ツノ太郎VS恋愛アレルギー監督生
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「エ!?リョウくん、オレの所に泊まりたいんスか!?」
「はい、サバナクローに一度泊まって見たかったんすよ」
ラギー先輩は自室を訪ねると、モストロラウンジのものと思われる内職をせっせと作っていた。
最初は背を向けられていたが、手土産に待ってきたドーナツを渡すと「適当に座って!」と歓迎された。
異国情緒を感じられる部屋だ。ベッドのそばのフットベンチに私は腰掛ける。
私と喋りながらも、絨毯の上に胡座をかいているラギー先輩の内職を作る常人離れした手の動きは止まることが無い。
「別に構わないッスけど、何してくれるんスか?」
「今日一日お手伝いします」
出来そうな雑用なら、何でもと付け加えると、ラギー先輩は不満そうに耳を伏せた。
「エ〜それだけっスか?リョウくんが泊まるって事はグリムくんも泊まるんでしょ?絶対騒がしいじゃないすか〜」
心底嫌そうな顔に私は負けじと何とかプレゼンを試みる。
「それなら大丈夫です!親分にはひたすらお菓子を与えて静かにさせときます」
お菓子というワードに食いつくラギー先輩。
夕食を食べて、オンボロ寮でお風呂に入ってサバナクローに行くのだから。グリムのお腹もそこそこ膨れているはずだ。
お菓子+人手と宿泊を天秤に掛けるラギー先輩。
悩みに悩んだ結果は…
「ん〜〜しょうがないッスね〜。泊まらせてあげるけど、その代わりオレにもたんまり食いもん持ってきてくださいよ?」
「うっす!!」
私の中で少し憧れだった友達(というより知り合い)のところへの外泊が、叶うこととなったのだった。
◢◣◥◤◢◣◥◤
そしてそれから数日経ったある日の真夜中。
「サバナクローに外泊する?」
「うん」
ツノ太郎がふらりとまた現れたのでお茶を淹れた。
今日のお茶のお供は学園長から貰ったマドレーヌ。
真夜中にこんな甘いものを食べるなんて、ポムフィオーレの人達に話でもしたら「信じられない!」と金切り声をあげられることだろう。…今に始まった話では無いが。
マドレーヌを一口食べると、ジュワ…と濃厚なバターが生地から溢れ出す。じんわり優しくて甘い味が口の中で広がってとても幸せだ…。
学園長のお菓子のセンスは素晴らしい。
あつすぎないホットミルクと一緒に飲みこんで、ふぅ…と吐息をこぼす。
ゴトリとマグカップがテーブルを鳴らした。
「来週末はいないですから。太郎も来て、おれたちがいなかったらビックリするでしょう?」
太郎は最近、週に二回ほどオンボロ寮に訪れている。
特に週末によく来ているので、報告しておかなければ、すれ違いになってしまっては申し訳ない。
だが太郎はその事よりも別のことが気になるようで、折角淹れた紅茶に手も付けず、心配そうにこちらを見つめている。
「大丈夫なのか?」
「何が?」
「以前、サバナクローの寮生に絡まれたと言っていただろう」
覚えていたのか。
友人に心配されている事実に、私は少し嬉しい気持ちになる。
「それなら大丈夫だよ。そもそもおれに絡んでくる物好きなんて滅多にいないし、レオナさんが寮にいるのに馬鹿やる人もいないよ」
大丈夫だからと、安心させようとマドレーヌを一つとり、太郎に「ほい」と手渡す。太郎は「ああ、ありがとう」と礼を零すと包装フィルムを破いた。
しかし食べる前に手をピタリと止めた。
不思議に思い顔を上げると、ペリドットの双眸がこちらに向けられていた。
「それでお前はどこに寝泊まりするんだ」
じろりと睨むような太郎の瞳に、私の心臓がドキリとはねる。
「ラギー先輩のとこだけど…」
私が肩をすくめおずおずと告げる。
すると太郎は、また深く考える仕草をする。だんまりとしてしまった。
会話のテンポが難しい人だ。
その様子に私は首を傾げていると、太郎の神妙そうな顔が、次第に穏やかなものに変化して言った。ようやく何かに納得がいったのか、憑き物が落ちたような表情だ。
「そうか、楽しんでくるといい」
腑に落ちた顔で、太郎は今日初めて、お茶に口をつけた。もう温くなっているだろうに。
ようやく、笑顔を取り戻した太郎に、私も自然と笑顔になった。同じように温くなってしまったホットミルクを飲む。
太郎はソーサーにティーカップを置くと、なにか思いついたのか「そうだ」と声を漏らした。「何?」と私が問うと、チラリと歯をのぞかせて太郎は笑った。
「いつかお前を僕の寮に招待してやろう」
「ディアソムニアに?」
私の返答が意外だったのか。太郎は目を丸くしている。
「知っていたのか?」
「うん、レオナ先輩にディアソムニアの奴とつるんでるだろって言われて気づいた。」
ああ、キングスカラーか…と小さくつぶやく太郎の反応を見ると、この前のレオナさんのことを思い出した。
太郎はレオナさんのように嫌悪しているというわけじゃなさそうだ。
レオナさんは太郎の話だけでもわかりやすく嫌がっていた。
では太郎がこの前、不機嫌そうに見えたのは、気のせいだったのだろう。
良かった良かったと頷いて私がチョコのマドレーヌに手を伸ばした時。
太郎の視線が、私のすぐ隣に注がれている事に気付いた。
「ところでずっと気になっていたんだが…そのテーブルに置いてある人形はなんだ?」
太郎の困惑した声音に、私も自然とぬいぐるみに視線が行く。
今日は子猫程のぬいぐるみが、テーブルに置かれていた。目の前には一人分のティーカップが用意されている。
今日はグリムがもう寝てしまったので、お茶会のメンバー代打として、代わりに連れてきたことをすっかり忘れていた。
「あ、太郎に紹介してなかったっけ、総帥様だよ」
「総帥様?」
総帥のぬいぐるみをそっと引き寄せて、抱きしめる。
「おれの一番大好きな人!!」
「…は?」
私は堂々と言い放った。
太郎は理解が及ばぬようで、まさに 何を言っているんだお前は といった表情だ。
空いた口も塞がらぬようだから、私は分かるように説明をつけ加えた。
「この人は、おれの世界にあるゲームのキャラクターなんだけど、ここには存在しないから学園長にぬいぐるみ作ってもらったんだ」
ちなみにぬいぐるみは大きさが違う別個体もいる。
【げえむのきゃらくたー】
現代文化に疎い太郎でも聞きかじったことのある言葉のようで、首を捻っている太郎はようやく理解しようだ。
「ああ、なんだ架空の人物か」
夢がない言葉だなぁと思ったが。その通りだし、それが魅力的なのだと、太郎の目の前にずいっとぬいぐるみを近づける。
太郎は反射的に、体を逸らした。太郎のビックリした顔は好きだ、細まった瞳孔に私はニタと笑顔になる。
「ほら、総帥カッコイイでしょ?」
「格好いい…?残念だが、僕は理解しかねる」
ずいと近づけた総帥のぬいぐるみを軽く手で制されてしまった。
だが、負けじと私はまた、ずい!と近づけた。
だって推しが素敵なのは、異世界問わず、共通の理であるべきなのだから!
「そんな事ないって!ほら学園長と総帥似てない?すごく素敵なところが」
「確かに言われてみれば似てはいる。素敵と言われると僕は分からない」
頑として同調してくれない太郎に私は頬をふくらませた。
カッコイイし可愛いし素敵なのに…。
はぁ、と総帥を抱きしめて椅子に腰かける。
総帥のぬいぐるみの顔をみると、やはり何度見ても世界で1番素敵だ。
総帥のぬいぐるみの顔をそっと撫でる。
「俺もこうなりたいな…学園長みたいになってもいい」
「悪いことは言わない。やめておけ」
「えー?なんで…かっこいいのに」
好みが合わないのだろうかと尋ねたら。
「僕の好み以前に、それを気に入るのはお前ぐらいだろう、クロウリー装いも」と冷たい意見を頂戴した。
やはり異世界でもマイナーなのか、仮面キャラは…と私は残酷すぎる現実にすごく悲しくなったのだった。
「はい、サバナクローに一度泊まって見たかったんすよ」
ラギー先輩は自室を訪ねると、モストロラウンジのものと思われる内職をせっせと作っていた。
最初は背を向けられていたが、手土産に待ってきたドーナツを渡すと「適当に座って!」と歓迎された。
異国情緒を感じられる部屋だ。ベッドのそばのフットベンチに私は腰掛ける。
私と喋りながらも、絨毯の上に胡座をかいているラギー先輩の内職を作る常人離れした手の動きは止まることが無い。
「別に構わないッスけど、何してくれるんスか?」
「今日一日お手伝いします」
出来そうな雑用なら、何でもと付け加えると、ラギー先輩は不満そうに耳を伏せた。
「エ〜それだけっスか?リョウくんが泊まるって事はグリムくんも泊まるんでしょ?絶対騒がしいじゃないすか〜」
心底嫌そうな顔に私は負けじと何とかプレゼンを試みる。
「それなら大丈夫です!親分にはひたすらお菓子を与えて静かにさせときます」
お菓子というワードに食いつくラギー先輩。
夕食を食べて、オンボロ寮でお風呂に入ってサバナクローに行くのだから。グリムのお腹もそこそこ膨れているはずだ。
お菓子+人手と宿泊を天秤に掛けるラギー先輩。
悩みに悩んだ結果は…
「ん〜〜しょうがないッスね〜。泊まらせてあげるけど、その代わりオレにもたんまり食いもん持ってきてくださいよ?」
「うっす!!」
私の中で少し憧れだった友達(というより知り合い)のところへの外泊が、叶うこととなったのだった。
◢◣◥◤◢◣◥◤
そしてそれから数日経ったある日の真夜中。
「サバナクローに外泊する?」
「うん」
ツノ太郎がふらりとまた現れたのでお茶を淹れた。
今日のお茶のお供は学園長から貰ったマドレーヌ。
真夜中にこんな甘いものを食べるなんて、ポムフィオーレの人達に話でもしたら「信じられない!」と金切り声をあげられることだろう。…今に始まった話では無いが。
マドレーヌを一口食べると、ジュワ…と濃厚なバターが生地から溢れ出す。じんわり優しくて甘い味が口の中で広がってとても幸せだ…。
学園長のお菓子のセンスは素晴らしい。
あつすぎないホットミルクと一緒に飲みこんで、ふぅ…と吐息をこぼす。
ゴトリとマグカップがテーブルを鳴らした。
「来週末はいないですから。太郎も来て、おれたちがいなかったらビックリするでしょう?」
太郎は最近、週に二回ほどオンボロ寮に訪れている。
特に週末によく来ているので、報告しておかなければ、すれ違いになってしまっては申し訳ない。
だが太郎はその事よりも別のことが気になるようで、折角淹れた紅茶に手も付けず、心配そうにこちらを見つめている。
「大丈夫なのか?」
「何が?」
「以前、サバナクローの寮生に絡まれたと言っていただろう」
覚えていたのか。
友人に心配されている事実に、私は少し嬉しい気持ちになる。
「それなら大丈夫だよ。そもそもおれに絡んでくる物好きなんて滅多にいないし、レオナさんが寮にいるのに馬鹿やる人もいないよ」
大丈夫だからと、安心させようとマドレーヌを一つとり、太郎に「ほい」と手渡す。太郎は「ああ、ありがとう」と礼を零すと包装フィルムを破いた。
しかし食べる前に手をピタリと止めた。
不思議に思い顔を上げると、ペリドットの双眸がこちらに向けられていた。
「それでお前はどこに寝泊まりするんだ」
じろりと睨むような太郎の瞳に、私の心臓がドキリとはねる。
「ラギー先輩のとこだけど…」
私が肩をすくめおずおずと告げる。
すると太郎は、また深く考える仕草をする。だんまりとしてしまった。
会話のテンポが難しい人だ。
その様子に私は首を傾げていると、太郎の神妙そうな顔が、次第に穏やかなものに変化して言った。ようやく何かに納得がいったのか、憑き物が落ちたような表情だ。
「そうか、楽しんでくるといい」
腑に落ちた顔で、太郎は今日初めて、お茶に口をつけた。もう温くなっているだろうに。
ようやく、笑顔を取り戻した太郎に、私も自然と笑顔になった。同じように温くなってしまったホットミルクを飲む。
太郎はソーサーにティーカップを置くと、なにか思いついたのか「そうだ」と声を漏らした。「何?」と私が問うと、チラリと歯をのぞかせて太郎は笑った。
「いつかお前を僕の寮に招待してやろう」
「ディアソムニアに?」
私の返答が意外だったのか。太郎は目を丸くしている。
「知っていたのか?」
「うん、レオナ先輩にディアソムニアの奴とつるんでるだろって言われて気づいた。」
ああ、キングスカラーか…と小さくつぶやく太郎の反応を見ると、この前のレオナさんのことを思い出した。
太郎はレオナさんのように嫌悪しているというわけじゃなさそうだ。
レオナさんは太郎の話だけでもわかりやすく嫌がっていた。
では太郎がこの前、不機嫌そうに見えたのは、気のせいだったのだろう。
良かった良かったと頷いて私がチョコのマドレーヌに手を伸ばした時。
太郎の視線が、私のすぐ隣に注がれている事に気付いた。
「ところでずっと気になっていたんだが…そのテーブルに置いてある人形はなんだ?」
太郎の困惑した声音に、私も自然とぬいぐるみに視線が行く。
今日は子猫程のぬいぐるみが、テーブルに置かれていた。目の前には一人分のティーカップが用意されている。
今日はグリムがもう寝てしまったので、お茶会のメンバー代打として、代わりに連れてきたことをすっかり忘れていた。
「あ、太郎に紹介してなかったっけ、総帥様だよ」
「総帥様?」
総帥のぬいぐるみをそっと引き寄せて、抱きしめる。
「おれの一番大好きな人!!」
「…は?」
私は堂々と言い放った。
太郎は理解が及ばぬようで、まさに 何を言っているんだお前は といった表情だ。
空いた口も塞がらぬようだから、私は分かるように説明をつけ加えた。
「この人は、おれの世界にあるゲームのキャラクターなんだけど、ここには存在しないから学園長にぬいぐるみ作ってもらったんだ」
ちなみにぬいぐるみは大きさが違う別個体もいる。
【げえむのきゃらくたー】
現代文化に疎い太郎でも聞きかじったことのある言葉のようで、首を捻っている太郎はようやく理解しようだ。
「ああ、なんだ架空の人物か」
夢がない言葉だなぁと思ったが。その通りだし、それが魅力的なのだと、太郎の目の前にずいっとぬいぐるみを近づける。
太郎は反射的に、体を逸らした。太郎のビックリした顔は好きだ、細まった瞳孔に私はニタと笑顔になる。
「ほら、総帥カッコイイでしょ?」
「格好いい…?残念だが、僕は理解しかねる」
ずいと近づけた総帥のぬいぐるみを軽く手で制されてしまった。
だが、負けじと私はまた、ずい!と近づけた。
だって推しが素敵なのは、異世界問わず、共通の理であるべきなのだから!
「そんな事ないって!ほら学園長と総帥似てない?すごく素敵なところが」
「確かに言われてみれば似てはいる。素敵と言われると僕は分からない」
頑として同調してくれない太郎に私は頬をふくらませた。
カッコイイし可愛いし素敵なのに…。
はぁ、と総帥を抱きしめて椅子に腰かける。
総帥のぬいぐるみの顔をみると、やはり何度見ても世界で1番素敵だ。
総帥のぬいぐるみの顔をそっと撫でる。
「俺もこうなりたいな…学園長みたいになってもいい」
「悪いことは言わない。やめておけ」
「えー?なんで…かっこいいのに」
好みが合わないのだろうかと尋ねたら。
「僕の好み以前に、それを気に入るのはお前ぐらいだろう、クロウリー装いも」と冷たい意見を頂戴した。
やはり異世界でもマイナーなのか、仮面キャラは…と私は残酷すぎる現実にすごく悲しくなったのだった。