ダンス・パフェ 鹿猫
「セブルスだ…」
グラスを片手にシリウスと談笑していたリーマスが呆気に取られて呟いた。
シリウスはホールを見るなり口に含んでいたドリンクを噴き出した。
「シリウス…汚い」
リーマスが白い目で言った。
周囲がにわかにどよめいた。皆驚いている。何人かの女子生徒が「…きれい…」と呟く声をジェームズは満足そうに聞いた。
ジェームズはセブルスの手を取り肩口まで上げると、中央より少し壇上に近いところまで歩いた。
その目は真直ぐにダンブルドアを見上げていた。ぴたりと足を止めると、ダンブルドアの目を見つめたまま不敵な笑みを浮かべ、堂々と一礼してみせた。
セブルスは内心ジェームズの度胸に感服しながらも、ダンブルドアの顔を伺い見た。
ダンブルドアは二人を見下ろし、微笑んだ。そしてジェームズの目を見て頷き、ゆっくりとグラスを高く掲げた。
それを合図に曲が始まった。
ホールには二人だけだった。
「セブ…上手いね」
ジェームズがセブルスの腰を取りながら嬉しそうに言った。
二人の足はぶつかることなく、潔いまでに踏み込まれる息の合ったステップは、周囲の目を釘付けにしていた。
セブルスは口元に笑みを浮かべた。
「ここまで来て、恥はかきたくないからな…それに…」
セブルスは曲に合わせてジェームズの胸に手の平をつき、体を密着させると間近に迫った顔を見上げて囁いた。
「僕たちは何度愛し合った?」
挑発するように、悪戯に微笑む。
ジェームズは顔を赤らめ、照れて笑った。
「やっぱり君は最高だよ!」
ジェームズは笑いながらセブルスの体を器用に回した。セブルスもつられて笑った。
その様子をギャラリーで見ていたシリウスがぼそりと言った。
「…綺麗だな」
リーマスが飲んでいたドリンクを噴き出した。シリウスが白い目で見下ろす。
「汚ねえな、リーマス」
ギャラリーは今や、ジェームズとセブルスを見つめる生徒たちでひしめき合っていた。
所々から感嘆のため息が聞こえる。