箒星に乗って
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惑星サグド。
やや重力の強い、沼地の星。 アモンドによる偵察機派遣の情報によると、文明はあまり発達しておらず、生物反応もあまり多くはない。夕方か夜しかなく、やや霧がかっているが空気汚染はない。土壌はよく、神精樹が育つための条件は揃っているとのことだった。元いた場所から、宇宙船で大体1週間ほどで到着する座標にあり、クラッシャー軍団は惑星サグドへと向かった。
到着するや否や地に足をつけるも、粘着質な泥の感覚が足裏から伝わってきて、俺はあからさまに不快な表情を浮かべた。
「ぜーんぜん神精樹育ちそうにないけど、ねぇ?」
「バーカ、アモンドの情報が間違ってたことはないぞ。泥は栄養満点なんだぜ」
「お前の星だってこんなドロドロだったが俺たち来ただろ、同じようなもんだ」
地面を突っつきながらボヤくロゼに、レズンとラカセイが絡んでいる。いつもは留守番させているロゼだが、アモンドの情報を元に今回は戦闘員に加えることにした。
正直、今のままではロゼは一生お蔵入りメンバーになってしまうほど、戦力にはならない。何故そんな奴を団員にしたのか、他のメンバーたちは何も問わない。何より彼女が『滅びた惑星ベジータの、数少ないサイヤ人の生き残り』ということ、『団長であるターレスと同族』である事実が全てを物語っている。
とにかく、折角彼女も誇り高き戦闘民族なのだ。実戦こそ一番成長できる上、自分を窮地に立たせることで、より彼女を鍛えさせてやろうと今回の判断に至った。
かくいう当人は、戦う気があるのかなんなのか、とても呑気に過ごしている。
「ターレス様、この辺りで植えまっせい」
ロゼの様子を窺っているところで、アモンドが神精樹の種を持ってくる。彼の指差す方向を確認してから、適当にしろ、と返事をした。
「了解でっせい。おいお前ら、離れてろ」
近くにいた団員に一言かけると、アモンドは構えをとる。ぐっ、と彼の手が掲げられると、一瞬にして地に穴が開き、ゴゴゴゴと騒音を立てながら大きな亀裂が入った。その亀裂へ神精樹の種を放り投げる。奈落の底へと落ちていく種は、この星へ解けないように絡みついて発芽し、根付いていく。
「さぁて。神精樹が育つまで偵察でもするか」
俺の一声を皮切りに、全員が上空へと向かった。スカウターが徐々に生命反応を示し、異変を察知したサグドの者たちが向かってきているようだ。表示されている戦闘力はせいぜい2000程度だが、ロゼにとっては強敵だろう。事前に彼女以外の団員には耳打ちしているため、今回は強敵相手に一人で闘ってもらう予定だ。この程度であればわざわざ俺の出る幕ではないが、いざという時に彼女を連れ去れるよう、俺も宇宙船から出てきてやっている。
「お前、ターレス様に迷惑かけるなよ」
呑気そうなロゼに、ダイーズが険しい表情で迫る。分かってるよ、なんて彼女は答えているが、果たしてどれほどまで対応が出来るのか。煮え切らない様子だが、ダイーズは一度俺と目を合わせるとこくりと頷き、自分の持ち場へと戻っていった。
「ダイーズってば心配性。にしても、あははっ、筆頭と戦う日が来るなんてな〜」
「様子見だけだ、あの程度の戦闘力じゃあ俺の相手じゃない」
絶句して開いた口の塞がらない彼女を端に、彼女から一定の距離を置く。そうしているうちに敵は複数接近していた。自分の周囲に来た敵のみ軽くいなして地面へ叩きつけつつ、じっと彼女の戦況を眺めることにする。
俺が離れたことに慌てふためいているようで、数も多い敵の攻撃に守備体勢を取ることに必死のようだ。相変わらず克服もしていない弱点の尻尾は、腰に巻く癖がつききっておらず無防備に揺れている。文明が発達していないだけ、武器もちゃちな鉄製と木製だが、彼女にとっては十分脅威となるだろう。
(もっと追い込まれろ、そしてお前の力を見せてみろ)
気弾を駆使しながら、どうにかロゼは身を翻して攻撃を躱しているが、敵の数も多く劣勢の状況には変わらない。そこへふと彼女の背後に敵が回り込んだ。
「バカめっ、これで身動きできまい!」
そうして敵は、無防備なロゼの尻尾をがっちりと掴んだ。恐らく弱点であることを見抜いたのではなく、彼女の動きを制限させる為にとった行動だろう。弱点に触れられた彼女の身体は大きく跳ねるが、瞬間俺の予想とは異なる動きを見せた。
「ッ、でやあああああ!!!!」
目前の敵の攻撃を避けると同時に、ロゼは体を縮めると背後の敵へローキックをかましたのだ。予想外の敵の動きに相手もまともに彼女の蹴りを喰らい、更に追加で飛んできた気弾にかなりダメージは受けたようだ。グラグラと空中で怯んでいる。
「ほう……多少は鍛錬できているようだな」
日頃からロゼが団員間でトレーニングを積んでいることは知っているし、俺もそれを命じており、時折だが相手をしている。戦闘力の数値だけでは微々たる成長ではあったが、彼女なりに地道に結果が残せるようになっていることを嬉しく思った。
感嘆しながら部下の成長を喜ばしく思う反面で、やはりどうしても物足りなさは消えなかった。
「はっ……!」
ほんの一瞬でも気を抜けば囲まれてしまう。今のロゼは多勢に無勢であり、一対一では何とか持ちこたえられても、複数人を相手にするにはまだ実力不足だった。背後から放たれた銃弾は彼女の体の側面を直撃し、身につけたスカウターがパリンと割れハラハラと破片が落ちていく。それでも体勢を立て直すロゼだったが、容赦のない蹴りが彼女を襲う。
俺はその様子をしばらく観察していたが、いよいよロゼが意識を手放しそうになった頃合で一気に間を詰めた。
「さァて、お遊びはおしまいだ」
身につけたマントで彼女をくるみ片腕に抱く。ニタリとほくそ笑んだ瞬間、周囲は眩い光に包まれた。ロゼが気づいた頃には周りに人気はなく、ただ濃い霧の中で粉塵が舞っているだけだった。
* * *
「まァ、初めてにしては上出来だったぜ。偉いじゃねえか」
のんびりと宇宙船までの帰路につきながら、鼻歌でも歌いそうな程上機嫌な様子で俺は言った。若干ぼんやりとしているロゼは、大人しく腕に抱かれたままじっと彼を見上げている。
「やっぱりさ、まだまだ……だよね。すごいや、筆頭ってば、かっこいいなぁ」
傷まみれのロゼは負けたことへの悔しさなど微塵も出さずにいる。ぐりぐりと俺の胸元へと擦り寄りながら、へらりと嬉しそうに笑っていた。その姿はまるで、戦隊ヒーローを見た少年の眼差しそのものだ。その様子がどうも気に食わないのか何なのか、煮え切らない自分の感情にグッと眉を寄せる。
「けっ、憧れで終わらせるんじゃないぞ。そのうちお前には俺の隣に立ってもらわないと困るんでな」
そう言うもロゼにちゃんと伝わっているのか、彼女は告白じゃん、とケラケラ笑っている。やはり呑気な彼女にゲンナリしながら、宇宙船まで着くと彼女を下ろしてマントを取っ払う。
「ったく、傷まみれじゃねえか。あの程度で負傷するなんざ情けねえな」
「なにさ、失礼だな! 分かってて戦わせたくせに!」
地に足をつけて立つことは出来るが、若干ふらつきのある様子に肩を竦めて呆れを露わにする。真っ白な肌はすす汚れ、赤く滲む切り傷やすり傷、痛々しく咲く打撲痕があちこちに残されている。触れると柔らかい、自分とは真逆の真っ白な肌がここまで傷んでいるのを見て、俺は何故か不愉快になった。
(俺たちは戦いを生業とするサイヤ人だ……傷くらいできて当然だろ)
そう頭で考えても、何故かイライラは止まらない。理由のない理不尽な怒りにこれ以上付き合っていられない、と俺はまた改めてロゼを片腕で抱え肩に担いだ。状況を呑み込めない彼女はぎゃあぎゃあと四肢をばたつかせて暴れているが、気にも留めず治療室へと足を運ぶ。
「いでっ、ちょっともう少し優しくしてよ。怪我人なんだけど」
到着すると、メディカルマシーンの中へと彼女を放り込んだ。文句を垂れる彼女を他所に、スカウターでレズンへと通信を送る。
「帰ってこい。ロゼの治療をしろ」
要件だけ伝えると、部下の返事を待たずに通信を切る。計測パッドを貼り付けるため、彼女の服を脱がして装着しようと試みるが、不意に手を止めた。
相手が女性だからと、裸体を見ることに躊躇したからではない。ふと脳内で、この戦闘服の下がどれほど痛々しい傷が潜んでいるかと想像してしまったからだ。それがどれだけ俺を困惑させたかなんて計り知れない。今までサイヤ人として、気ままに、冷酷に、闘う楽しさだけを考えて生物を殺めてきた俺が、何故こんなことを今になって思案しているのだろうか。腕が取れそうなほど負傷したことも数知れず、そんな傷を相手に負わせることなど全くもってためらいはない。
なのにどうしてロゼが傷ついているのを見て、こんなにも不快になってしまうのだろうか。傷がついたということは、それだけ強くなる可能性を秘めていると言える。喜ばしいことだというのに、反して感情はぐらついていくばかりだった。
「……ちっ、ここまで運んでやったんだ。あとは自分でやりやがれ」
「えっ? ち、ちょっと」
彼女に対してではなく、理解しがたい自分への感情に舌打ちをする。不思議そうに俺を引き留めようとする彼女の声を無視して、踵を返して治療室を後にする。憤りの収まらない自分に、俺は必死に『弱いアイツが悪い』と言い聞かせていた。
勢いのまま自室へと戻ってくると、どかっとソファへ腰掛けぐしゃりと前髪を掻き上げる。大きく息を吐き出しながらテーブルへと目を向けると、カカオが掃除の際に生けたであろう、どこかの星の真っ白な花が凛々しく咲いていた。それがまるでロゼの透き通る白い肌を彷彿とさせる。
「……俺は花なんて愛でる趣味はない」
彼女の肌を蝕む傷と痣を再び思い返しながら、俺はスカウターを外して放り投げる。ソファへ足を乗せ体を伸ばすと、部下が帰ってくるまでの間、俺は仮眠を取ることにした。目を閉じた瞼の裏に過る彼女の傷跡が、俺の眉間のしわをより険しいものにさせた。
やや重力の強い、沼地の星。 アモンドによる偵察機派遣の情報によると、文明はあまり発達しておらず、生物反応もあまり多くはない。夕方か夜しかなく、やや霧がかっているが空気汚染はない。土壌はよく、神精樹が育つための条件は揃っているとのことだった。元いた場所から、宇宙船で大体1週間ほどで到着する座標にあり、クラッシャー軍団は惑星サグドへと向かった。
到着するや否や地に足をつけるも、粘着質な泥の感覚が足裏から伝わってきて、俺はあからさまに不快な表情を浮かべた。
「ぜーんぜん神精樹育ちそうにないけど、ねぇ?」
「バーカ、アモンドの情報が間違ってたことはないぞ。泥は栄養満点なんだぜ」
「お前の星だってこんなドロドロだったが俺たち来ただろ、同じようなもんだ」
地面を突っつきながらボヤくロゼに、レズンとラカセイが絡んでいる。いつもは留守番させているロゼだが、アモンドの情報を元に今回は戦闘員に加えることにした。
正直、今のままではロゼは一生お蔵入りメンバーになってしまうほど、戦力にはならない。何故そんな奴を団員にしたのか、他のメンバーたちは何も問わない。何より彼女が『滅びた惑星ベジータの、数少ないサイヤ人の生き残り』ということ、『団長であるターレスと同族』である事実が全てを物語っている。
とにかく、折角彼女も誇り高き戦闘民族なのだ。実戦こそ一番成長できる上、自分を窮地に立たせることで、より彼女を鍛えさせてやろうと今回の判断に至った。
かくいう当人は、戦う気があるのかなんなのか、とても呑気に過ごしている。
「ターレス様、この辺りで植えまっせい」
ロゼの様子を窺っているところで、アモンドが神精樹の種を持ってくる。彼の指差す方向を確認してから、適当にしろ、と返事をした。
「了解でっせい。おいお前ら、離れてろ」
近くにいた団員に一言かけると、アモンドは構えをとる。ぐっ、と彼の手が掲げられると、一瞬にして地に穴が開き、ゴゴゴゴと騒音を立てながら大きな亀裂が入った。その亀裂へ神精樹の種を放り投げる。奈落の底へと落ちていく種は、この星へ解けないように絡みついて発芽し、根付いていく。
「さぁて。神精樹が育つまで偵察でもするか」
俺の一声を皮切りに、全員が上空へと向かった。スカウターが徐々に生命反応を示し、異変を察知したサグドの者たちが向かってきているようだ。表示されている戦闘力はせいぜい2000程度だが、ロゼにとっては強敵だろう。事前に彼女以外の団員には耳打ちしているため、今回は強敵相手に一人で闘ってもらう予定だ。この程度であればわざわざ俺の出る幕ではないが、いざという時に彼女を連れ去れるよう、俺も宇宙船から出てきてやっている。
「お前、ターレス様に迷惑かけるなよ」
呑気そうなロゼに、ダイーズが険しい表情で迫る。分かってるよ、なんて彼女は答えているが、果たしてどれほどまで対応が出来るのか。煮え切らない様子だが、ダイーズは一度俺と目を合わせるとこくりと頷き、自分の持ち場へと戻っていった。
「ダイーズってば心配性。にしても、あははっ、筆頭と戦う日が来るなんてな〜」
「様子見だけだ、あの程度の戦闘力じゃあ俺の相手じゃない」
絶句して開いた口の塞がらない彼女を端に、彼女から一定の距離を置く。そうしているうちに敵は複数接近していた。自分の周囲に来た敵のみ軽くいなして地面へ叩きつけつつ、じっと彼女の戦況を眺めることにする。
俺が離れたことに慌てふためいているようで、数も多い敵の攻撃に守備体勢を取ることに必死のようだ。相変わらず克服もしていない弱点の尻尾は、腰に巻く癖がつききっておらず無防備に揺れている。文明が発達していないだけ、武器もちゃちな鉄製と木製だが、彼女にとっては十分脅威となるだろう。
(もっと追い込まれろ、そしてお前の力を見せてみろ)
気弾を駆使しながら、どうにかロゼは身を翻して攻撃を躱しているが、敵の数も多く劣勢の状況には変わらない。そこへふと彼女の背後に敵が回り込んだ。
「バカめっ、これで身動きできまい!」
そうして敵は、無防備なロゼの尻尾をがっちりと掴んだ。恐らく弱点であることを見抜いたのではなく、彼女の動きを制限させる為にとった行動だろう。弱点に触れられた彼女の身体は大きく跳ねるが、瞬間俺の予想とは異なる動きを見せた。
「ッ、でやあああああ!!!!」
目前の敵の攻撃を避けると同時に、ロゼは体を縮めると背後の敵へローキックをかましたのだ。予想外の敵の動きに相手もまともに彼女の蹴りを喰らい、更に追加で飛んできた気弾にかなりダメージは受けたようだ。グラグラと空中で怯んでいる。
「ほう……多少は鍛錬できているようだな」
日頃からロゼが団員間でトレーニングを積んでいることは知っているし、俺もそれを命じており、時折だが相手をしている。戦闘力の数値だけでは微々たる成長ではあったが、彼女なりに地道に結果が残せるようになっていることを嬉しく思った。
感嘆しながら部下の成長を喜ばしく思う反面で、やはりどうしても物足りなさは消えなかった。
「はっ……!」
ほんの一瞬でも気を抜けば囲まれてしまう。今のロゼは多勢に無勢であり、一対一では何とか持ちこたえられても、複数人を相手にするにはまだ実力不足だった。背後から放たれた銃弾は彼女の体の側面を直撃し、身につけたスカウターがパリンと割れハラハラと破片が落ちていく。それでも体勢を立て直すロゼだったが、容赦のない蹴りが彼女を襲う。
俺はその様子をしばらく観察していたが、いよいよロゼが意識を手放しそうになった頃合で一気に間を詰めた。
「さァて、お遊びはおしまいだ」
身につけたマントで彼女をくるみ片腕に抱く。ニタリとほくそ笑んだ瞬間、周囲は眩い光に包まれた。ロゼが気づいた頃には周りに人気はなく、ただ濃い霧の中で粉塵が舞っているだけだった。
* * *
「まァ、初めてにしては上出来だったぜ。偉いじゃねえか」
のんびりと宇宙船までの帰路につきながら、鼻歌でも歌いそうな程上機嫌な様子で俺は言った。若干ぼんやりとしているロゼは、大人しく腕に抱かれたままじっと彼を見上げている。
「やっぱりさ、まだまだ……だよね。すごいや、筆頭ってば、かっこいいなぁ」
傷まみれのロゼは負けたことへの悔しさなど微塵も出さずにいる。ぐりぐりと俺の胸元へと擦り寄りながら、へらりと嬉しそうに笑っていた。その姿はまるで、戦隊ヒーローを見た少年の眼差しそのものだ。その様子がどうも気に食わないのか何なのか、煮え切らない自分の感情にグッと眉を寄せる。
「けっ、憧れで終わらせるんじゃないぞ。そのうちお前には俺の隣に立ってもらわないと困るんでな」
そう言うもロゼにちゃんと伝わっているのか、彼女は告白じゃん、とケラケラ笑っている。やはり呑気な彼女にゲンナリしながら、宇宙船まで着くと彼女を下ろしてマントを取っ払う。
「ったく、傷まみれじゃねえか。あの程度で負傷するなんざ情けねえな」
「なにさ、失礼だな! 分かってて戦わせたくせに!」
地に足をつけて立つことは出来るが、若干ふらつきのある様子に肩を竦めて呆れを露わにする。真っ白な肌はすす汚れ、赤く滲む切り傷やすり傷、痛々しく咲く打撲痕があちこちに残されている。触れると柔らかい、自分とは真逆の真っ白な肌がここまで傷んでいるのを見て、俺は何故か不愉快になった。
(俺たちは戦いを生業とするサイヤ人だ……傷くらいできて当然だろ)
そう頭で考えても、何故かイライラは止まらない。理由のない理不尽な怒りにこれ以上付き合っていられない、と俺はまた改めてロゼを片腕で抱え肩に担いだ。状況を呑み込めない彼女はぎゃあぎゃあと四肢をばたつかせて暴れているが、気にも留めず治療室へと足を運ぶ。
「いでっ、ちょっともう少し優しくしてよ。怪我人なんだけど」
到着すると、メディカルマシーンの中へと彼女を放り込んだ。文句を垂れる彼女を他所に、スカウターでレズンへと通信を送る。
「帰ってこい。ロゼの治療をしろ」
要件だけ伝えると、部下の返事を待たずに通信を切る。計測パッドを貼り付けるため、彼女の服を脱がして装着しようと試みるが、不意に手を止めた。
相手が女性だからと、裸体を見ることに躊躇したからではない。ふと脳内で、この戦闘服の下がどれほど痛々しい傷が潜んでいるかと想像してしまったからだ。それがどれだけ俺を困惑させたかなんて計り知れない。今までサイヤ人として、気ままに、冷酷に、闘う楽しさだけを考えて生物を殺めてきた俺が、何故こんなことを今になって思案しているのだろうか。腕が取れそうなほど負傷したことも数知れず、そんな傷を相手に負わせることなど全くもってためらいはない。
なのにどうしてロゼが傷ついているのを見て、こんなにも不快になってしまうのだろうか。傷がついたということは、それだけ強くなる可能性を秘めていると言える。喜ばしいことだというのに、反して感情はぐらついていくばかりだった。
「……ちっ、ここまで運んでやったんだ。あとは自分でやりやがれ」
「えっ? ち、ちょっと」
彼女に対してではなく、理解しがたい自分への感情に舌打ちをする。不思議そうに俺を引き留めようとする彼女の声を無視して、踵を返して治療室を後にする。憤りの収まらない自分に、俺は必死に『弱いアイツが悪い』と言い聞かせていた。
勢いのまま自室へと戻ってくると、どかっとソファへ腰掛けぐしゃりと前髪を掻き上げる。大きく息を吐き出しながらテーブルへと目を向けると、カカオが掃除の際に生けたであろう、どこかの星の真っ白な花が凛々しく咲いていた。それがまるでロゼの透き通る白い肌を彷彿とさせる。
「……俺は花なんて愛でる趣味はない」
彼女の肌を蝕む傷と痣を再び思い返しながら、俺はスカウターを外して放り投げる。ソファへ足を乗せ体を伸ばすと、部下が帰ってくるまでの間、俺は仮眠を取ることにした。目を閉じた瞼の裏に過る彼女の傷跡が、俺の眉間のしわをより険しいものにさせた。
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