始まりは唇から 鹿猫
「校長、二人に退学措置を」
マクゴナガルがベッドに横たわり、眠っている二人を交互に見やり、ダンブルドアに言った。
ダンブルドアは興味深そうにジェームズとスネイプの姿を観察していたが、マクゴナガルに顔を向けて言った。
「それはできん」
きっぱりとした口調だった。
マクゴナガルは憤りを隠さずに詰め寄った。
「なぜです?彼らは危険な呪文を人体に向けて使用し、命さえも危うかった。これは重大な校則違反、いえ、法律違反です!それを退学にしないとは…。では、何か考えでもあるのですか?」
マクゴナガルはゴミ箱に入れられたシャツを眺めながら言った。シャツは原型をとどめないほど破れ、ほぼ深紅に染まっていた。直すことさえ忘れられて捨てられたシャツが、今朝の騒動をそのまま物語っていた。
ダンブルドアは静かにするよう人差し指を立てた。そして穏やかに、しっかりと言った。
「神秘が決めた運命じゃ」
マクゴナガルは何か言おうと口を開きかけたが、ダンブルドアの青い目がこれ以上何も語らないことを悟ると、大きな溜息をついて医務室を出て行った。
「さて、マダムポンフリー、二人が目覚めるのはいつになるかの?」
ダンブルドアはピリピリしているポンフリーに問いかけた。
「…おそらく明日か明後日。分かりません。何の呪文でこうなったのか分からないですし、校長のおかげで傷は全て塞がりましたが…」
ポンフリーは溜息をついた。
「いつもすまんの」
ダンブルドアが微笑んだ。
「校長が謝られることはありません。悪いのはこの二人です!」
ポンフリーはぴしゃりと言い、二人を指差した。
「そうじゃの」
ダンブルドアは穏やかに言うと、扉を開けた。
シリウスとリーマス、ピーターがなだれ込んできた。
「静かになさい!」
ポンフリーが一喝する。
「すぐに出て行きなさい!立ち入り禁止です!」
ポンフリーはかんかんになって怒っている。その迫力に押され、三人はベッドに近づくこともできずに締め出された。