私はヒロインじゃない
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雪が舞い散る。
もうおしまいね・・ジンに向けられた拳銃。
そしてソレは一瞬だった。
バン!!
勢い良く開け放たれた屋上のドア。
其処に拳銃を向けていたジンとウォッカに飛び掛ったのは・・帽子を目深に被ったジーンズジャンバーを着た人。
「お前はあの時の!!?」
彼は流れるように私を抱きかかえると直ぐに煙突へと飛び込んだ。
一瞬の間で何が起こったのかわからない。
でも、直ぐに感じた前兆。
私の身体は煙突につくまでに幼児化していた。
腕の中で小さくなった私を抱えた若い青年は、驚きもせずに・・そのまま駆け出す。
「?!貴様何者・・ぐお?!!」
降りた先にいた拳銃を持った老人、恐らくピスコに対して拳銃を向けられる前に正確に繰り出した蹴りで一蹴した。
ほんの瞬きの間だ。
可也の腕があるのは確か、ドアから出たさき。
「な?!」
聞き覚えのある声。
ソレは工藤新一、彼の声だった。
青年の腕に、彼も私もいる。
そして、彼は私たちを・・・リネン要の回収口へと落とした。
滑り台のようになった中、その先にあるのは出口。
使われていない旧館の其処には・・シーツの山があり、ソレがクッションになり怪我一つなかった。
息をつく。
ジンやウォッカは勿論、警察の者達にも見つからぬように何とか逃げきった。
何発か撃たれていた彼女の被弾が一発ですんだ位の変わりしかなかった。
それだけしかできなかった自分がやるせない。
風邪を引いてしまった博士の変わりに子供たちの引率としてスキー場にいくことになった。
これがあのバスジャックの事件だと気付いたのは、マスクをした男性を見た時だった。
「あ・・」
思わずもれていた声。
そして視線に気付いたのだろう彼と見合う視線。
ドクリ・・
心臓が嫌に鳴った。
目が合ったのは一瞬だったのか、男性のほうが視線をはずしたことで漸く我に返る。
私は手を握り締めて・・そしてうつむいた。
こみ上げる涙をこらえるように目を強くつむって。
「騒ぐな!!騒ぐとぶっ殺すぞ!!!」
拳銃を持ったバスジャック犯たちが乗り込んできた。
ドウン!!
発砲音、そして掴まれた腕・・驚いたままの私は、温かなぬくもりを感じた。
バリン!!
「え?」
驚くままに、私はいつの間にかバスの中から出ていた。
そして爆発したバス。
私を助けたのは・・・。
「っ・・怪我はない?!」
毛利蘭。
何とかうなずいた私に、彼女は直ぐに私を抱きかかえる。
「蘭さん!大丈夫ですか?!」
「高木さん!この子怪我しています!ほかの子供たちと一緒に病院に連れて行ってください!!」
「え?」
「バスジャックの上に爆弾騒ぎで皆動揺しています・・子供たちにこのまま事情聴取は良くないでしょう。子供たちの分まで私が聴取を受けます。」
「そうだね、わかった。」
どうして?
私には分からなかった。
何故何も知らないはずの彼女が、怪我をしていない私をここから遠ざけるのか。
「毛利さん!あなたはなんて無茶をするんですか?!」
「・・すみません。」
この子は自分の身をかえりみないで他を助ける。
なんて子なのかしら・・・本当にエンジェルはお人よしなのね。
でも、気になる事はあった。
「では毛利さん・・救助のために銃を発砲したんですね。」
「はい・・夢中で・・」
「しかし、よく撃てたな。毛利君にでも聞いたことがあったのかい?」
そう、私が気になったのは彼女が銃を扱えたということ。
警部の言葉に、エンジェルは苦笑を浮かべた。
「いいえ、ただ・・小さい時に何度か幼馴染と一緒に訓練場で撃った経験があったんです。」
幼馴染、ということはクールガイ。
確かに彼の父工藤優作は多方面で才能を見せていた。
その趣味の中の一つを、息子と一緒に幼馴染を同行させていても不思議はなかった。
何とか事情聴取を終えて帰ろうとした時だった。
道の先に、彼がいた。
「っ・・。」
固まった。
不意打ちに現れた彼、赤井秀一。
あの時、彼をみて動揺したのを悟られてしまったのだろう。
「・・・やはり、以前あったことを覚えているようだな。」
以前・・・それは初めて彼女、ベルモットと出会った時のことか。
「・・はい、あなたを見て思い出しました。通り魔事件のことを・・なのでおどろいてしまったんです。」
ドクリ ドクリ
手のひらに汗が滲む。
沈黙が続き、彼が私の前に来た。
頭の上に乗る手。
私は驚いて彼を見上げる。
だが、彼はそのまま何も言う事無く私を追い越して歩いていった。
何を思っての行動だったのか?私には分からない。
ニューヨークで出会った少女。
一度、それも数分顔を合わせただけだ。
だが、妙に印象に残っていた。
あの時も、少女は初めてあった俺を見て目を見開いていた。
ベルモットを見るためにバスに乗った。
まさか、あの時と同じく犯罪に巻き込まれている状況とは。
しかし、あの時のただ驚いたような目とは今回違うものを感じた。
驚きと共にあったのは、罪悪感・後悔・哀しみ・・・ソレが混じったような目。
あの一件から一度も関わったことはない。
だというのに向けられたその目に疑問が浮かんだ。
一瞬だけみた俺を未だに覚えている。
それを考えた時、浮かんだのは通り魔。
あれは組織が絡んでいた。
僅かだが・・・勘がはたらいた。
この子は何かを知っているのではと。
だが、勘でしかない。
組織に属している感じはしないが、何かを隠している。または抱えている・・か。
「引っかかる・・・調べておくべきか。」
『私の血だったなんて分からなかったの』
灰原を助けたい一身で動いていたからか、蘭自身が負った怪我の血が灰原の足について、ソレを怪我だと思い込んでいたらしい。
その話を聞いて俺も灰原も妙に気がぬけて、色々考えていたことが馬鹿らしくなって笑ってしまった。
そうだ、蘭は何も知らない。
俺は江戸川コナンだし、灰原も小学生の子供。
そう・・蘭は大分鈍い。
それで俺がどれだけやきもきしていることか。
だが、奴らの影が段々近づいてきたことには間違いない。
今以上に気をつけないと・・蘭を巻き込まないためにも。
俺は決意を新たにしていた。
蘭が・・何も知らないと思い込んで。