ダンス・パフェ 鹿猫
「セブルス…どう?」
ジェームズがそわそわしながら扉の前に立っていた。
「どうも何も…」
セブルスはぼそぼそと呟いた。
「これ以上待たせたら、飛び込んで襲っちゃうよ!」
ジェームズは扉の隙間から覗き込みながら言った。その瞬間、バーンと扉が開き、ジェームズの顔面を直撃した。
「ん?ジェームズ?」
セブルスは辺りを見回した。
「ここ…」
ジェームズは顔を抑えながらしゃがみこんでいた。
「何をしているんだ…?」
セブルスはわざと聞いた。ジェームズは涙目でセブルスを見上げたが、セブルスの姿を見るなり勢いよく立ち上がった。
セブルスは黒いドレスを身にまとっていた。
上半身はぴったりとした詰襟の上着、袖は長く、手の甲まで隠している。スカートは裾が広がるだけのシンプルなものだったが、それ故セブルスの痩身が美しくふちどられていた。
ジェームズは息を呑んだ。
「…すっごい綺麗だ」
セブルスは乱暴に更衣室のドアを閉じた。
「世辞は結構だ!」
そう言いつつも頬が赤い。
ジェームズはたまらずセブルスを抱き寄せた。
絹のような黒髪、細い腰…ジェームズはセブルスの耳元で囁いた。
「ヤバイ…かも」
熱っぽく言う。
その声に必死で抗いながらセブルスが言った。
「そうか…ダンスはしなくてもいいんだな」
ジェームズがガバッと顔を元に戻した。
「そうだった!危なかった」
本気で胸を撫で下ろす。
「セブ…君はなんて危険なんだ…」
ジェームズがセブルスの肩に手を置いて言った。
セブルスは腰に手を当てて、ジェームズを睨んだ。
「僕にはお前の思考回路の方が充分危険だがな…」
ジェームズはくすりと笑うと、背を向け肘を少しセブルスへ差し出した。
セブルスは観念したようにその腕に自分の腕を絡めた。
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