私はヒロインじゃない
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十億円強奪事件。
この話が、やってきてしまった。
私に何が出来るというのだろう?
多くの人を助けることが出来ずに、死なせてきた私に・・・。
警察への連絡と、救急車は呼んだ。
ドクドクとなり響く己の心臓。
痛いくらいのそれに、落ち着けるように深呼吸をした。
黒ずくめの男二人と・・・宮野明美が対峙する。
ジンとウォッカへ向けて酒の瓶を浴びせた。
頭から酒をかぶれば第一段階は成功。
「誰だ!?」
「アルコールだ!チャカはやめろ!!」
叫んだジンに対して、私は蹴りを放つ。
だが、ソレは受けられた。
次の手と攻防するが、やはり・・ジンは強い。
「ガキだと?お前何者だ!」
『警察と救急車を呼んである』
ヘリウムガスを吸っていた。
変な声ではあるが、コレで私の言いたいことは伝わっただろう。
拳銃がつかえない今、二人係で私を殺しにかかっても時間を食う。
かすかにだが、パトカーの音が聞こえてきている。
「チ・・仕方ねぇ」
この時、僅かだがジンの口元が上がるのが分かった。
嫌な予感を感じた。
『隠れて!!!』
「“バーボン”女を殺れ」
ジンが指示するのと私が叫んだのは同時だった。
ドウン!
打たれた弾丸は動いた彼女の胸に当たる。
赤い飛沫が飛ぶ。
倒れ付す彼女を、私は唖然と見やった。
『あ・・ああああああ″!!!』
「何者かしらねぇが・・死んでもらおう“殺れ”」
また指示を出したらしい恐らく私に向いているだろう銃口。
私は、ただ・・守れなかった彼女をみやるだけだった。
ドウン!・・・銃弾が私の左胸に命中した。
胸部に広がる痛み。
私は倒れた。
「ずらかるぞ!!」
「はい、わかりました」
三人の声を聞き・・遠ざかる彼ら。
痛む胸・・でも、私は問題ない。防弾ジョッキを着ていたから。
ダメだ。ダメだ。死んでは行けない!!
上着を脱ぎ、出血部を覆う。着込んでいた衣類を足のしたへ入れた。
「雅美さん!!?」
コナン君がきた。
彼女に出来ることは・・もう私にはなかった。
彼女から離れて私も駆け出す。
「っつ!!待ちやがれ!!!!!」
コナンの声を聞きながら・・私は振り向く事無く駆け出した。
うまくいかなかった今日がもう一度訪れることを、そして・・彼女が生きている未来を願った。
だが・・・次の日お父さんとコナン君から聞き、新聞で出された事実は・・・どちらの願いも聞き届けられていなかった。
宮野明美は死んだ。
だが、どういうわけか撃ち殺されたはずのガキの遺体は忽然と消えていたらしい。
「参りましたねぇ・・あの男性は防弾ジョッキでもきていたのでしょう。」
「何笑っていやがる!!お前がちゃんと殺らなかたたせいだろうがぁ!!?」
怒鳴るウォッカに肩をすくめるバーボン。
「しかし、妙ですね。あの場所は直前で受け渡し場所をジンが変えたはず。僕もウォッカに連れられてきたわけですから何処に行くかもわかりませんでした。ソレをどうしてあの青年は気付いたか・・。」
そうだ。あそこで登場した奴は余りにも不自然だった。
「宮野明美のほうも驚いた様子でしたし、協力者だったわけでもなさそうです。しかし、彼女が撃たれたときの動揺を見ると彼は彼女を知っていた。それも命がけで助けようとするほど・・・ね。」
接近戦だけで言えば中々の動きだ。
それにヘリウムガスを吸い声をかえて、尚且つアルコール純度の高い酒をかけ銃を使えなくする。
それなりの準備がされていた。
行き当たりで出来る行動ではない。
「・・問題はねぇな。単独で俺たち組織をどうこうできるやつはいねぇ・・。」
「ほう、なぜ単独だと?」
「あれだけの備えをしておいて武器は一切なかった。どこかの組織に属しているなら仲間を引き連れて武器も持ってきていただろう。俺たちが来るのを見越していたにも関わらず一人で出てくる何ザァ単独だとしか考えられねぇ。」
そしてもうひとつ気になる事があった。
「態々サツを呼んだと俺たちに言った。まるで逃げろというようにな・・・」
アレは一体どういうつもりだったのか・・・そして、受け流した攻撃を思い出す。
あの腕は細く感じた。
だからこそガキだと考えた。
「・・・まあいい、次でしゃばるなら吐かせて殺るだけだ。」
「蘭ねえちゃん、大丈夫?」
「うん、元気よ。病院にいってきたから随分良くなったわ。」
食欲もなく、微熱の続いていた蘭。
笑って言う蘭だが、その笑顔は無理をしているようにも思えた。
あの組織がらみの事件でなくなってしまった広田雅美さん。
ソレが堪えたのだろう。
蘭は・・何でも自分のせいだと抱え込んでしまう性格だ。
これ以上優しい蘭を傷つけたくねぇ。
黒ずくめの男たち。
そして・・あの青年は一体誰だったのか。
調べる術のない俺は、ただ歯噛みするほかに無かった。