迷える黒犬 犬→猫
シリウスは羊皮紙を乱暴に丸め、わざと大きな足音を響かせて、誰もいない教卓に近づくと投げるように置いた。
ー…ついでにからかってやるか…ー
シリウスは振り向くと、杖を出し、それで肩を軽く叩きながらセブルスに近づいた。
「おい、スニベルス!一昨日の課題か?」
シリウスはセブルスを見下ろしながら課題を覗き込んだ。
「なんだ!全然進んでねえよ!」
大声で笑った。
セブルスはあえて無視しながら、これ以上関わりたくないとばかりにインクの蓋を閉め、羊皮紙を丸め、鞄に突っ込んだ。
それだけで息が切れる。
シリウスは面白そうに杖で鞄を机からすべり落とした。相変わらずにやにや笑っている。
「スニベリーの鞄は床が似合うぜ!」
セブルスがシリウスを睨みつけた。
その目は僅かに赤く、頬も赤い。
それでいてどこか蒼白な表情だった。
シリウスはそれを泣き顔だと思った。
「ハハハ!!やっぱり泣きみそスニベルスだ!」
セブルスは机に両手を着くと、ここから立ち去るために立ち上がりかけた。
シリウスは少し身構えた。
しかし、セブルスは仰向けになるようにゆっくり倒れた。
シリウスは反射的にセブルスの腕を掴んで、床に頭を打つのを阻止していた。
「…は?え?俺何もやってな…」
そこまで言って、シリウスは初めてセブルスの異変に気が付いた。
熱い…!
「お前、熱が…!」
シリウスはセブルスの熱い身体に動揺した。
セブルスは荒い息をしながらシリウスを押しのけた。
「…触るな…」
そう言いながらも自分の腕で体を支えられないらしく、シリウスに倒れ掛かった。