始まりは唇から 鹿猫
リーマスは途中、教師に捕まりながらもシリウスを引いて授業のある温室へと急いでいた。
ジェームズを見つけなければならない。生徒たちの間を縫うように走りながらジェームズを探し、小さな人だかりで足を止めた。
「ジェームズ!!」
ジェームズがいた。スネイプと向かい合っている。近くにはスネイプのローブが馬鹿馬鹿しいピンクと黒の水玉模様になって投げ捨てられ、ジェームズの足元にはズタズタになったローブが落ちていた。
「ピーター、先生を呼んできて」
リーマスはピーターにすばやく耳打ちした。ピーターは何度も頷き、あたふたと走って行った。
「…殺してやる」
スネイプが呟いた。
ジェームズは目を細め、愛しそうに微笑んだ。
ー…君は本気で怒っている。迸る力が足元の落ち葉を舞い上げて、君の黒髪が水の中にいるみたいに揺らめいて波打っている。
上気した頬、僕を睨みつける瞳。
こんなに綺麗なものを見るのは初めてだ。
それだけでイキそうになる。
舞い上がる落ち葉を真っ赤な花びらに変えてやった。
君にやられるなら本望だ。
僕も本気だよ。
ジェームズの瞳に狂気が宿った。口元が引き上がり、スネイプと同じ高さに杖を掲げた。
周囲がざわつく。
シリウスとリーマスはただならぬ空気を感じて、杖を出し、二人に近づこうとした。
しかし、遅かった。
閃光が走った。
放った呪文は二人の中央で一つになり、そして見事に二つに分かれそれぞれに跳ね返った。
周囲から悲鳴が上がった。
ジェームズとスネイプは互いを見ていた。呆然と、血まみれの姿を見ていた。
スネイプが倒れた。
ジェームズもガクリと膝を付き倒れた。
ー…その激しい憎しみも、その眼差しも、その血に倒れる身体も全部僕のものだー
ジェームズは満足そうに微笑み、意識を失った。