ダンス・パフェ 鹿猫
二人でホールに続く廊下を歩いた。
途中、すれ違う生徒たちが振り返り、中には足を止めて二人を見つめる者もいた。その目は好奇ではなく、感嘆のため息さえも漏れるものだった。
セブルスはその目線をあえて無視しながら、ジェームズの顔を見ずに言った。
「リリーには話したのか?」
ジェームズは足を緩めた。
「うん。今夜はここでの最後のダンスパーティーだ。リリーも君ならばって快く承諾してくれた」
ジェームズは囁くように言った。
「そうか…彼女なら、僕も賛成だ」
セブルスはジェームズがダンスをする相手を自分にしたことより、リリーがジェームズの結婚相手になったことに触れた。
ジェームズはセブルスの耳に唇を近づけた。
「僕も彼女も君が一番だよ」
セブルスは少し顔を赤らめ、不機嫌そうに目を逸らしたが、ホールの入り口に立つと表情が固まった。
華やかな色彩が舞っている。皆それぞれ踊ったり、テーブルで食事を楽しんだりしている。
数人の生徒が二人に気付き、その姿を見つめていた。
「セブ」
ジェームズが前を向いたまま、セブルスだけに聞こえるように言った。
「さあ、胸を張って。君は美しい。僕が選んだ人だもの。あのくそジジイに見せつけてやる」
ジェームズはあれ以来、ダンブルドアをくそジジイ呼ばわりするようになった。さすがに本人の前では控えていたが、ふてぶてしい態度は直らなかった。
ダンブルドアは壇上の中央に座り、微笑ましそうにホールを眺め、先生方と談笑していた。
曲が終わり、拍手の中、ホール内から人が散らばる。
ジェームズはセブルスを見下ろした。セブルスもジェームズを見た。
セブルスは心の中で苦笑した。ジェームズのおかげで、ずいぶん度胸がついたものだと。
ジェームズに少しだけ笑顔を見せると前を向いた。
二人はホールの中央へ颯爽と歩いて行った。