箒星に乗って
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艦内、朝の食堂。子鳥のさえずりやそよ風──は宇宙を漂うここでは聞こえて来ず、代わりに鍋の底をコンロが叩く音と、食器の触れる小さな音が空間に染みていた。
「ん〜、こんなもんかな」
1人でパンを焼き、スープを煮て、適当にちぎった葉っぱを挟む。いつもの慣れで、あっという間にサンドイッチが完成した。同時並行で立てているコーヒーの香りが部屋を包み込んでおり、寝起きの体に染みてとても心地よい。
私は盛り付けた皿とマグカップを手に、いつもの席へと腰を下ろす。朝の活動は団員みなバラバラで、誰もいない静かな朝。それが落ち着くというのは、惑星レインにいた頃とあまり変わらない。少し伸びをしてから座って見える世界は、いつもと同じ光景だ。
「おい」
始めにスープへ口をつけていると、突然背後から声が落ちてくる。振り向くより先に、目の前の皿からサンドイッチが1つ宙へ浮いていった。
「え、ちょっと……」
釣られるようにサンドイッチを目で追いかけていくと、背後に立っていた人物は遠慮もなく当然のようにそれに噛み付いた。この船で一番図々しいサイヤ人、筆頭──ターレスその人である。止めに入るよりも早く、彼は出来たてのサンドイッチにかぶりついた。
「なっ──か、返せ! それあたしの朝ごはん!」
咄嗟に手を伸ばすも、当然のようにひらりとかわされる。仰け反って伸ばした手は宙を舞って、その反動で体が後ろへと倒れ込みそうになる。
「あ? 半分残ってるだろ」
「はい!? 半分も減ったんだけど!」
体制を立て直しつつ私が文句を言う傍から、ターレスは1口、2口と食べ進める。こちらの言葉など知ったこっちゃないと、そんな態度をあからさまに示している。
ターレスはふいに眉を寄せると、フンと鼻で笑った。
「味が薄いぞ」
その言葉に、思わず頭に血が上った。勝手に人の朝食をぶん取り、感謝もなく食べている分際で、まさかの味付けに文句まで言ってくるとは。何様なんだと再度振り返りながら、顔に向けて拳を突き出した。
「うっさいなあ! もともと自分用だし、筆頭のためじゃないっつの!」
ターレスはさらりとパンチを避けながら、取り上げたサンドイッチを平らげると勝手にスープにまで手を伸ばしていた。不満たらたらに睨みつけるも、彼が今更罪悪感など抱くわけもなく。
「どんだけ食べるつもりなの、文句言うくらいなら食べないでよ!」
「言ってないだろ、味が薄いって感想を述べただけだ」
「それを世間では文句って言うんだよバカ! もう、そんな言うのになんで食べるんだよ……」
思わずこぼれた言葉に、ターレスは何の反応も見せず、ただ黙々とスープを口に運んでいる。その仕草がまた腹立たしく見え、食器を腕で避けて机に突っ伏してしまう。
「ねぇ聞いてる!? 味が薄いとか言うなら、自分で作ればいいじゃん!」
「飯の時は静かにしろ」
たったそれだけの一言。それで全てを片づけられてしまうのが、なんともターレスらしい。呆れと怒りと、よくわからない気持ちが胸の奥でごちゃ混ぜになる。こちらがどれだけ荒らげても、彼の決定事項には逆らえないのだ。反動的に言い返したくなったのをぐっと堪え、その代わりに盛大なため息を吐き出した。肩を竦め、私はしばらく彼が食事をするのを眺める。
そのうち、ターレスがスープを飲み干し、カップを戻したのを見て私はしぶしぶ言った。
「次また朝かぶったら、あたしの分と……その、筆頭の分も……作ってあげよっか。べ、別に優しさじゃないから? つまみ食いされるより、分け前作っといた方がマシってだけ!」
言い終えてから少し気まずくなり、目の前に残った半分のサンドイッチをかじる。ターレスは黙ったまま視線を落としていた。もごもご、視線をふらつかせる私は、彼の唇の端に、ほんの少しだけ笑みが浮かんでいたことには気づけないままだった。
「ま、俺の口に合うなら……悪くはないな」
肩越しにそうふてぶてしく言い残して、彼は早朝の廊下へと去っていった。流れるように、あまりにも自然体で、こちらが怒っていたことなんて最初から眼中になかったような態度だ。
「なんなのよ、もう」
誰もいなくなった食堂に、私の声だけが響く。まるで嵐のような人だと感じた。憎たらしいのに憎めない、そんな感情までここに置き去りにされる。そして心のどこかでほんの少しだけ、温かいものが灯るのを感じた。
淹れたてのコーヒーの湯気の向こうに、去っていったターレスの背中がぼんやり浮かんでいる。
私はひとり、改めて鍋に残されたスープを注ぎ直して静かに啜る。
「……はあ。朝から、妙に腹立つ」
だけど、悪い気はしなかった。
「ん〜、こんなもんかな」
1人でパンを焼き、スープを煮て、適当にちぎった葉っぱを挟む。いつもの慣れで、あっという間にサンドイッチが完成した。同時並行で立てているコーヒーの香りが部屋を包み込んでおり、寝起きの体に染みてとても心地よい。
私は盛り付けた皿とマグカップを手に、いつもの席へと腰を下ろす。朝の活動は団員みなバラバラで、誰もいない静かな朝。それが落ち着くというのは、惑星レインにいた頃とあまり変わらない。少し伸びをしてから座って見える世界は、いつもと同じ光景だ。
「おい」
始めにスープへ口をつけていると、突然背後から声が落ちてくる。振り向くより先に、目の前の皿からサンドイッチが1つ宙へ浮いていった。
「え、ちょっと……」
釣られるようにサンドイッチを目で追いかけていくと、背後に立っていた人物は遠慮もなく当然のようにそれに噛み付いた。この船で一番図々しいサイヤ人、筆頭──ターレスその人である。止めに入るよりも早く、彼は出来たてのサンドイッチにかぶりついた。
「なっ──か、返せ! それあたしの朝ごはん!」
咄嗟に手を伸ばすも、当然のようにひらりとかわされる。仰け反って伸ばした手は宙を舞って、その反動で体が後ろへと倒れ込みそうになる。
「あ? 半分残ってるだろ」
「はい!? 半分も減ったんだけど!」
体制を立て直しつつ私が文句を言う傍から、ターレスは1口、2口と食べ進める。こちらの言葉など知ったこっちゃないと、そんな態度をあからさまに示している。
ターレスはふいに眉を寄せると、フンと鼻で笑った。
「味が薄いぞ」
その言葉に、思わず頭に血が上った。勝手に人の朝食をぶん取り、感謝もなく食べている分際で、まさかの味付けに文句まで言ってくるとは。何様なんだと再度振り返りながら、顔に向けて拳を突き出した。
「うっさいなあ! もともと自分用だし、筆頭のためじゃないっつの!」
ターレスはさらりとパンチを避けながら、取り上げたサンドイッチを平らげると勝手にスープにまで手を伸ばしていた。不満たらたらに睨みつけるも、彼が今更罪悪感など抱くわけもなく。
「どんだけ食べるつもりなの、文句言うくらいなら食べないでよ!」
「言ってないだろ、味が薄いって感想を述べただけだ」
「それを世間では文句って言うんだよバカ! もう、そんな言うのになんで食べるんだよ……」
思わずこぼれた言葉に、ターレスは何の反応も見せず、ただ黙々とスープを口に運んでいる。その仕草がまた腹立たしく見え、食器を腕で避けて机に突っ伏してしまう。
「ねぇ聞いてる!? 味が薄いとか言うなら、自分で作ればいいじゃん!」
「飯の時は静かにしろ」
たったそれだけの一言。それで全てを片づけられてしまうのが、なんともターレスらしい。呆れと怒りと、よくわからない気持ちが胸の奥でごちゃ混ぜになる。こちらがどれだけ荒らげても、彼の決定事項には逆らえないのだ。反動的に言い返したくなったのをぐっと堪え、その代わりに盛大なため息を吐き出した。肩を竦め、私はしばらく彼が食事をするのを眺める。
そのうち、ターレスがスープを飲み干し、カップを戻したのを見て私はしぶしぶ言った。
「次また朝かぶったら、あたしの分と……その、筆頭の分も……作ってあげよっか。べ、別に優しさじゃないから? つまみ食いされるより、分け前作っといた方がマシってだけ!」
言い終えてから少し気まずくなり、目の前に残った半分のサンドイッチをかじる。ターレスは黙ったまま視線を落としていた。もごもご、視線をふらつかせる私は、彼の唇の端に、ほんの少しだけ笑みが浮かんでいたことには気づけないままだった。
「ま、俺の口に合うなら……悪くはないな」
肩越しにそうふてぶてしく言い残して、彼は早朝の廊下へと去っていった。流れるように、あまりにも自然体で、こちらが怒っていたことなんて最初から眼中になかったような態度だ。
「なんなのよ、もう」
誰もいなくなった食堂に、私の声だけが響く。まるで嵐のような人だと感じた。憎たらしいのに憎めない、そんな感情までここに置き去りにされる。そして心のどこかでほんの少しだけ、温かいものが灯るのを感じた。
淹れたてのコーヒーの湯気の向こうに、去っていったターレスの背中がぼんやり浮かんでいる。
私はひとり、改めて鍋に残されたスープを注ぎ直して静かに啜る。
「……はあ。朝から、妙に腹立つ」
だけど、悪い気はしなかった。