ゆめ
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永四郎くんの帰りを待ちながら、頭の中はとめどない憂鬱な妄想が渦巻いている。今日だけは早く帰ってきて、打っては消して、送れないまま携帯を床に投げ捨てた。
ふと耳に響いた鍵の回る音に、膝に埋めていた顔を上げる。続いて扉の開く音と、帰りましたよ、の声。いつもはリビングで待っているが、今日はそんな余裕は無い。急いで玄関まで出ていくと、永四郎くんは驚いた顔をしていた。
「そんなに急いで、どうしました?」
「う、ううんっ おかえりなさい」
「ええ、ただいま」
微笑んだ顔にはハッキリと疲労が表れていて、伝えたかった言葉が喉の奥で立ち往生する。
「ごはん、つくるね」
「いつもありがとうございます」
鞄とジャケットを受け取ろうとしたら、ジャケットだけが渡された。最近はずっとこうだ。わかってはいても、今日もまたこれからパソコンとにらめっこなんだなあ、と少し気落ちする。
下準備を済ませておいた食材をフライパンに投入しながら、いつ言い出そうか、なんて伝えよう、と再び悩み始める。いっそのこと、このまま伝えず無かったことにしてしまったほうがいいのでは、などという考えまでよぎった。
食事を終えた永四郎くんがお風呂へ行き上がってきても考えは纏まらず、パソコンの前に座り込んだ彼をぼんやりと眺める。
「眠らないんですか?」
「ん…」
もうすぐ0時を迎える。いつも日付が変わる前に寝てしまうわたしは、ここのところずっと永四郎くんがベッドに入る姿を見ていない。
「…俺も今日はもう寝ましょうかね」
「ほんと?」
「ええ。さあ、寝室に行きますよ」
パタンとパソコンを閉じて、ソファに座っているわたしへと手を差し伸べてくる。一緒にベッドに入るなんていつぶりかなあ、と久しぶりのことにぽかぽかとした気持ちになった。
「すみません」
ぴったりとくっついてウトウトしていると、小さな謝罪の声が聴こえてきて少し意識を引き戻される。
「…ん?」
「貴女に、寂しい思いをさせているな と…」
「わたしのことなんか気にしなくていいのに。お仕事が忙しいのは悪いことではないでしょ?」
もうちょっと休んでほしいけどね、そう言ったのは彼に届いただろうか。気付けばすやすやと寝息を立てていた。セットされていない柔らかな髪をそっと撫でて、わたしも眠りにつく。
「そういえば、病院はどうでした?」
「えっ」
朝食を食べる彼を眺めていると、ふいにそんなことを聞かれた。
「昨日、行ったんでしょ?昨晩はつい聞きそびれてしまって」
「あ、えっと、うん。行ってきたよ…」
「何かあったんですか?」
返事を濁すわたしに、永四郎くんが眉をひそめる。
「ううん…あのね、迷惑だったらちゃんと言ってほしいんだけど、」
「迷惑だなんてそんな」
「…あかちゃん、できたの」
驚きに目を見開いて、一呼吸。じわじわと破顔していく。滅多に見られない、永四郎くんの嬉しくてしょうがないって顔。わたしのウエディングドレス姿を見た時もこんな顔をしてたなあ、そんなことを思い出していたら、ぽたりと一粒、涙がこぼれた。
「ああ、よかった…貴女が浮かない顔をしているから、てっきり大病かと…、どうして泣くんです?」
「う、うれしくて。不安だったの、永四郎くん最近ずっと忙しいし、迷惑だったらどうしようって。病院から帰ってきて、ずっとぐるぐる考えてたの、」
「迷惑だなんて思うわけがないでしょう、夢子のお馬鹿さん。こんな喜ばしいことはありませんよ」
涙がポロポロと溢れて止まらない。しょうがない人ですね、そう言って背中をさすってくれる永四郎くんについ甘えそうになるが、朝は1分1秒が貴重だ。
「永四郎くん、遅刻しちゃう…」
「少しくらい構いやしませんよ。俺にとっては仕事よりも貴女のほうが大切ですから」
唐突にくらったド直球な言葉に、一気に赤面する。おかげで涙も止まったようだ。
「落ち着きましたか?」
「うん、ごめんね」
「いいんですよ。じゃあ俺はそろそろ出ますね」
玄関へと向かう永四郎くんの後を、鞄とジャケットを持ってついて行く。いってらっしゃいのハグの後、そっとお腹を撫でられた。
「何かあったらすぐに連絡しなさいね」
唇に触れるだけのキスをして、永四郎くんは玄関を開けた。
「では、いってきます」
「うん。いってらっしゃい」
ふと耳に響いた鍵の回る音に、膝に埋めていた顔を上げる。続いて扉の開く音と、帰りましたよ、の声。いつもはリビングで待っているが、今日はそんな余裕は無い。急いで玄関まで出ていくと、永四郎くんは驚いた顔をしていた。
「そんなに急いで、どうしました?」
「う、ううんっ おかえりなさい」
「ええ、ただいま」
微笑んだ顔にはハッキリと疲労が表れていて、伝えたかった言葉が喉の奥で立ち往生する。
「ごはん、つくるね」
「いつもありがとうございます」
鞄とジャケットを受け取ろうとしたら、ジャケットだけが渡された。最近はずっとこうだ。わかってはいても、今日もまたこれからパソコンとにらめっこなんだなあ、と少し気落ちする。
下準備を済ませておいた食材をフライパンに投入しながら、いつ言い出そうか、なんて伝えよう、と再び悩み始める。いっそのこと、このまま伝えず無かったことにしてしまったほうがいいのでは、などという考えまでよぎった。
食事を終えた永四郎くんがお風呂へ行き上がってきても考えは纏まらず、パソコンの前に座り込んだ彼をぼんやりと眺める。
「眠らないんですか?」
「ん…」
もうすぐ0時を迎える。いつも日付が変わる前に寝てしまうわたしは、ここのところずっと永四郎くんがベッドに入る姿を見ていない。
「…俺も今日はもう寝ましょうかね」
「ほんと?」
「ええ。さあ、寝室に行きますよ」
パタンとパソコンを閉じて、ソファに座っているわたしへと手を差し伸べてくる。一緒にベッドに入るなんていつぶりかなあ、と久しぶりのことにぽかぽかとした気持ちになった。
「すみません」
ぴったりとくっついてウトウトしていると、小さな謝罪の声が聴こえてきて少し意識を引き戻される。
「…ん?」
「貴女に、寂しい思いをさせているな と…」
「わたしのことなんか気にしなくていいのに。お仕事が忙しいのは悪いことではないでしょ?」
もうちょっと休んでほしいけどね、そう言ったのは彼に届いただろうか。気付けばすやすやと寝息を立てていた。セットされていない柔らかな髪をそっと撫でて、わたしも眠りにつく。
「そういえば、病院はどうでした?」
「えっ」
朝食を食べる彼を眺めていると、ふいにそんなことを聞かれた。
「昨日、行ったんでしょ?昨晩はつい聞きそびれてしまって」
「あ、えっと、うん。行ってきたよ…」
「何かあったんですか?」
返事を濁すわたしに、永四郎くんが眉をひそめる。
「ううん…あのね、迷惑だったらちゃんと言ってほしいんだけど、」
「迷惑だなんてそんな」
「…あかちゃん、できたの」
驚きに目を見開いて、一呼吸。じわじわと破顔していく。滅多に見られない、永四郎くんの嬉しくてしょうがないって顔。わたしのウエディングドレス姿を見た時もこんな顔をしてたなあ、そんなことを思い出していたら、ぽたりと一粒、涙がこぼれた。
「ああ、よかった…貴女が浮かない顔をしているから、てっきり大病かと…、どうして泣くんです?」
「う、うれしくて。不安だったの、永四郎くん最近ずっと忙しいし、迷惑だったらどうしようって。病院から帰ってきて、ずっとぐるぐる考えてたの、」
「迷惑だなんて思うわけがないでしょう、夢子のお馬鹿さん。こんな喜ばしいことはありませんよ」
涙がポロポロと溢れて止まらない。しょうがない人ですね、そう言って背中をさすってくれる永四郎くんについ甘えそうになるが、朝は1分1秒が貴重だ。
「永四郎くん、遅刻しちゃう…」
「少しくらい構いやしませんよ。俺にとっては仕事よりも貴女のほうが大切ですから」
唐突にくらったド直球な言葉に、一気に赤面する。おかげで涙も止まったようだ。
「落ち着きましたか?」
「うん、ごめんね」
「いいんですよ。じゃあ俺はそろそろ出ますね」
玄関へと向かう永四郎くんの後を、鞄とジャケットを持ってついて行く。いってらっしゃいのハグの後、そっとお腹を撫でられた。
「何かあったらすぐに連絡しなさいね」
唇に触れるだけのキスをして、永四郎くんは玄関を開けた。
「では、いってきます」
「うん。いってらっしゃい」