ツノ太郎VS恋愛アレルギー監督生
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〈そういえばイデア先輩、昨日会いましたよ〉
鍵マジスタアカウントで、イデア先輩と話していたので、ついでに報告しておこうと私は談話室のソファの上でポチポチと文字を打つ。
〈え?何の話〉
〈ほら、言っていたでしょ。ツノの生えた人の話〉
〈あ〜ね〉
ツノというワードで思い出したようだ。
〈本当に勇気あるよねリョウ氏〉
〈確かにかなり迫力ある人でしたね〉
2m近くある巨漢にあの美貌だ。
レオナ先輩やヴィル先輩も迫力のある美貌の持ち主だが、それに加えあの背の高さは、腰が引ける気持ちも分からなくは無い。
でも、そこまで怯える理由も分からない。
話をしたから分かるが、そこまで話が通じない人でもなかったし。
〈でも話が通じない人ではなかったですよ。ツノ太郎って呼んだらツボに入ったのか涙出るまで笑ってましたし〉
〈…………エ?〉
〈ほら前回会った時好きに呼べって言われたから、親分が考えたあだ名教えたら、めっちゃ笑われて〉
あのツノ太郎の笑いようを思い出すと、私は意図せず笑ってしまった。あれだけ笑われるとは思っていなかった。
〈無知って恐ろしいですわ。よく生きて帰れたねリョウ氏。ぼかぁ嬉しいよこうやってまたリョウ氏と話せて〉
大袈裟だな。
〈怖いですか?ただの廃墟めぐりが好きな変人ってだけで〉
〈予備知識がないリョウ氏からみたらそう見えるかもしれないけどさぁ。それに廃墟めぐりが好きな変人はそこそこ怖いよ〉
〈それは正論〉
イデア先輩の正論に、私はくつくつ笑った。
△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼
「ツノ太郎っていつも夜に来ますよね。明るいうちに来たらいいのに」
ツノ太郎をお茶に招いて、もう数度目になった。
グリムもツノ太郎と顔見知りになり、オンボロ寮に来ると「おうツノ太郎!今日も来たのか!」とツノ太郎に出している茶菓子をほぼ横取りしている。
「夕方だと護衛に騒がれるんだ、僕がいないと。」
「護衛とかいるんすね。まぁ夜でもいいけど、どうせ日付が変わらないと寝ないし」
ミステリーショップで買うようになった紅茶を出すと、ツノ太郎は「いつもすまない」と小さく礼をこぼす。
「おい子分!俺様のぶんは!?」
「あるよ。はいミルク、零さないでね」
猫の足跡の模様があしらわれたグリム専用のマグカップ。
ミルクを並々注がれたマグカップを慎重に親分に手渡す。
私は自分の分のマグカップをテーブルに置き、よいしょと、椅子に腰かけた。
「それに私も夕方は用事がありますし、夜の方が都合がいいか。」
私はマグカップに口をつける。対照的に太郎は、ティーカップをソーサーに置くと、首を傾げた。
「用事?」
「夕方は学園長から勉強を教えてもらったり、雑用を手伝ったりしてるので」
来たばかりの頃は押し付けられるようにやっていたが、最近は自分から率先してやっている。
学園長のことは個人的な感情で好ましく思っている。
その理由というのが 総帥様 に似ている!というものなのだが。我ながら不純だと思う、しかしオタクというのはこういうものだ。
「学園長のヤツ、コイツには甘いんだゾ!俺様がツナ缶くれ!って言っても全然くれないくせに、リョウにはいっつもお菓子やってるんだゾ…」
「そうなのか」
「親分が偉そうにするからじゃないかなぁ」
学園長は普通に優しいと思う。図々しいしいけれど、父にいい思い出がない私からしたら、学園長や、他の先生達は頼れる大人の男性だ。
学園長の雑用もずっと手伝っていたら、最近はお小遣いまでくれるようになった。
学園長の娘だったら良かったのにと思ったことは1度だけでは
無い。
「これも学園長から貰ったクッキーですよ。こっちはトレイン先生から貰ったパウンドケーキ」
度々貰うものをグリムに見つからないように(見つかったら全部食べられるので)ちょこちょこ食べていたのだが、最近はツノ太郎とのお茶会でまとめて出されるようになった。
先生達もNRC生との交友関係へと、使われているのだから本望だろう。
「こんなにお菓子もらってるのに俺様に隠しやがって!」
「食べさせてるからいいじゃん」
グリムは文句を言いながら、出されたクッキーを1人だけ異常なスピードでムシャムシャと食べていく。私もパウンドケーキを1つ食べようと、包装フィルムをピリと破く。
太郎は紅茶以外には手をつけていないようだ。
いつもはしれっとかなり食べているのだが。
「お前は教師陣と親しいのか」
「そうですね、NRCの人達は癖が強くて意地悪な人達ばかりですけど、先生達は良識があって優しくしてくれますし」
「おや、それは僕にも向けられた言葉か?」
ニタニタと笑う太郎。分かっているくせに。
「そう思っていたら、こうやってお茶に誘ったりしないですよ」
ズズ…とお茶を飲む。太郎は満足そうな笑みを浮かべると同じようにティーカップに口をつけた。
NRCの治安の悪さという話題で、ふと思い出した。
「でもさすが名門校、すごい人も多いですよね。そう例えばレオナ・キングスカラー先輩!」
私の高揚した声音が珍しいのか、吃驚したあと、太郎は神妙そうな顔をする。
「キングスカラー?」
「はい!レオナさんちょっと無愛想で皮肉屋みたいなとこあるんですけど。私、サバナクローの生徒に変な絡み方された時助けて貰ったんすよ!本当にカッコイイ…」
腕を掴まれて、ヤバいと思った時通りがかったレオナ先輩が追い払ってくれたのだ。
本当にカッコよかった。
「お前も女なら、こんな人気が少ないところを1人で行動するなんて馬鹿をするな。ここが何処だか分かってんのか?」とお叱りを受けたが。
当然だ。私が浅はかだったと思う。それからは、人気の少ないところを避けるようになった。
あの時は名前も聞けなかったが、のちのちサバナクローの寮長だと知った時は。カッコイイ上に、寮長!と関心したものだ。
その後、学園長に事情を話して一緒に菓子折を渡しにいったら微妙な顔をされたが。菓子折はレオナさんの傍によくいるラギー先輩には喜ばれていた。
「お前はキングスカラーとも親しいんだな」
「親しいというより一方的に尊敬してるだけですけどね」
先程持ってきたお菓子の中から、バームクーヘンをとる。
本当に今日はお菓子を食べないなと、チラリとツノ太郎の様子を伺うとなんとも言えない表情をしていた。
「……何か私が気に触ることでもいいましたか?」
「!不機嫌そうに見えたか?」
「不機嫌そうというか、なんというか」
「ムスッとしてるんだゾ」
少し濁したのにグリムが直球に言ってしまった。
太郎は申し訳なさそうに眉を顰める。
「そんなつもりは無いんだが」
「それならいいんですけど…」
「不機嫌じゃねぇのにムスッとしてんのか?ほんと変なヤツ!」
グリムの無神経な発言に、あははとから笑いする私。
ツノ太郎は腑に落ちないようで、心を落ち着けるように、お茶を啜った。
△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼
──それから、数刻後。
帰路につき無事ディアソムニア寮に到着したツノ太郎。日付はすっかり変わってしまっていた。
しかしツノ太郎は部屋に戻る前に、朝に談話室に本を置き忘れた事を思い出した。取りに行かねばと自室に直行する前に足を運ぶ。
するとそこには、待ち構えていたように、ディアソムニア寮の副寮長、リリア・ヴァンルージュがソファに腰掛けていた。
「今帰ったのか?くふふ、最近は夜遊びに勤しんどるようじゃなマレウス」
「リリア、最近はシルバーからねとげ?に夢中だと聞いたが、ねとげとやらはもう飽きたのか?」
「いいや、今日はネ友が
ツノ太郎、またの名を──マレウス・ドラコニア。
ソファの上で、愉快げにケラケラと笑うリリアの目の前には腰掛けた。リリアは話を聞きたいようで前のめりだ。
「それで?今日もオンボロ寮に行っておったのか?」
「知っていたのか?」
「前々までよく足繁く通っていたのに、人が住み始めたから寂しいと零しておったじゃろ?それなのに、最近はまた同じようにふらりと居なくなっておるから、嫌でも気付くわい」
流石、年長者の観察眼と言うべきか、リリアはマレウスのことをよく見ていた。リリアには敵わないと、マレウスはポツポツと話し始めた。
「オンボロ寮の監督生に誘われお茶飲んでいた」
「なんと!お主とお茶に誘うとは、くふふ、見どころのある若者じゃな」
「なんでも、僕の事を知らないらしい」
「変わっておるのう。世界は広い、お主を知らぬものもいるのだから」
確かに…とマレウスはリリアの言葉に同じた。
マレウスは世界中に名を馳せている。そんな自分を知らない上に、友好的に接してくる人間がいるなんて想像もしなかった事だ。
「オンボロ寮の監督生、リョウはキングスカラーと仲がいいらしい?」
「レオナと?」
「饒舌ではないとおもっていたが、キングスカラーのことをやけに褒めていた」
窓がガタガタと音を鳴らす。夜風が強くなってきたようだ。リリアはマレウスと外の様子を見比べて、何か納得が言ったようだ。
「まだまだお主も青いな」
「は?何故そうなる」
「そうならんとおかしいじゃろ!くふふ!若者は見てて楽しくて堪らんわい、よし!今日は早く寝るかのう!」
満足したのか、よいしょとソファから立ち上がり、高らかに笑いながらリリアは自室へ帰って行った。
……未だに腑に落ちないマレウスを残して。
「一体なんなんだ」