私はヒロインじゃない
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毎月、工藤家の掃除をしている。
私は鍵を開けて中へと入った。
「あれ?あったかい??」
誰もいるはずのない家・・もしかしたら有紀子さんか優作さんが帰ってきたのだろうか?
どちらにしても挨拶をしなければ。
そう思って、私は声を出す。
「失礼します!毛利蘭です。有紀子さん戻られたんですか?」
応答がないのは奥にいるからなのか・・・。
室内は掃除されているようだし、有紀子さんは戻っているのは確実だろう。
「有紀子さん?」
上がらせてもらい、私は名前を呼んだ。
洗面所のほうで音がした。
ここからでは玄関の呼びかけは聞こえなかっただろう。
扉の前で私はノックをする。
「有紀子さん、お邪魔してます。毛利蘭です、お掃除に入らせていただきました。」
シーン・・
私はここでおかしいなと思った。
有紀子さんなら直ぐに声をかけてくるはずだ。
洗面所で着替えをしていたとしても、すぐに返事は返してくれる。
これは有紀子さんではなく優作さんでも同じだろう。
ここで、私は嫌なことを思いついてしまった。
工藤家は黒の組織に調べられているはずだ。
それがもし今だとしたら・・・・・。
私の身体は固まってしまった。
ギッィ・・
開かれた扉。
その先には・・・・高身長の男性。
赤井秀一、沖矢昴。
二つの名前が同時に頭に浮かんだ。
思わず目を見開いて、いつかのようにお互いに見合ってしまった。
確かに、工藤家と関わりが深いという少女が毛利蘭だとは知っていた。
だが、鍵を預けられ尚且つ掃除を定期的に頼まれて、今日来るなど知りえなかった。
内心でため息をつきつつ、ここに居るいきさつを彼女にどう説明するかを思案しながら扉を開いた。
そして、目の前の彼女。
「「・・・・・」」
あの時と同じようにお互いに見合っていた。
正直俺も驚いていた。
今の彼女の表情の変化に、だ。
扉を開いて最初に彼女に浮かんでいた表情は“恐れ”。
工藤家と関わりが深いのだ。
婦人の名を呼んでいた辺り、掃除されていたため家主が戻ったと思ったのだろう。
だが返事がない。
鍵を預かるほど仲がいいのだ。
であるのに、返事がないのは明らかにおかしい。
それに気付いて泥棒かと思っていたのか?
だが、どうしてか。
彼女は俺の顔を認めるとその恐れがただの驚きに変わった。
彼女から見た俺は明らかに初対面。
だが、彼女は疑うこともなくただ“俺”を認めて驚くだけなのだ。
二度会った時とまったく同じ反応。
余りにも重なる。
まるで俺がFBIの者だとわかっているような・・・・。
「・・あ、すみません。私は毛利蘭と申します。工藤さんたち家族とは仲がよくて、留守にされている間お掃除を定期的にしていたのですが・・・貴方は工藤さんのご友人でしょうか?」
先に声を出したのは彼女。
確かに、工藤家と何か関わりがある者だと思ったという質問だが・・・
ならば、最初の反応は一体なんだ?
泥棒か空き巣か・・そういう考えを抱いたというのに、何故見知らぬ男の顔を見て警戒をといた??
「・・・私は沖矢昴と申します。此方には江戸川コナン君に紹介されて家を借りさせていただいています。」
「コナン君から・・そうでしたか、お掃除もされているようですし管理は沖矢さんに任されているようですね。かってにはいって申し訳ありませんでした。 わたし、失礼しますね。」
一つ頭を下げて帰ろうとする彼女を、俺は笑顔で呼び止めた。
「毛利さん、すみません。」
「・・なんでしょうか?」
振り返った彼女は僅か緊張した面持ちで此方を振り返る。
早くこの場を去りたいという彼女の心理が直ぐに読み解けた。
やはり何かを彼女は知っている。
「・・すみません、あなたとどこかでお会いしたことがありませんでしたか?」
「え?・・い、いいえ。お会いしたことはないかと思いますが・・・。」
もちろんあるわけがない。だが、おかしい。
「そうですか・・しかし、考えられず即答されると悲しいですね。私は元々東都に住んでいるので、すれ違っていても可笑しくないはずなのですが・・・。」
口説き文句だが、実際沖矢昴が存在していたならばすれ違うくらいの可能性はある。
考えずに即答するのは明らかにおかしい。
まるで、沖矢昴は最近作られた人物だと・・知らない限り。
彼女の手に力が加わった。
そして身体も僅か強張る。
この反応では更に疑念が上がる。
「・・・すみません・・・」
うつむいた彼女は手を握り締める。
さて、次は何を口にするのか・・・・。
無意識のうちに、俺の口元は上がっていた。
「お、沖矢さん見たいなカッコいいひとを見たら!・・わ、忘れないと思うので!!」
『失礼します!』
彼女はそういって走って家を飛び出した。
俺は不覚にもソレをただ見送った。
「・・・まさか、そんな言葉を返されるとはな・・・」
気のせい・・なのだろうか?
うつむかれた顔では判断しがたい。
だが、話しはまあ通らないわけではないだろう。
この顔が彼女の好みの顔だったっというだけのこと。
しかし・・なぜか、釈然としない。
暫くはここに居るのだ、かかわりは出てくるだろう。
「少しずつ解いていくか。」