箒星に乗って
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戦闘をすれば怪我はつきものだ。打撲、切り傷、火傷、骨折、脱臼──軍団に入ってからというもの、どれも体験したことがあると言って過言ではないだろう。中には目玉が破裂したり、腕が取れかけたりしたような者だっている。
クラッシャー軍団には、超技術を扱えるビーンズ人が2人いる。どちらも有能なエンジニアで、フリーザ軍が使用していたメディカルマシーンを改良した上で模倣品を作ることが出来た。治癒力を高める液体に浸ることで傷を癒す、戦闘とは縁の切れないクラッシャー軍団の必需品である。これさえあればどんな戦闘だって怖いものなしだ。
しかしそれが今、不運にも故障していたのだ。
「おいレズンまだかよ、早くしやがれでっせい!」
「んなこた分かってる! 材料を今ラカセイとカカオに調達させてるから待っていろ」
ドタバタ、軍団内は大騒ぎである。
理由は単純、怪我人がいるからだ。正確には軽傷だったものが傷口感染が起きてしまい、すぐにでも処置が必要な状態になっているからである。
事の発端は、セグラン星を侵略したことから始まった。弱さ故になかなか出番のない私が、今回は戦闘に加われとターレスに言われたのである。敵もそう強くはなく、戦闘要員も少なかったため、比較的軽傷で楽に戦闘は済ませることが出来た。少々物足りないくらいには余裕のある戦闘だったと思う。
が、セグラン星は非常に寒い星で、神精樹が熟すまで滞在していたところ、間抜けにも風邪を引いてしまったのである。その際、軽傷だからとメディカルマシーンに入るのを怠っていたために、完治していない傷から傷口感染を起こしてしまったのだ。高熱も出てしまい、そこそこに重症である。
いざアモンドが私をメディカルマシーンに放り込もうとすると、今度は機械の不具合が見つかった。機械内で溶液が合成されるはずが、その工程が作動しないのだ。開発者に当たるレズンとラカセイが早速修理に当たっているが、どうやら資材が不足しているようで、慌てて調達に繰り出している。
「さっむ……ああ、ねえ、そのマントちょうだい……」
「アホ、こんなので暖が取れるか。ダイーズ、温めてやれ」
「はっ。ロゼ、電気アンマを持ってきてやるから待っていろよ」
医療室で毛布を数枚被り、なお私は寒さに震えていた。とにかく温もりが欲しい私は、目についたターレスのマントをグイグイと引っ張るが軽くいなされる。怪訝そうな彼の瞳に残念な気分になった。ダイーズの声に頷いて待ち遠しくなる一方で、ズキズキと痛む足へと意識が引き込まれる。
ラカセイ曰く、感染した影響で私の傷口は膿んでしまっているらしい。溢れる滲出液を抑えるため、カカオが何度もガーゼと包帯を交換してくれた。ターレスも、私の体調が悪化してからはしばらく傍にいてくれている。こんな状況ではあるが、自分の為に手を尽くしてくれる仲間の存在にとても安心感を得られ、幸せだなと思った。
ダイーズが電気アンマを取りに行くまでの間、医療室には私とターレスとの二人きりとなる。何となく無言でいるのは歯痒かったため、ぽつりと声をかけてみる。
「あのさ……ごめん、迷惑かけて」
と言っても何か振れる話題があるわけでもなく、ほんの少しだけ心の隅にある罪悪感を吐き出してみる。そもそも私がちゃんとメディカルマシーンを使っていれば、こんな大騒ぎにはなっていなかったのだ。面倒臭がりな性格が嫌な形で見えたな、と自分に軽く失望した。
「はっ、全くだな。だがアイツらもアイツらだ、こんな状況でメディカルマシーンの故障なんざ、最悪の場合誰か死んでたからな。まァ、いい機会だったろ」
けらりと乾いた笑いを零して、ターレスは肩を竦める。そうしてサイドテーブルに置かれたチェイサーの水をコップに注いで、その傍に銀色のシートを置いた。首だけでそちらを注視すると、どうやらそれは錠剤の入った包装シートのようだった。
「解熱剤だ、飲め……と言いたいが。空腹で入れても仕方ないな」
なるほど、薬を渡してくれたのか。そう思っていると、ターレスはそう言い残して部屋から出て行ってしまった。全員が私のために動いてくれていることは承知しているが、ポツンとひとり部屋に残るとどことなく寂しいものだ。さっきまでの騒がしさを恋しく思いながら、口を尖らせていそいそと布団を被り直す。
「早く帰ってきてね〜……」
* * *
しばらくして、扉の向こうから微かに食べ物の匂いが漂ってきた。眠気でうつらうつらとしていた私は、少しずつ目を開ける。美味しそうでいて、優しげなその匂いに思わずお腹が鳴った。
ぴたりと足音が止まり、重たいドアが開く。そうして戻ってきたターレスの片手にあるトレイの上には、湯気の立つ何かが置かれている。目をぱちくりとさせているとそれをサイドテーブルに置き、彼は一言ぼそりと呟いた。
「熱いうちに食え」
トレイの上には、金属製の深皿に煮物のような料理が装われていた。正確には、少しとろみのある雑炊に似た料理だ。湯気と共に漂う出汁の匂いは、美味しさだけではなく不思議と懐かしさも感じる。
「これ……作ってくれたの?」
「まあな。冷蔵庫の余りモンだが」
まじまじと見つめながら尋ねると、淡々と説明しながらターレスはスプーンを渡してくれる。少し触れ合った指が少し温かい。私の目がまん丸になってるのが分かったのか、ターレスはふいと顔を背けた。
「……食欲がないなら無理に食わなくてもいい」
「えっ? い、いやいや!」
はっとして思い切り首を横に振る。そうして早速ひとくち口に運ぶと、ふわっと広がる出汁の香りと、ほんのりとした塩気がとても優しく広がった。野菜の甘みも滲んで、飲み込むと体の芯から温もりが広がっていくようだった。
「ん、美味しい。こういうの好きだな、ありがと」
顔をくしゃっと綻ばせてお礼を言うと、ターレスはそうかよ、と鼻で笑って椅子に腰掛けた。何処かよそよそしく感じる様子が少しおかしくて、でもそれがまた嬉しくて、胸の奥がふわりと温かくなっていく。
食べ終えた頃には、さっきまでの悪寒も幾分と和らいでいた。置かれた薬を水で流し込み、改めて布団を被って横になる。ターレスはそんな私の上に、そっと銀色の保温ブランケットをかけ直してくれた。
「……なによ、優しいじゃん」
「いいから、いいコなら黙って寝てろ」
口調こそ冷たいものの、動作はとても優しい。離れ際に軽く私の頬を摘む彼の手が、暖かくて心地よかった。
そこへ、ようやくダイーズが電気アンマを抱えて戻ってきた。
「遅くなった、悪い……お、寝る準備はすっかり出来てるみたいだな?」
「ふふ……ねえダイーズ、こんなに幸せなら、また病気になってもいいかも……」
布団の下に入れ込まれた、既にスイッチが入り暖かい電気アンマをぎゅっと抱きしめてぽつりと零す。それを聞いたダイーズと、丁度戻ってきたアモンドや出入り口で待っていたレズンも、みなずっこけそうな顔をしていた。
「おいおい、冗談でも言うんじゃねえよ。お前はうるさいくらいが丁度いいでっせい」
「ホントだぜ、お前以外に誰がボケるんだよ?」
誰ともなく呟いたその言葉に、私はへらっと笑って、ゆっくりと目を閉じた。ターレスの煮込みの余韻と、仲間の笑い声の温もりをぎゅっと抱きしめながら、深い眠りの中へと落ちていく。健康は自負しているが、こうして優しさに包まれるなら、たまにはこんな日も悪くないと思った。
現実か夢か、その日は明るく、幸せな夢を見た気がした。
クラッシャー軍団には、超技術を扱えるビーンズ人が2人いる。どちらも有能なエンジニアで、フリーザ軍が使用していたメディカルマシーンを改良した上で模倣品を作ることが出来た。治癒力を高める液体に浸ることで傷を癒す、戦闘とは縁の切れないクラッシャー軍団の必需品である。これさえあればどんな戦闘だって怖いものなしだ。
しかしそれが今、不運にも故障していたのだ。
「おいレズンまだかよ、早くしやがれでっせい!」
「んなこた分かってる! 材料を今ラカセイとカカオに調達させてるから待っていろ」
ドタバタ、軍団内は大騒ぎである。
理由は単純、怪我人がいるからだ。正確には軽傷だったものが傷口感染が起きてしまい、すぐにでも処置が必要な状態になっているからである。
事の発端は、セグラン星を侵略したことから始まった。弱さ故になかなか出番のない私が、今回は戦闘に加われとターレスに言われたのである。敵もそう強くはなく、戦闘要員も少なかったため、比較的軽傷で楽に戦闘は済ませることが出来た。少々物足りないくらいには余裕のある戦闘だったと思う。
が、セグラン星は非常に寒い星で、神精樹が熟すまで滞在していたところ、間抜けにも風邪を引いてしまったのである。その際、軽傷だからとメディカルマシーンに入るのを怠っていたために、完治していない傷から傷口感染を起こしてしまったのだ。高熱も出てしまい、そこそこに重症である。
いざアモンドが私をメディカルマシーンに放り込もうとすると、今度は機械の不具合が見つかった。機械内で溶液が合成されるはずが、その工程が作動しないのだ。開発者に当たるレズンとラカセイが早速修理に当たっているが、どうやら資材が不足しているようで、慌てて調達に繰り出している。
「さっむ……ああ、ねえ、そのマントちょうだい……」
「アホ、こんなので暖が取れるか。ダイーズ、温めてやれ」
「はっ。ロゼ、電気アンマを持ってきてやるから待っていろよ」
医療室で毛布を数枚被り、なお私は寒さに震えていた。とにかく温もりが欲しい私は、目についたターレスのマントをグイグイと引っ張るが軽くいなされる。怪訝そうな彼の瞳に残念な気分になった。ダイーズの声に頷いて待ち遠しくなる一方で、ズキズキと痛む足へと意識が引き込まれる。
ラカセイ曰く、感染した影響で私の傷口は膿んでしまっているらしい。溢れる滲出液を抑えるため、カカオが何度もガーゼと包帯を交換してくれた。ターレスも、私の体調が悪化してからはしばらく傍にいてくれている。こんな状況ではあるが、自分の為に手を尽くしてくれる仲間の存在にとても安心感を得られ、幸せだなと思った。
ダイーズが電気アンマを取りに行くまでの間、医療室には私とターレスとの二人きりとなる。何となく無言でいるのは歯痒かったため、ぽつりと声をかけてみる。
「あのさ……ごめん、迷惑かけて」
と言っても何か振れる話題があるわけでもなく、ほんの少しだけ心の隅にある罪悪感を吐き出してみる。そもそも私がちゃんとメディカルマシーンを使っていれば、こんな大騒ぎにはなっていなかったのだ。面倒臭がりな性格が嫌な形で見えたな、と自分に軽く失望した。
「はっ、全くだな。だがアイツらもアイツらだ、こんな状況でメディカルマシーンの故障なんざ、最悪の場合誰か死んでたからな。まァ、いい機会だったろ」
けらりと乾いた笑いを零して、ターレスは肩を竦める。そうしてサイドテーブルに置かれたチェイサーの水をコップに注いで、その傍に銀色のシートを置いた。首だけでそちらを注視すると、どうやらそれは錠剤の入った包装シートのようだった。
「解熱剤だ、飲め……と言いたいが。空腹で入れても仕方ないな」
なるほど、薬を渡してくれたのか。そう思っていると、ターレスはそう言い残して部屋から出て行ってしまった。全員が私のために動いてくれていることは承知しているが、ポツンとひとり部屋に残るとどことなく寂しいものだ。さっきまでの騒がしさを恋しく思いながら、口を尖らせていそいそと布団を被り直す。
「早く帰ってきてね〜……」
* * *
しばらくして、扉の向こうから微かに食べ物の匂いが漂ってきた。眠気でうつらうつらとしていた私は、少しずつ目を開ける。美味しそうでいて、優しげなその匂いに思わずお腹が鳴った。
ぴたりと足音が止まり、重たいドアが開く。そうして戻ってきたターレスの片手にあるトレイの上には、湯気の立つ何かが置かれている。目をぱちくりとさせているとそれをサイドテーブルに置き、彼は一言ぼそりと呟いた。
「熱いうちに食え」
トレイの上には、金属製の深皿に煮物のような料理が装われていた。正確には、少しとろみのある雑炊に似た料理だ。湯気と共に漂う出汁の匂いは、美味しさだけではなく不思議と懐かしさも感じる。
「これ……作ってくれたの?」
「まあな。冷蔵庫の余りモンだが」
まじまじと見つめながら尋ねると、淡々と説明しながらターレスはスプーンを渡してくれる。少し触れ合った指が少し温かい。私の目がまん丸になってるのが分かったのか、ターレスはふいと顔を背けた。
「……食欲がないなら無理に食わなくてもいい」
「えっ? い、いやいや!」
はっとして思い切り首を横に振る。そうして早速ひとくち口に運ぶと、ふわっと広がる出汁の香りと、ほんのりとした塩気がとても優しく広がった。野菜の甘みも滲んで、飲み込むと体の芯から温もりが広がっていくようだった。
「ん、美味しい。こういうの好きだな、ありがと」
顔をくしゃっと綻ばせてお礼を言うと、ターレスはそうかよ、と鼻で笑って椅子に腰掛けた。何処かよそよそしく感じる様子が少しおかしくて、でもそれがまた嬉しくて、胸の奥がふわりと温かくなっていく。
食べ終えた頃には、さっきまでの悪寒も幾分と和らいでいた。置かれた薬を水で流し込み、改めて布団を被って横になる。ターレスはそんな私の上に、そっと銀色の保温ブランケットをかけ直してくれた。
「……なによ、優しいじゃん」
「いいから、いいコなら黙って寝てろ」
口調こそ冷たいものの、動作はとても優しい。離れ際に軽く私の頬を摘む彼の手が、暖かくて心地よかった。
そこへ、ようやくダイーズが電気アンマを抱えて戻ってきた。
「遅くなった、悪い……お、寝る準備はすっかり出来てるみたいだな?」
「ふふ……ねえダイーズ、こんなに幸せなら、また病気になってもいいかも……」
布団の下に入れ込まれた、既にスイッチが入り暖かい電気アンマをぎゅっと抱きしめてぽつりと零す。それを聞いたダイーズと、丁度戻ってきたアモンドや出入り口で待っていたレズンも、みなずっこけそうな顔をしていた。
「おいおい、冗談でも言うんじゃねえよ。お前はうるさいくらいが丁度いいでっせい」
「ホントだぜ、お前以外に誰がボケるんだよ?」
誰ともなく呟いたその言葉に、私はへらっと笑って、ゆっくりと目を閉じた。ターレスの煮込みの余韻と、仲間の笑い声の温もりをぎゅっと抱きしめながら、深い眠りの中へと落ちていく。健康は自負しているが、こうして優しさに包まれるなら、たまにはこんな日も悪くないと思った。
現実か夢か、その日は明るく、幸せな夢を見た気がした。
9/9ページ