箒星に乗って
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神精樹の種を蒔いた星は、数時間のうちにすっかり枯れた大地へと変貌した。星へと深く絡みつき、土壌を喰いつくす神精樹の根。生命を貪り尽くした実の成りは上々。手分けして空を飛び回り、今しがた全ての実の回収が終わった。
団員たちは手応えのある戦いができたようで、ひとまずは満足そうにしていた。宇宙船までの帰路へつきながら、みなで談笑に花を咲かせている。到着してからもバラつきはするものの、しばらく駄べっている者ばかりである。
「今日のダイーズさ、ほんと王子様! だったねぇ」
俺が制御室まで向かう廊下を歩く間、前方ではロゼとダイーズが横並びに歩いている。先程の延長線で、お互いの目的地に着くまで喋り続けているらしい。
「フン、当たり前だ」
ダイーズはロゼに褒められ、王子様という言葉に頷きながら口角を上げる。恐らく今日の戦闘中、奇襲をかけられたロゼを素早く援助したことを話しているのだろう。『まぁ元、だけどね〜』なんてにししと笑うロゼに、せっかくの褒め言葉も台無しだと彼女の背中を叩くダイーズ。
大した意味のない雑談。戦闘でも任務でもない、くだらない日常の一コマ。彼らの後ろ姿を見ながら、馬鹿馬鹿しい会話が耳に入ってくる。それが酷く、気に障るのだ。
あいつが、あのふざけたピアス野郎と笑っている。くだらない戦闘の話でじゃれ合っている。たわいもない会話に、彼女がくすくすと笑いを漏らす。
その表情が、俺の知らないもののように感じた。戦いの中で見せる、牙を剥くような眼じゃない。俺が怒鳴りつけたときの反発でもない。夜空を眺めている時の、恍惚とした表情でもない。
なんだ、その顔は。
「……ロゼ」
思わず、彼女の名前を口にしていた。だがその声は、自分でも違和感を抱くほどやけに乾いていた。目に力が篭ってしまうが、響いた俺の声はもう取り返しがつかない。
彼女は俺の声にすぐ反応し、ダイーズの肩越しにこちらを振り返って見た。
「ターレス?」
その瞬間、あの猫のような目が真っ直ぐに俺を射抜いた。悪びれた様子などない。ただ純粋に『何か用?』と問いかけているような目。だがそれが、余計に癪に障るのだった。
(何も思わないのか、俺がここにいるというのに)
隣にいるダイーズは、普段より厳しい目つきをした俺を見て生唾を飲んでいる。
「ついてこい、トレーニングルームだ」
「えっ、今? 別に予定とかないけど、」
「さっさとしろ」
要件だけ告げると、俺はすぐに背を向ける。〝あの時間〟が長引けば長引くほど、俺の中の何かがざわめいて仕方がなかった。彼女の戸惑う声も無視して、踵を返して歩き出す。
そうして歩きながら、気づいていた。この感情は理屈ではない。今この行動も、戦力を管理する団長としての責務でもない。
ロゼが他の誰かと笑っていることが、気に食わない。
俺の選んだ戦士が。
俺の気まぐれで拾ったはずの、あのサイヤ人の女が。
俺以外の誰かと、俺の知らない顔をしている。
そのことの何が俺を荒ませているのか、分からないことに対しても気に食わなかった。ただロゼには、俺の隣に立ち、共に戦うパートナーのような存在であってほしかった。
──彼女は俺の隣に立つべきだ。
それはただ戦う上での、強さとして、サイヤ人の仲間としての意味を持つはずだった。だが今、それが少しずつそれ以上の意味を持ち始めている。
パタパタと廊下を走るロゼの足音が、少し後ろから追いついてくる。それが妙に心地よく感じて、波立つ感情が何故か和らぐのを感じた。
「ねえ、なんか怒ってる?」
俺は返事をしなかった。当然怒りが湧いている訳ではない。ただ──気に食わなかった。それだけだった。
(お前の隣に、俺以外の誰かがいることが)
そんなくだらない言葉は飲み込む。ふと横目に見た窓には、あからさまに不機嫌な表情を浮かべた自分が映っていた。
「さっきのじゃあ憂さ晴らしが足りなかっただけさ」
それを見てようやく俺は、強く握りしめていた拳を緩め解いた。
団員たちは手応えのある戦いができたようで、ひとまずは満足そうにしていた。宇宙船までの帰路へつきながら、みなで談笑に花を咲かせている。到着してからもバラつきはするものの、しばらく駄べっている者ばかりである。
「今日のダイーズさ、ほんと王子様! だったねぇ」
俺が制御室まで向かう廊下を歩く間、前方ではロゼとダイーズが横並びに歩いている。先程の延長線で、お互いの目的地に着くまで喋り続けているらしい。
「フン、当たり前だ」
ダイーズはロゼに褒められ、王子様という言葉に頷きながら口角を上げる。恐らく今日の戦闘中、奇襲をかけられたロゼを素早く援助したことを話しているのだろう。『まぁ元、だけどね〜』なんてにししと笑うロゼに、せっかくの褒め言葉も台無しだと彼女の背中を叩くダイーズ。
大した意味のない雑談。戦闘でも任務でもない、くだらない日常の一コマ。彼らの後ろ姿を見ながら、馬鹿馬鹿しい会話が耳に入ってくる。それが酷く、気に障るのだ。
あいつが、あのふざけたピアス野郎と笑っている。くだらない戦闘の話でじゃれ合っている。たわいもない会話に、彼女がくすくすと笑いを漏らす。
その表情が、俺の知らないもののように感じた。戦いの中で見せる、牙を剥くような眼じゃない。俺が怒鳴りつけたときの反発でもない。夜空を眺めている時の、恍惚とした表情でもない。
なんだ、その顔は。
「……ロゼ」
思わず、彼女の名前を口にしていた。だがその声は、自分でも違和感を抱くほどやけに乾いていた。目に力が篭ってしまうが、響いた俺の声はもう取り返しがつかない。
彼女は俺の声にすぐ反応し、ダイーズの肩越しにこちらを振り返って見た。
「ターレス?」
その瞬間、あの猫のような目が真っ直ぐに俺を射抜いた。悪びれた様子などない。ただ純粋に『何か用?』と問いかけているような目。だがそれが、余計に癪に障るのだった。
(何も思わないのか、俺がここにいるというのに)
隣にいるダイーズは、普段より厳しい目つきをした俺を見て生唾を飲んでいる。
「ついてこい、トレーニングルームだ」
「えっ、今? 別に予定とかないけど、」
「さっさとしろ」
要件だけ告げると、俺はすぐに背を向ける。〝あの時間〟が長引けば長引くほど、俺の中の何かがざわめいて仕方がなかった。彼女の戸惑う声も無視して、踵を返して歩き出す。
そうして歩きながら、気づいていた。この感情は理屈ではない。今この行動も、戦力を管理する団長としての責務でもない。
ロゼが他の誰かと笑っていることが、気に食わない。
俺の選んだ戦士が。
俺の気まぐれで拾ったはずの、あのサイヤ人の女が。
俺以外の誰かと、俺の知らない顔をしている。
そのことの何が俺を荒ませているのか、分からないことに対しても気に食わなかった。ただロゼには、俺の隣に立ち、共に戦うパートナーのような存在であってほしかった。
──彼女は俺の隣に立つべきだ。
それはただ戦う上での、強さとして、サイヤ人の仲間としての意味を持つはずだった。だが今、それが少しずつそれ以上の意味を持ち始めている。
パタパタと廊下を走るロゼの足音が、少し後ろから追いついてくる。それが妙に心地よく感じて、波立つ感情が何故か和らぐのを感じた。
「ねえ、なんか怒ってる?」
俺は返事をしなかった。当然怒りが湧いている訳ではない。ただ──気に食わなかった。それだけだった。
(お前の隣に、俺以外の誰かがいることが)
そんなくだらない言葉は飲み込む。ふと横目に見た窓には、あからさまに不機嫌な表情を浮かべた自分が映っていた。
「さっきのじゃあ憂さ晴らしが足りなかっただけさ」
それを見てようやく俺は、強く握りしめていた拳を緩め解いた。