに似ていたとか・・。
俺に誰を重ねているのかわからないが、俺こと安室透と会う時彼女が向ける目は何時も悲しげで罪悪感を孕んだものだった。
彼女はよく事件に巻き込まれるらしく、あの赤井が関わっていたバスジャック事件。
一般人の彼女が安全装置を解除してバス後方の窓ガラスを破り女の子を救出・・。
銃の操作は作家の工藤優作の息子工藤新一と幼少時に海外で撃ったことがある、といったところだが・・話は通じるところはある。
だが、何度か行ったことがある昔のことが直ぐに出来るものか?
体術に関しても中々の腕前だと聞いたし、どうやら工藤新一とともにベルモットに気に入られているというのも疑わしいところがある。
そしてなによりも・・・ジンが毛利蘭を気にかけている。
「蘭さん、偶然ですね。」
「・・あ、安室さん・・。」
彼女は家の家事を行っているのは知っていた。
だから偶然を装ってスーパーで待ち伏せをかけていた。
「もしよかったらお家まで送りますよ?方向も一緒ですし。」
アポロでの買出しだと装い、そのうえ方向も同じ。
コレなら断る理由はないだろう。
「・・ありがとうございます。」
やはり僅か困った表情の笑みを浮べて、でも断らずに車に乗せられた。
道はそれほど長くない、だから直ぐに目的地には着いた。
「ありがとうございました。」
降りようとした彼女へ、俺は声をかける。
「蘭さん、一つだけうかがってもいいですか?」
「・・・なんでしょうか。」
「あなたを悲しい顔にさせてしまうほど、あなたが嫌いな人と似ているのですか?」
女子高校生だ。
どうせ恋愛事情だろう。
おそらくトラウマになるような。
それなら、其処を聞き出し慰めれば何か情報を得られるかもしれない。
彼女は何か隠している気がする。
ソレが組織と何か関わる可能性があるなら、少女とはいえ利用すべきだろう。
「違うんです・・嫌いではなくて・・・」
未だに好きだとか、か。
面倒な話しだが、ここは親身に聞くべきだろう。
まだ高校生、年上にあこがれを抱かせるのはそう難しいことではない。
それに、どうにかしてジンとのかかわりを聞き出さなくては。
組織内でもめったに人を寄せ付けない奴が一般人を気にするのだから、よほどの何かが彼女とジンの間にはあるはずだ。
「顔向け・・出来ない人なんです・・・」
ポツリと呟くように言われた。
顔向けできない人?
想定外の返しに反応が遅れた。
「声をかけてくださってありがとうございました。そして・・・すみません。」
それだけ残して、彼女は車を降りる。
「・・顔向けできない?・・」
何か酷いことをしてしまった人に似ているのか??
中々話を聞きだすのも手ごわそうな子だ。
毛利探偵のこともあるし、余り強行手段にはでられない。
「・・アイツ等に頼むか。」