箒星に乗って
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神精樹の実の収穫が終わったばかりの夜、久々に全員が顔を揃えた艦内ではささやかな打ち上げの準備が進んでいた。
長い任務のあとの静かな一息。食堂の片隅には即席のテーブルが並べられ、持ち寄った飲み物や簡単なつまみが所狭しと置かれている。笑い声と金属音が混じる中、ロゼはひとり甲板の端で何やら真剣な顔をしていた。彼女はしゃがみ込んで、小さな打ち上げ筒に手を伸ばしている。レズンたちに教わった通りに導火線を繋ぎながら、鼻歌交じりに作業を進めていた。
「花火だと?」
浮かれた雰囲気に包まれた食堂に、呆れたようにターレスは眉を顰めた。何事だと周囲を見回していると、大きな筒を両脇に抱えたアモンドが豪快に笑う。
「たまには派手にって話になったんでっせい。どうせなら空にドカンと打ち上げてやろうじゃねえか! って……どうです?」
そうして筒を担ぎ上げる動作に、ターレスは鼻で笑う。
「くだらねえな。が、まあいい、好きにしろ」
一蹴しつつも、珍しくすんなりとお祭り騒ぎを了承するターレスに、団員たちが一斉に顔を見合わせる。目で何かを確認し合うように、こそこそと視線を交わす。
「こういう日も……あるんだな?」
「まあ止められても、今更引き返せないしな」
「だって、あいつもう……」
誰ともなく呟いたその言葉に、場が一瞬静まり、全員がゆっくりとロゼの方を見た。彼女は目を輝かせながら、小さな打ち上げ筒をいそいそと組み立てている。彼女はそんなことに気づきもしないまま、嬉しそうに声を上げた。
「ねえ見てこれ、順番に火つけたら綺麗に連発するんだって! すごくない?」
手にした筒を掲げる姿は、まるで宝物でも見せびらかす子供のようだった。やけに気分が高揚しているロゼの肩越しに作業を覗き込み、作った料理を片手にダイーズが問いかける。
「お前、花火を見たことがないのか?」
「ないない、今日の制圧の時にレズンたちが話してたの聞いてさ〜」
そんな話を小耳に挟みながら、ターレスは窓から空を見渡した。神精樹に喰らい尽くされた星には余計なものは一切なく、障害物に遮られない夜空には無数の星が光っている。いつもなら特別な感情を抱かないこの空が、今夜はどこか懐かしい。
ターレスはふと横を見ると、ロゼの頬にうっすらと黒い煤がついているのを見つける。火薬の匂いに紛れて、その幼さを残す横顔が浮かび上がった。
「ふっ、ガキだな」
ターレスは懐から取り出した布切れで、何の躊躇いもなくロゼの頬を拭った。
「なっ、なに!」
「煤まみれになってるぞ、夢中になりすぎだ」
「い、言ってくれれば自分で……!」
恥ずかしさに頬を染め、彼女はそっぽを向く。その仕草がまた子供のようで、ターレスは口元にごくわずかに笑みを浮かべる。
口を尖らせながら作業を続けること数分、回路が出来上がったのかロゼは手を離し、筒を確認し火種の位置を指差す。
「出来た! ね、筆頭、ここに火つければいいんだよ。順番に火が回って、最後に全部打ち上がるみたい」
ロゼの声に、団員は甲板にわらわらと集まってくる。豪快に並んだ数々の筒を囲んで、徒党らしくニヤニヤと笑いながら視線をターレスに向けている。1番はターレス様が、と催促の囁きも飛び交っていた。
皆で手分けして導線と筒を抱え、ハッチから飛び出て並べていく。
「フン、くだらない花火だったら承知しないぞ」
そう言いながらも、ターレスは手のひらに小さな気弾を作り出し、火種に迷いなく火を灯した。導火線はすぐにチリチリと音を立てて燃え広がり、火花を撒き散らしながら連なっていく。その様子を皆で、拳を握り締めながら見つめる。
静けさを破るように、最初の花火が宙へと駆け上った。
ドン、と軽い爆音。ひらりと舞い咲いた一輪の光に続き、夜空に次々と大輪の花が咲いていく。赤、青、金──鮮やかな光の大輪。星の海に溶けてゆく火花が、静かに宙を照らす。
「わあ……!」
花火が咲く度にロゼは拍手し、時折飛び跳ねる。素直で、無防備で、まっすぐで──まるで子供のように笑う。
「ターレス様、もう1回イッちゃってください!」
「次は俺の番だな!」
「おうおう、勝手に決めるなよ」
そんな団員の騒ぎ声は、ターレスには届いていない。普段の殺伐とした戦闘では、今まで生きてきた過去にはなかった、無邪気さが溢れるロゼの横顔から目が離せずにいた。
「ンダッ、ダー!!」
「ひゅ〜っ! いけいけカカオー!」
普段武器を内蔵しているボディから花火を豪快に打ち上げるカカオに、団員は大はしゃぎしている。ラカセイはそんなカカオを担いで空を飛び回り、四方八方に火花が散る。そんなふざけた様子にも、また団員たちは盛り上がって歓声を上げる。中にはダイーズの手料理をつまみ食いしている者や、こっそり筒を幾つか拝借している者もいる。
「ねえ、筆頭」
はしゃぎながら打ち上げの順番を巡って団員たちが揉める中、ロゼはそっとターレスのマントの端を引っ張る。
ターレスが振り返ると、ロゼは目を細めて笑っていた。先ほどよりもずっと穏やかで、少しだけ照れたような笑顔だった。光の余韻に染まったその瞳が、夜空よりも澄んでいる。
「なんだ」
「楽しいね」
その一言はただの感想のようでいて、不思議なほどターレスの心に届いた。はっとした彼は一瞬返す言葉を探し、ぽつりと呟くような声で言う。
「……お前が笑ってるなら、だいたいは正解なんだろ」
その言葉と共に、再び空に花火が咲く。ターレスの横顔は火花に照らされて、ほんの少し赤く染まっていた。
長い任務のあとの静かな一息。食堂の片隅には即席のテーブルが並べられ、持ち寄った飲み物や簡単なつまみが所狭しと置かれている。笑い声と金属音が混じる中、ロゼはひとり甲板の端で何やら真剣な顔をしていた。彼女はしゃがみ込んで、小さな打ち上げ筒に手を伸ばしている。レズンたちに教わった通りに導火線を繋ぎながら、鼻歌交じりに作業を進めていた。
「花火だと?」
浮かれた雰囲気に包まれた食堂に、呆れたようにターレスは眉を顰めた。何事だと周囲を見回していると、大きな筒を両脇に抱えたアモンドが豪快に笑う。
「たまには派手にって話になったんでっせい。どうせなら空にドカンと打ち上げてやろうじゃねえか! って……どうです?」
そうして筒を担ぎ上げる動作に、ターレスは鼻で笑う。
「くだらねえな。が、まあいい、好きにしろ」
一蹴しつつも、珍しくすんなりとお祭り騒ぎを了承するターレスに、団員たちが一斉に顔を見合わせる。目で何かを確認し合うように、こそこそと視線を交わす。
「こういう日も……あるんだな?」
「まあ止められても、今更引き返せないしな」
「だって、あいつもう……」
誰ともなく呟いたその言葉に、場が一瞬静まり、全員がゆっくりとロゼの方を見た。彼女は目を輝かせながら、小さな打ち上げ筒をいそいそと組み立てている。彼女はそんなことに気づきもしないまま、嬉しそうに声を上げた。
「ねえ見てこれ、順番に火つけたら綺麗に連発するんだって! すごくない?」
手にした筒を掲げる姿は、まるで宝物でも見せびらかす子供のようだった。やけに気分が高揚しているロゼの肩越しに作業を覗き込み、作った料理を片手にダイーズが問いかける。
「お前、花火を見たことがないのか?」
「ないない、今日の制圧の時にレズンたちが話してたの聞いてさ〜」
そんな話を小耳に挟みながら、ターレスは窓から空を見渡した。神精樹に喰らい尽くされた星には余計なものは一切なく、障害物に遮られない夜空には無数の星が光っている。いつもなら特別な感情を抱かないこの空が、今夜はどこか懐かしい。
ターレスはふと横を見ると、ロゼの頬にうっすらと黒い煤がついているのを見つける。火薬の匂いに紛れて、その幼さを残す横顔が浮かび上がった。
「ふっ、ガキだな」
ターレスは懐から取り出した布切れで、何の躊躇いもなくロゼの頬を拭った。
「なっ、なに!」
「煤まみれになってるぞ、夢中になりすぎだ」
「い、言ってくれれば自分で……!」
恥ずかしさに頬を染め、彼女はそっぽを向く。その仕草がまた子供のようで、ターレスは口元にごくわずかに笑みを浮かべる。
口を尖らせながら作業を続けること数分、回路が出来上がったのかロゼは手を離し、筒を確認し火種の位置を指差す。
「出来た! ね、筆頭、ここに火つければいいんだよ。順番に火が回って、最後に全部打ち上がるみたい」
ロゼの声に、団員は甲板にわらわらと集まってくる。豪快に並んだ数々の筒を囲んで、徒党らしくニヤニヤと笑いながら視線をターレスに向けている。1番はターレス様が、と催促の囁きも飛び交っていた。
皆で手分けして導線と筒を抱え、ハッチから飛び出て並べていく。
「フン、くだらない花火だったら承知しないぞ」
そう言いながらも、ターレスは手のひらに小さな気弾を作り出し、火種に迷いなく火を灯した。導火線はすぐにチリチリと音を立てて燃え広がり、火花を撒き散らしながら連なっていく。その様子を皆で、拳を握り締めながら見つめる。
静けさを破るように、最初の花火が宙へと駆け上った。
ドン、と軽い爆音。ひらりと舞い咲いた一輪の光に続き、夜空に次々と大輪の花が咲いていく。赤、青、金──鮮やかな光の大輪。星の海に溶けてゆく火花が、静かに宙を照らす。
「わあ……!」
花火が咲く度にロゼは拍手し、時折飛び跳ねる。素直で、無防備で、まっすぐで──まるで子供のように笑う。
「ターレス様、もう1回イッちゃってください!」
「次は俺の番だな!」
「おうおう、勝手に決めるなよ」
そんな団員の騒ぎ声は、ターレスには届いていない。普段の殺伐とした戦闘では、今まで生きてきた過去にはなかった、無邪気さが溢れるロゼの横顔から目が離せずにいた。
「ンダッ、ダー!!」
「ひゅ〜っ! いけいけカカオー!」
普段武器を内蔵しているボディから花火を豪快に打ち上げるカカオに、団員は大はしゃぎしている。ラカセイはそんなカカオを担いで空を飛び回り、四方八方に火花が散る。そんなふざけた様子にも、また団員たちは盛り上がって歓声を上げる。中にはダイーズの手料理をつまみ食いしている者や、こっそり筒を幾つか拝借している者もいる。
「ねえ、筆頭」
はしゃぎながら打ち上げの順番を巡って団員たちが揉める中、ロゼはそっとターレスのマントの端を引っ張る。
ターレスが振り返ると、ロゼは目を細めて笑っていた。先ほどよりもずっと穏やかで、少しだけ照れたような笑顔だった。光の余韻に染まったその瞳が、夜空よりも澄んでいる。
「なんだ」
「楽しいね」
その一言はただの感想のようでいて、不思議なほどターレスの心に届いた。はっとした彼は一瞬返す言葉を探し、ぽつりと呟くような声で言う。
「……お前が笑ってるなら、だいたいは正解なんだろ」
その言葉と共に、再び空に花火が咲く。ターレスの横顔は火花に照らされて、ほんの少し赤く染まっていた。